地球犬と行く!世界への冒険 ─ 調査地を研究者と一緒に地球犬が冒険します
お次の冒険は
「滋賀県 草津市
志那の内湖(平湖・柳平湖)」
に行くよ。
案内してくれるのは、
池谷透研究員
だよ!

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▲ 平湖・柳平湖 真珠棚全景
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あー空気が気持ちいい。
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ここは
琵琶湖 なの? -
ここは琵琶湖と水路でつながっている
内湖 だよ。 -
あ、内湖か。
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え、知ってるの?
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え、忘れたの?
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思い出した!オレンジのジャンバーのお兄さんにいろいろおしえてもらったっけ。
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ここは、その一つ。草津市にある
平湖 と柳平湖 。このように湖の周りにはヨシやマコモなどのヨシ帯がひろがっていて、内湖は本湖にくらべて波がおだやかなうえ、魚にとって餌 となる生き物が多くいるから、産卵や生育にもてきしているんだ。 -
▲ 内湖とヨシ帯
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琵琶湖と、この内湖や岸辺の水田を行き来するお魚もいるんだってね。
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地球犬くん、すごーい。物知り。
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近くに住む住民にとっては、
沖曳網 やエリなどの専用の漁具 がなくても魚を捕ることのできる‘おかず採り’の場でもあったんだ。 -
おかず?さっそく
捕 まえようよ♪ -
おそろしい食い気だ。
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そう、地元、
志那 の人たちにとって内湖は生活との深いつながりが50年ほど前まではありました。 -
えっ?!
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田舟 を使っていたころは、自分の水田に行くのにも内湖を通り道として利用し、行き帰りに魚を捕っていたんだ。でも、水郷 だった町の様子も内湖のかたちと共にずいぶん変わりました。 -
▲ 田舟での憩いのひととき
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皆んなでお昼ごはんを囲んで楽しそうなのに。今はもうないのか・・・。
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そうだね。昭和初期には、他の地域にさきがけて内湖の水面を使った
淡水真珠養殖 が始められ、堅田 とならんで産業につながる利用もされていたんだよ。 -
▲ 淡水真珠養殖
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わぁ、ピンク色の真珠だ!キレイ♡
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おじょうさん、
首輪 におつけしましょうか。 -
あとでいいや。
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ピキーン(硬直)
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えーと、それでね・・・。
内湖は、まわりの地域社会の多様 な文化を支えてきた一方、生物多様性の高い場所でもあるんだよ。 -
▲ フナの産卵
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あっ、何かいるよ!
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フナの産卵だよ。ほかにもコイ、モロコなどの魚をはじめ、色んな生き物が産卵のためにやってくるよ。最近は、琵琶湖の水質は良くなったけど、魚は昔に比べて減ったまま。生き物の生息地としての内湖の大切さが改めて見直されはじめたよ!
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それはみんなで自然をちゃんと守らないとね。
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そう。だから滋賀県では国の「生物多様性基本法」や「琵琶湖
保全再生法 」という法律に基づいて生態系を含めた自然環境や景観 の保全と利用が上手くいくように様々な取り組みを計画しているよ。 -
法律まで作らなきゃいけないくらい自然を失ってしまったの?
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▲ 内湖エリ
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生活や自然の利用の仕方が変わったために自然との付き合い方を考え直さなくてはいけないことが最近増えてきたね。内湖の多くは戦時・戦後の
食糧増産 のために干拓 されて消失してしまったんだ。 -
人間の都合よく干拓されてしまったんだね。代表して謝ります。ごめんなさい。
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また人間様気取りだ・・・
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残された平湖・柳平湖も、かつては琵琶湖と24もの水路でつながれいて、野洲川を水源にもつ中の井川と
栗東金勝山 を水源地とする葉山川から流入があったんだ。。 -
今はずいぶん変わっちゃったんだね。
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あそこで何かやっているよ!
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あれは地元の⼩学⽣が内湖で育った⾙を触らせても らっているところ。地域の人たちが試験養殖をして、以前のように3年で
光沢 の良い真珠ができることを確かめたんだ。 -
僕もみたい♪
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あたりー!貝の中にちゃんと真珠がはいっているね♪
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色んな生き物がいて、今は取り戻しつつある自然だけど、平成10年頃は
富栄養化 によって自然のバランスがくずれてしまったために、アオコがたくさん発生して、魚採りも真珠養殖も行えない状態だったんだ。 -
どうやって回復していったの?
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行政と住民が相談して
浚渫 や湖岸に浅瀬 をつくってヨシなどの植栽 をしながら、内湖に水が流入する量を増やしてきたんだ。今、地元の人が内湖を活用しながら、以前のような水辺の生き物のにぎわいを実感しはじめたところなんだ!。 -
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住民のみんなも自主的に保全活動をするってすばらしい!
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▲ 湖岸植栽
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琵琶湖越しに
比叡山 をはじめとする山並みを見ることのできる素敵な内湖が戻ってきました。 -
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お兄さんも一緒に活動を?
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はい。わたしたちは、流入したリンの
循環 などの生態系と水質との関わりや、在来魚の魚道の利用状況など調査によって得られた結果を地元の人たちに提供しながら、生態系と環境の回復度合いを調べています。 -
▲ 内湖調査協働
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お兄さん、この豊かな恵みを将来にも残せるよう頑張ってください!
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ナス子ちゃんが珍しくまともな事をいったところで、そろそろおいとま。またね~
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気を付けてね。
滋賀県志那の内湖(平湖・柳平湖)
- 地理:
- 滋賀県草津市。琵琶湖と水路によってつながっている湖沼、かつての水郷
- 気候:
- 風が強い
- 経済:
- 農村振興地域、淡水真珠養殖発祥、志那漁協
- 民族:
- 日本人
- 言語:
- 日本語
- 宗教:
- 浄土宗のお寺が多い
- 食文化:
- 煮つけ、洗いなど湖魚料理
- 建築:
- 水郷の名残の水路の面影が町中にかろうじて見られる。真珠業の興隆を忍ばせる構えの立派な屋敷がある
今回のガイド
池谷 透
総合地球環境学研究所 研究員
専門は水域生態学。プランクトン藻類の光エネルギーとリンなどの栄養物質の利用・群集解析に関する基礎研究をもとに、局地性湧昇や海洋混合による生物生産と生態系への影響や海洋生物資源の循環利用、自然保護区の国際制度について研究を行ってきました。現在、琵琶湖とフィリピン・ラグナ湖流入河川の付着微生物、水田プランクトン藻類、内湖の物質循環とプランクトン微生物、琵琶湖のメタン酸化細菌の調査を進めています。
