土地利用革新のための知の集約プログラム

土地利用革新のための知の集約プログラム

プログラム概要

社会経済活動や土地利用の変化が及ぼす地球環境への影響を緩和したり、そうした影響に適応したりするため、学際的、超学際的な方法で土地利用を根本的に改革する方法を模索します。

地球環境問題には土地利用が深く関係しています。土地の上で営まれる社会経済活動による温室効果ガスなどの排出、土地利用の変化に伴う生態系サービスの劣化などが地球環境問題の中核を構成していることはよく知られています。一方で、土地利用は世界レベルでの人口増加を支えるための食料生産に重要な役割を果たすだけではなく、遊水地や緩衝地帯の確保などを通じた洪水被害の緩和や生態系の保全などの地球環境問題への適応にも貢献する可能性を秘めています。さらに、土地の利用方法の改善は、流域生態系の改善や土壌や森林の炭素貯留の強化、再生可能エネルギーの活用などによる地球環境問題の緩和にもつながります。

しかしながら、土地利用の改善は世界的にみて順調に進んでいるとは言い難く、土地利用と地球環境問題の複層的な関係性を踏まえたうえでの劇的な改善が求められています。その際、個別の土地に着目するのではなく、一定の地理的範囲においてその改善を構想する必要があります。面的な広がりを持つことによって初めて効果が発現される、あるいは効果が大きくなる場合が多いからです。さらに、多くの土地は私有財産であり、その利用に一定のルールを適用するためには、土地に対する所有や利用の「考え方」が現状のままでよいのかという根源的な問いも強く意識する必要があります。土地利用が地域の文化の基盤になっていることや都市と農山漁村の相互補完性・連関性等も土地利用の改善を考えるときの重要な視点となります。

これらを念頭に、科学的知見を最大限に活用しつつ、①土地の利用改善のための新たな仕組や主体の構想、②それらをスケールアップさせるための制度的枠組・政策の提示、③知見を共有し革新的なアイディアを創出する国際的「政策生態系」(「研究の進捗状況」を参照)の役割を果たすことによる制度・政策のメインストリーム化・国際標準化、に資することをこのプログラムは目指します。

ミッションステートメント

所属プロジェクト等一覧

研究の進捗状況

このプログラムは2023年4月から開始されました。プログラムのもとで、複数のプロジェクトがそれぞれのアイディアや方法論を駆使して、各プロジェクトを自律的に運営することを基本としつつ、プログラムの目的の集合的な達成をはかろうとするものです。2024年度は、フルリサーチ3年目の「社会生態システム転換における衡平性:熱帯森林フロンティアの政治・権力・不確実性」プロジェクトに加えて、新たにプレリサーチとして「里山のつながりをとりもどす: コミュニティとつくるレジリエントで“ネーチャー・クライメートポジティブ”な土地利用の未来」プロジェクトが加わります。また、6件のプロジェクトが萌芽的な研究ステージから実行可能性を検討するステージに進みました。

このプログラムのもとでのプロジェクトの推進にあたっては、各プロジェクトが相互に刺激を与えつつ、相互補完性を高めていくような環境を整備することが重要だと考えています。それぞれの研究は土地利用をミッションの中心におき実際の政策や制度へのインパクトを強く意識する、また、学際的、超学際的な方法論を採用するという点を共有しています。一方で、対象とする土地の範囲や、改善しようとする地球環境問題の内容、政策や制度へのインパクトの与え方に関する構想は異なります。プロジェクトの個性を最大限に発揮しつつ、プログラム全体の目的の達成を可能とするために、プロジェクトの内容や進捗に関して意見交換をする場の設定や共通のテーマでのセミナー・ワークショップの開催などの活動に基づき相互補完性を強化する可能性を追求していきます。

この点とも関連して、このプログラム自体が土地利用の革新のために政策立案者や関連するアクターと研究者が交わり革新的なアイディアが創設される「政策生態系」となることを目指します。政策や制度の革新をもたらす条件についての研究が進んでおり、それらの成果も踏まえながら、このプログラム自体が政策や制度の革新を生み出す場としてある種の社会実験の一翼を担おうとするものです。

(若林 譲氏提供)
(若林 譲氏提供)

年報(業績一覧など)

メンバー

プログラムディレクター

荘林 幹太郎

総合地球環境学研究所特任教授

プロフィール紹介