地球犬と行く!世界への冒険 ─ 調査地を研究者と一緒に地球犬が冒険します
次の冒険は
「インドネシア スマトラ島」
に行くよ。
案内してくれるのは、
水野広祐 教授
だよ!

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▲ スマトラ西岸のインド洋とヤシの木
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ヤシの実だー!!
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落ちてこないかなー♪
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何してんの?
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ん?
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南国の風に吹かれているところです。
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潮風 がきもちいいでしょ。ここはスマトラ島西岸のパダン市。インド洋に面していて、赤道のすぐ南側なんだ。でも、町の山の手には急峻 なバリサーン山脈 が走っていて、山の上は高原地帯 、高原は比較的 冷涼 な気候なんですよ。 -
だからたくさん人も住んでるってわけか。
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▲ 急峻なスマトラ西岸部の海岸線
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そうだね。
いっぽう、島の東岸はマラッカ海峡 に面していて、バリサーン山脈からは東部に向けて数多くの大河 が流れ出てるんだ。 -
さすが
現地 の人は詳 しいね。 -
現地の人に見えた?あははー
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え?
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私は日本人だけどね。
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色んなことに
詳 しいからてっきり・・・すみません。 -
いいんですよ。私は水野っていいます。
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もしかして地球研の水野先生?
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そうです。よろしく。
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よろしくお願いします!
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ここスマトラは
地形 や環境 、暮 らす文化もさまざまです。 -
どんな人々がくらしているの?
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▲ 西スマトラ州パダン市の
伝統的 なモチーフと現代建築 によるモスク -
バリサーン山脈の中部を中心に西岸域(主に西スマトラ州)に暮らすミナンカバウ人は、文化的に
母系制 の社会として有名。 -
▲ 西スマトラ、ミナンカバウの伝統的な首長の
就任式典 -
母系制?
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簡単 に言えば、お母さんの側の血筋 によって家族を組織 する制度 のことだよ。たとえば、水田 や家屋 といった財産 は、お母さんからその娘たちに引き継 がれるんだ。 -
つまり
将来 は、地球研の土地やお金は全部わたくしのものってことね。 -
あの・・・ですからこれは人間界の話ですよ。
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一方、男性は
出稼 ぎの伝統からインドネシア全土にビジネスネットワークをもっているよ。 -
さすが、男性は顔がひろいんだよ!
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北部一帯に暮らすバタク人は大カルデラであるトバ湖周辺を
故郷 として建築や衣装 のエキゾチックな文化で知られているよ。 -
バティックは
涼 しくて、模様 もきれいだよね♪ -
そうだね。
バティックとはろうけつ染 め生地 の特産品 のことなんだ。この模様は地域 によって違 っていて、いろいろな模様を楽しめるよ。 -
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今から少し歩くよ。スマトラ島
北端 のバンダ・アチェ市にいくよ。 -
▲ アチェ州バンダアチェの港
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あ、港だ!いっぱい人がいるね。
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わ!大きなアイスバーがあるよ!
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あれは、ただの氷だよ。港ではたくさんの氷が必要なんだ。
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ナス子ちゃんはすぐ食べ物に見えてしまう
癖 がありまして・・・ -
▲ アチェ州バンダアチェの海
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ところでスマトラ島はどんなものがとれるの?
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バリサーン山脈
沿 いの高原地帯では稲作 やコーヒーなどの農業がさかんなんだ。いっぽう天然資源 はスマトラ東部のリアウ州を中心に、20世紀後半以降、原油 の採掘 や開発が進んだんだ。現在は、生産量 は減少傾向 にあるものの、依然 として大きな産業となっているよ。 -
天然資源があるんだね。
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それから、アブラヤシの
栽培 も、1990年代以降、比較的 人口密度 が低く熱帯雨林 におおわれていた東部の丘陵 ・低湿地帯 で爆発的 に拡大 していったんだよ。 -
アブラヤシって?
