研究目標


地球環境問題の緩和とそれへの適応のために様々な社会経済活動と自然資本との関係性をそれぞれの地域において劇的に改善する必要がある。本プログラムでは土地の所有や利用に関する新たな考え方を提示するとともに、利用の変化をもたらす仕組みを社会実装しスケールアップしていくための科学に裏打ちされた汎用的な制度的枠組みや政策を構築し、国際的に共有することを目指す。

 

ミッション



土地はその利用により多様な付加価値を創出し、社会経済活動の基盤として世界レベルでの人口増加への対応や貧困削減に対して大きな役割を担っている。一方で、土地で営まれる社会経済活動による温室効果ガスなどの排出、土地利用の変化に伴う生態系サービスの劣化などが地球環境問題の中核を構成している。このため、土地の利用や管理の方法を一定の地理的範囲において、地域によっては極端な人口減少のもとで劇的に改善し、持続的な集約化等を目指す必要がある。例えば農山村漁村や都市での土地利用の「位置」や「方法」の改善は生態系サービスや治水能力の向上、土壌炭素貯留の強化、再生可能エネルギーの活用などの地球環境問題の緩和と適応のための多様な価値をもたらす。それらの科学的知見をもとに土地利用の劇的な改善をはかることが「残された時間」が短い今、求められている。

そのためには、対峙しなければならない課題がある。まず社会経済システムにおける企業などの個々のアクターの行動と地域的な協調行動の相克の克服である。例えばフードシステムの多様な下流アクターからの「作用」を受ける農家による地域全体の集合行為を促進させるような制度デザインには大きな困難が伴う。地球環境問題の緩和や適応などに係る政策も個々のアクターに作用することも集合行為を複雑にする。社会経済活動と自然資本の関係性の形態や地理的範囲が多様なことに伴い調整の主体や範囲も多様になる。土地利用が地域の文化の基盤になっていること、人口動態が大きく変動していること、多くの土地利用には水利用が付随していること、都市と農山漁村の相互補完・連関性も重要観点となる。

これらを念頭に、土地及び付随する水資源の利用改善に向けた新たな仕組や主体の構想、それらをスケールアップさせるための制度的枠組・政策の提示、知見を共有し革新的なアイディアを創出する国際的「政策生態系」の役割を果たすことによる制度・政策のメインストリーム化・国際標準化、に資するため以下を目指す。①土地や水資源の「所有」に関する新たな考え方・制度の提示②科学的な知見をもとにした土地利用の改善にむけた利用調整や主体の構想、科学的研究成果や情報技術を活用した、国、自治体、企業などからのさまざまなインセンティブの統合と制度的枠組みの構築③政策成果の科学的可視化、アクター間での共有・評価、それらの政策への反映とそれに基づくスケールアップ④市場・貿易システムと持続的土地・水利用が整合する国際的ルールや規範の構築。