実践プログラム

土地利用革新のための知の集約プログラム

SATOCONNプロジェクト

プロジェクト概要

先進国では、商品生産と経済的収益の追求のための土地利用の目標と推進力が断片化し、人間と自然の間の長年にわたる相互依存関係が崩壊し、弱体化して、重大な環境破壊をもたらしています。「里山」は、そのような被害を修復し、生物多様性を維持し、気候危機に適切に対処するために、農村地域における土地管理と、人と自然の相互依存関係に関する長年の文化と知識を認識し、それらを生かすことの重要性に光をあてています。この研究は、現在および将来にわたって、文化的ランドスケープに関する土地利用ガバナンス、所有権、管理を強化するための選択肢を特定し、理解し、促進することを目的とします。

なぜこの研究をするのか

人間と自然が深く相互依存していることはしばしば指摘されていますが、現代の経済システムや社会ではその相互依存性はほとんど保たれていません。里山地域には、その相互依存が保持されているだけでなく、さらに改善するのに役立つ知識や技術がふんだんに存在しますが、日本だけでなくヨーロッパでも、政策、法制度、市場、様々な社会プロセスによる理解とサポートが欠如しており、里山の将来は困難にさらされています。この研究は、生物多様性の減少や気候危機など、現在および将来の生態学的課題に対処するよりよい方法を模索するために、これらの地域の里山の事例から得られる価値観と理解を人々に再び結び付けることを目指すものです。

写真1:イギリス南西部の山陵地帯の里山景観(Janet Dwyer撮影)

研究の進捗状況

これからやりたいこと

現在、ヨーロッパと日本の里山地域における多様な経験を把握し、つながりの再構築のための課題とチャンスをより深く理解するための文献レビューを実施しています。また、実際の行動を伴う分析と変革のための研究、実践、政策の最適な連携策について、現代の学際的および超学際的研究方法論から情報とアイディアを収集します。この研究プロジェクトでは、里山におけるつながりの再結合を中心的な課題としており、そのための有力なアプローチを特定するために、セミナーやワークショップでアイディアを共有し発展させます。研究の中心的なモデルは、活発な研究とより広い一般の人たち関与のもとで実験と現実世界の変化を促進する方法論として近年の参加型研究で注目されるようになった「リビングラボ」です。リビングラボは、特定の地域における試行と変化を促進することに焦点をあて、ビジョンの策定、実験、学習、移転可能な実践の促進という段階的なプロセスを実行します。この研究では、ヨーロッパと日本という対照的な地域とコミュニティについて様々なケースを選択したうえで、地域社会に利益をもたらし、グローバルな理解と政策行動に情報を提供するためのリビングラボを創設し、活用します。そして、生物多様性の減少を逆転させ、気候危機に立ち向かいつつ、文化的ランドスケープを活性化、維持するために、里山の概念と実践をよりよく再結合させるための新しいアイディアを生み出すことを目指します。この研究により、将来の土地利用ガバナンスと実践において、継続的かつ強化された里山倫理の価値が社会に認識されることが期待されます。

図1:SATOYAMAイニシアティブの概念図(出典:国連大学SATOYAMAイニシアティブ)

メンバー

プロジェクトリーダー

DWYER, Janet

英国グロースターシャー大学 教授

プロフィール紹介

主なメンバー

深町 加津枝  京都大学地球環境学堂
DEVIENNE, Sophie  アグロ・パリ・テック
SANDSRÖM, Camilla  ウメオ大学
HALLER, Tobias  ベルン大学
LOMBA Angela  ポルト大学
豊田 光世  新潟大学

外部評価委員による評価(英語)

研究スケジュール

2023年度
(令和5)
2024年度
(令和6)
FS FS/PR

研究の流れについて

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