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食用油やせっけんなどの原料となる植物だよ。
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▲ リアウ州、スマトラ東岸部の低湿地
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つまり、地中から油を
採取 して、地上では油を育てている状況 にあるってこと。 -
だから「リアウ州は
良 く燃 える」なんて言われてるんですね!あははっ -
地球犬君、それは笑えないジョークだよ・・・
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え?燃える?どうして?
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ナス子ちゃん、
防災頭巾 も持ってきてたの?! -
うん、いざという時のために。
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スマトラ島東部の
沿岸 は泥炭地 といって樹木 や植物などが何千年もたいせきすることによってできた土壌 があるんだ。 -
泥炭地?どろんこ遊びできそうだね♪
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え、僕はこの美しい白い
毛並 みが乱れるから遠慮 しとくよ。 -
泥炭地は、草や木などの
有機物 が腐 らずにたまってできた土地で、膨大 な炭素 がたくわえられているから、泥炭地が乾燥 すると燃えやすくなってしまうというわけ。 -
それは困った問題では?!
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▲ リアウ州の
平坦 な土地と泥炭湿地林 -
そこで、わたしたちは泥炭湿地におけるアブラヤシ
農園 の拡大の傾向 からシフトチェンジを行うことを考えています! -
チェーンジ!
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どんなふうにするの?
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湿地の状態を保ったまま生産できる農作物をつくるように変えていくんだ。
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でも先生、それは簡単じゃないのでは?
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▲ リアウ州の調査地域において、住民・協力者たちと
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簡単じゃないけど、地域の人々と協力しながら進めることを大事にしているんだ。
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▲ リアウ州の調査地にて、
観測機器 の取り付け -
こんなふうに、
気象 観測機器を取り付けて日射量 や風向 などを測 ったりしていますよ。 -
水野先生、かっこいいなー!
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インドネシア語もしゃべってる!
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ほめてもらったお礼にどうぞ。
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▲ パダン料理
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きゅーん♡
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わぁ!おいしそう♡
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パダン料理です。たくさん出される小皿から好きな小皿だけとって食べるスタイル。いっぱい食べて。
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いただきます!!
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むむ!辛い!!
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これもインドネシアの食文化です。味わってね。
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水野先生、今日はいろいろありがとうございました。
海で遊んで帰ります! -
▲ アチェ州バンダアチェ市の海(津波
被害 後) -
はい、気を付けてね!
ドーン!
ぱくっ!
インドネシア スマトラ島
- 地理:
- 東南アジア島しょ部、東岸はマラッカ海峡をはさんでマレー半島を望む
- 気候:
- 熱帯モンスーン気候
- 経済:
- 稲作やコーヒー栽培などの農業が一般的であるが、東岸部(リアウ州)のアブラヤシと原油は一大産業
- 民族:
- ミナンカバウ人、バタク人、マレー人、アチェ人、ジャワ人、華僑などなど多様
- 言語:
- 公用語はインドネシア語でありほぼ全ての人がこれを話すが、地域言語は多様(52の言語とされる)
- 宗教:
- 大多数がイスラム教徒であるが、キリスト教徒や仏教徒も存在する
- 食文化:
- 地域ごとに様々な料理があるが、西スマトラのパダン料理は、その辛さと小皿提供のスタイルで有名
- 建築:
- 伝統的には木造建築で、屋根先のとがったバタクやミナンカバウの家は有名。近年は近代的なビルも
今回のガイド
水野 広祐
総合地球環境学研究所 教授
熱帯泥炭社会プロジェクト、プロジェクトリーダー。大学を卒業後、アジア経済研究所に勤務。1996年、京都大学に赴任し、現在京都大学東南アジア地域研究研究所、総合地球環境学研究所、教授。専門は、政治経済学、地域研究。特に西ジャワの農村部における農村経済に関する研究を行ってきたが、2008年以降、リアウ州の泥炭地域における経済活動の研究を進めている。
