実践FS

土地利用革新のための知の集約プログラム

バイオエコノミーがもたらす土地利用秩序を展望する

プロジェクト概要

脱化石燃料時代を担うとされているバイオエコノミー(バイオマスの高度利用が生む経済)は国土利用と産業配置を大きく変えることになります。この研究は生態系サービスとのバランスを保ちつつ、地域内の資源循環を高めるバイオエコノミーを地域自治のレベルで計画し、農林水産業、二次産業、自治体、市民の間の合意形成を容易にするツール群を開発してきます。

なぜこの研究をするのか

地球温暖化対策としての脱化石燃料社会の構築は、18世紀後半以来の大規模な産業革命になります。その主役として提唱されているのがサーキュラーエコノミーとバイオエコノミーです。サーキュラーエコノミーは地下資源の採掘を最小限とするための資源循環型の経済、バイオエコノミーは地表のバイオマス(生物由来の有機物)の高度利用が作る新しい経済を指します(図1)。近年はこれらを複合してサーキュラー・バイオエコノミーと呼ぶことも多く、先進国をはじめとして世界各国が国家戦略を次々と策定しています。再生可能エネルギーの拡大など、その一端はすでに国土利用に表れていますが、その全体像を想い描ける人は今殆どいません。


図1:バイオエコノミーの概念 (Nagothu and Nagano, 2020)

化石燃料はエネルギーだけでなく、プラスチック・合成繊維の他多くの素材の原料でもあります。これを森林や農地由来のバイオマスに切り替えようとすると、膨大な量が必要になります。バイオマスの生産量は地域や手入れにより決まるため、持続可能な利用のためには土地利用と資源循環を綿密に計画せねばなりません。産業立地も大きく変わっていくことになります。一方で総合的なビジョン不在で場当たり的な変化が生じれば、新たな環境問題として地域に混乱と摩擦を生じることになるでしょう。


そこでこの研究は生態系サービスとのバランスを保ちつつ、地域内の資源循環を高めるバイオエコノミーを地域自治のレベルで計画し、農林水産業、産業、自治体、市民の間の合意形成を容易にするツール群を開発してきます(図2)。「見える化」は地域の森林や農地の持続可能なバイオマス供給量や生態系サービスを可視化するものです。「巡る化」はバイオマスを利用する産業を地図に落とした上で、バイオマスの加工過程と流れを可視化するものです。地域課題に合わせて「巡る化」における資源循環を高めるために導入できるバイオエコノミー新産業技術の図鑑「出来る化」を充実させます。実際にバイオエコノミーを推進していく際には費用負担をはじめ経済的、制度的な課題に直面することになります。課題を分析し、克服法を地域の方々と共創していきます。これも「和む化」データベースとして公開してきます。FS期間は日本で多く流通するバイオマスであるスギ(秋田県米代川流域)、コメ(新潟県長岡市ほか)を例に方法論を構築します。都市と近郊の関係(神戸市北区)についても検討を進めます。

図2:バイオエコノミー計画のツール群 (Nagothu and Nagano, 2020)

メンバー

FS責任者

長野 宇規

神戸大学大学院農学研究科・准教授

主なメンバー

田中 賢治 (京都大学防災研究所)
三橋 弘宗 (兵庫県立人と自然の博物館)
高田 克彦 (秋田県立大学木材高度加工研究所)
小笠原 渉 (長岡技術科学大学生物機能工学課程・専攻)

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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