実践FS

土地利用革新のための知の集約プログラム

農山村の脱炭素化、食料安定供給、地域課題の同時解決を実現する新たな土地利用政策体系の構築

プロジェクト概要

農山村は脱炭素化の実現に貢献するための場として大きな期待を集めています。しかし、例えば農地に太陽光発電を導入すれば、エネルギー生産と食料生産とのコンフリクトが生じます。
この研究は農山村における土地利用の問題に着目し、従来の二項対立の議論を超えて、脱炭素化、食料安定供給、地域課題の解決を同時実現する新たな土地利用政策体系の構築を目指します。

なぜこの研究をするのか

地球温暖化への対応が緊急に求められる中、農山村は脱炭素化の実現に貢献するための場として期待されています。たとえば農地は、太陽光発電の適地が減少する中で、残された数少ない導入場所として大きく注目されています。この点に関しては従来から、「全国に〇〇haの耕作放棄地があるのだから、それらの全てで太陽光発電を実施すれば〇〇万kWになる」というような議論がされていますが、取り組みが順調に進んでいるとは言えません。その理由としては、この議論がエネルギー生産か食料生産かという二項対立の議論を想起させること、また地域の実情を十分に考慮しないトップダウンのアプローチに基づいているためです。
この研究は、農山村の脱炭素に関する土地利用について、従来の二項対立の議論を超えて、脱炭素化も、食料安定供給も、地域課題の解決も同時に実現する、地域の実情に柔軟に対応可能な、新たな土地利用政策体系の構築を目指します。

研究の進捗状況

これからやりたいこと

私たちの研究チームは、「農地の多面的利用」と「モジュール化」をキーワードとして、農山村の脱炭素化を実現する、新たな土地利用政策体系の構築を目指します。

「農地の多面的利用」とは、脱炭素化を起点として一つの農地を同時に多面的に利用し、脱炭素化、食料生産、さらには地域課題解決という複数のベネフィットを同時実現することです。農山村と都市の連携により、従来の二項対立の議論を超えて、過疎化などのローカルの課題と、脱炭素化などのグローバルの課題を同時解決する土地利用の実現を目指します(図1)。そのためには、地域の実情に即したきめ細やかな土地利用と、都市の企業等が求める規模感の両立が求められます。

図1:脱炭素化を起点とする農地の多面的利用

私たちのチームではその解決策として、従来のトップダウンのアプローチとは異なる、「モジュール化」による新たな農山村の土地利用を構想しています。具体的には、脱炭素化を起点とする「農地の多面的利用」を実現する様々なタイプの土地モジュール(「農山村脱炭素化ユニット」)を構築し、これを集積し、組み合わせることによって、地域ごとにカスタマイズ可能でありながら、一定規模を有する農山村の脱炭素化の実現を目指します(図2)。

図2:様々なタイプの「農山村脱炭素化ユニット」と地域展開

そのために必要となる諸条件を法律、政策、地域社会、技術など多様な観点から検証していきます。脱炭素を起点として、農山村と都市が連携する新たな農山村の土地利用のあり方を作り出すことが私たちの目標です。

メンバー

FS責任者

野津 喬

早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科 教授

主なメンバー

渡辺 貴史(長崎大学総合生産科学域(環境科学系))
森本 英嗣(三重大学大学院生物資源学研究科)
本田 恭子(岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域)
鷲津 明由(早稲田大学社会科学総合学術院)
奥田 進一(拓殖大学政経学部)
小林 寛(信州大学学術研究院(社会科学系))
方 亦園(早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科)
上野 裕士(内外エンジニアリング(株))
左村 公(パシフィックコンサルタンツ(株))
林 覚(プランツラボラトリー(株))

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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