実践FS

土地利用革新のための知の集約プログラム

生態系サービス支払いを通じた農地利用革新

プロジェクト概要

農地の持続可能でない利用が地球環境問題の要因とされる一方で、農業生産活動などの農地への働きかけ次第では、多様な生態系サービスの提供により問題解決に貢献することも可能です。この研究では、問題解決につながる農地利用の革新を促す仕組みとして、多様な主体の参画による『生態系サービス支払い』に着目し、その普及のため、社会実験をデザインし、実践を提案します。

なぜこの研究をするのか

私たちは、農地(農業生態系)から食料供給(供給サービス)、大気・水調節(調整サービス)、リクリエーション(文化的サービス)などの様々な生態系サービスを受け取っています。

他方で、持続可能でない農地利用は、様々な土地利用のうち、地球環境問題の最も顕著な要因の一つとされています。さらに、食料不足が懸念されるなか、食料供給(供給サービス)のみを重視すれば、他の生態系サービスの提供が低下し、環境問題が悪化することも懸念されます。

しかし、持続可能な農法の導入など、農業生産活動等の変容次第では、土壌改善、炭素貯留、水質調節等の生態系サービス向上も可能です。農地の利用は、様々な土地利用の類型のなかでも、関係者の行動(農業生産活動等)の変容が、生態系サービスの総合的な提供(環境問題解決)に及ぼすインパクトの大きな分野だと言えます。

多様な生態系サービスを持続的に産み出す観点から農地利用を見ると、長く市場取引が行われて来た供給サービスと異なり、市場での取引に馴染みにくい調整サービスなどは過少供給に陥りがちです。農地の利用方法は、一義的には、利用の権利を有する農業者等によって判断されるため、農業者等による生態系サービスの総合的で持続的な提供に対して経済的インセンティブを生む制度的な枠組みを設計し、広く実践することが重要になっています。

この研究では、環境問題解決につながる農地利用革新を促す仕組みとして、生態系サービスの受益者がその維持管理コストを支払う『生態系サービス支払い』を普及するため、多様な主体の参画による社会実験を提案することを目的とします。

研究の進捗状況

これからやりたいこと

この研究では、多様な生態系サービス間のシナジー、トレードオフも考慮して、効果的な生態系サービス支払いが広く実践されるよう、地域社会・ビジネス・政策へのインパクト、実現可能性などの観点から検討を行い、超学際的研究としての社会実験の提案を取りまとめることとします。

効果的な生態系サービス支払いを設計し、普及するためには、支払い対象としての生態系サービスや農業者等の行為の内容、生態系サービスの提供者と支払者の範囲、支払いの方法、関係者の対話・合意形成の方法、モニタリング・評価の手法などが重要なポイントとなります。

他方で、農地(農業生態系)は複雑系の典型であるため、予め全ての事象を把握して制度的な枠組みの企画立案を行うことは難しいのが実状です。実効性が高く、農地の利用革新を通じた環境問題解決につながる生態系サービス支払いの普及のためには、社会実験を企画し、その検証結果を実践に反映することが必要です。
このため、生態系サービス支払いに関連する多様な分野の研究者、地方自治体、民間企業等の関係者が参画するワークショップを開催して、生態系サービス支払いの社会実験の案を検討し、提案することとします。また、この検討プロセスを通じて、これからの超学際的研究に参画する多様な関係者の連携・協力体制を構築することを目指します。

メンバー

FS責任者

神井 弘之

日本大学大学院総合社会情報研究科・教授

主なメンバー

内山 智裕(東京農業大学国際食料情報学部)
加藤 亮(東京農工大学大学院連合農学研究科)
佐々木 宏樹(農林水産省農林水産政策研究所)
杉原 創(東京農工大学大学院連合農学研究科)
高取 千佳(九州大学大学院芸術工学研究院)
竹田 麻里(東洋大学食環境科学部)
橋本 禅(東京大学大学院農学生命科学研究科)
平井 太郎(弘前大学大学院地域社会研究科)
吉川 夏樹(新潟大学農学部)

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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