地球犬と行く!世界への冒険 ─ 調査地を研究者と一緒に地球犬が冒険します
次にやって来たのは
「アラスカ州シトカ」
です。
案内してくれるのは、
濵田信吾
プロジェクト研究員
だよ!

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◀ アラスカ州シトカ -
遠くまで来たね。ずいぶん寒そうだなぁ。
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アラスカはすごく寒い場所というイメージがあるけど、アラスカ州は東西南北に広がっていて、南の方はみんなが思っているほど寒くないらしいよ。
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それ、ほんとなの?!
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アラスカは初めて?
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あっ、はい。初めてです。お兄さんはだあれ?
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オレはアラスカの海を愛する男。
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キザなお兄さん。だけど色々教えてもらえそう。
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よかったらシトカの街を案内するよ。
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よろしくお願いします!
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任せて!
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寒いねー。
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そう?シトカの夏の平均気温は20度以下、冬の平均気温は氷点下なので、京都に比べると寒いけど、アラスカの中ではそれほど寒くない所だよ。
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海の匂いだー!
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▲ ニシン漁船
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うわ、いっぱい船があるよ!
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あれはニシン漁船だよ。
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この辺りは魚がよく獲れるの?
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海に囲まれたシトカには魚がたくさんいるので、シトカの周りにはクジラやアザラシなど、魚を食べる他の生き物もたくさんいるんだよ。
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シトカの人は海とともに生活しているんだね。
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シトカという町はこの豊かな水産資源を利用した缶詰作りで発展してきたんだ。今でもシトカの主要産業は漁業なんだよ。
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そんなにいっぱい獲っても食べきれないんじゃない?
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サケやニシンなど、いろんな魚を鮮魚や冷凍にしてアメリカの他の州に送ったり、国外に輸出もしているよ。
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そうなんだ。
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そうだ、お二人さんに面白いものを見せてあげるよ。
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なんだろー。たのしみ♪
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▲ トーテムポール
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ちわーす。
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わあ!!!びっくりした!だあれ?
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僕はトーテムポールのポールだよ、よろしく。
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あ、どうも。よろしくお願いします・・・
ポールさんはここで何しているの? -
・・・何って?特になんにもしてないけど・・・
僕のことは気にせずに楽しんでいって。 -
あ、はい、では失礼します、ポールさん・・・
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◀ トーテムポール全体
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ポールさんは何もしてないって言ったけど、実は彼のようなトーテムポールはとても大事な仕事をしているんだ。この場所には何千年もトリンギットという先住民が住んでいて、彼らは動物や人、神話の登場者をモチーフにトーテムポールを作ったんだよ。僕たち日本人にはすぐは分からないけど、トーテムポールのデザインにはその土地やそこに住んでいた人についての歴史や情報が入っているんだ。
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おもしろい顔してたね。
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あっ!あそこで何かしている人がいるよ。
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▲ トリンギット 枝入れ
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トリンギットの人たちは、ニシンの産卵時期になると、海水に木の枝を沈めるんだよ。数日後にその場所に戻ると、その枝にはニシンが産みつけた卵がびっしりと付いていて、その卵を獲るんだ。
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この辺りはよく獲れるの?
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タイヘイヨウニシンという魚は、普段は海のどこかを泳いでるんだけど、毎年産卵のために沿岸に戻ってくるんだ。もしニシンという「親」を獲らなかったら、また来年卵を産み付けに戻ってくる。それを知っているトリンギットの人たちは、魚を獲らずに魚卵だけ、必要な分だけ獲るこの方法をずっと続けているんだよ。
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ちゃんと生き物の事の考えているんだね。
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トリンギットの人たちにとっても、魚は非常に重要な資源だからね。魚を獲りすぎないようにいろんな決まり事や教えを守り続けているんだよ
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▲ トリンギット 枝入れ
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いっぱい産むんだそー!(いっぱい食べたいからね、ウシシッ)
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◀ ちょっとモダンな
トリンギットのニシン卵サラダ -
あっちの方にもたくさん船があるけど、何してるんだろ?
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▲ 商業ニシン漁
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あの船は漁船で、輸出するためのニシンを巻き網という漁法で獲る船団。トリンギットの収穫の仕方と異なり、商業ニシン漁は、産卵する前のニシンをたくさん獲るんだ。
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産卵前のニシンを獲っちゃうの?
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そうなんだ。アラスカ州によって獲る量や場所、時間など厳しく管理されているけれど、地元トリンギットの人たちは、毎年ニシンが産卵に来る場所が減ってきていることを心配しているんだ。短期間に大量の魚を漁獲する大規模なニシン漁は、ニシン、そしてニシンという食料に依存する他の生物にも大きな影響を及ぼしている可能性があるからね。
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そこまでしてニシンを食べなくても他の魚もいるのにどうしてなんだろう。
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それはね、実は日本と関係しているんだよ。
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どうして?世界的にブームなSushiが原因 ですか??
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わかった、ニシンそばか?!
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ちょっと違うね。
「カズノコ」って知ってる?カズノコはカズの子じゃないよ。
カズノコとは、産卵する寸前にニシンのお腹から取り出した卵のこと。 -
知ってる!お正月のおせち料理でよく入っているよね!
縁起のいい食べ物として日本ではよく親しまれてるね。 -
実は日本で食べられるカズノコのほとんどが輸入されたものなんだよ。シトカの商業ニシン漁は、日本にカズノコを輸出するために行われてるんだ。つまり、今シトカで問題となっているニシン資源の問題は、僕たち日本人のカズノコ消費が密接に関係しているんだ。
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◀ カズノコ評価と
資源管理 -
こうやって日本の水産会社の人達が、カズノコの完熟度を調べて獲る時期を見極めるんだよ。熟れすぎていても若すぎてもダメだからね。
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日本人の食へのこだわりだね。
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トリンギットの人も僕たち日本人もカズノコを食べ続けられるようにするには、限りあるニシン資源をいかに獲りすぎず大事に利用する必要があるね。
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これからはもっとありがたみを感じていただきます。
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お兄さん今日は色々教えてくれてありがとう。
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どういたしまして。またいつでも遊びにきてね。
アラスカ州シトカ
- 地理:
- 北アメリカ北西部、アラスカ州。すぐそばにヤポンスキー島という場所があります。ヤポンスキーはロシア語で「日本の」という意味で、200年前に日本の漁師さんが漂流してその島に流れついたことからそう呼ばれるようになりました。
- 気候:
- 涼しくて雨がよく降る海洋性気候
- 経済:
- 漁業が中心ですが、夏は観光客も多く訪れます。
- 民族:
- トリンギット、ハイダなど多くの先住民族を含む多様な社会
- 言語:
- 英語が主要言語ですが、トリンギット語も使われています。
今回のガイド
濵田信吾
総合地球環境学研究所 プロジェクト研究員
米国インディアナ大学卒。専門は海洋人類学とフード・スタディーズ。環北太平洋におけるニシン文化史を中心に、水産業に携わる様々な人々が持つ 多様な「正しい資源管理」の定義と、その相違点を越えた環境保全のデザインについて考えている。最近は消費と浪費、そして廃棄から考える食文化と水産資源利用についても調べています。
