地球犬と行く!世界への冒険 ─ 調査地を研究者と一緒に地球犬が冒険します
お次は
「日本 滋賀県愛知川 流域」
からおとどけします。
案内してくれるのは、
橋本慧子
プロジェクト研究員
だよ!

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▲ 愛知川
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今回は日本で「水」お勉強です!
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えっ!?今日はお勉強なの? 何の?
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水質や水の管理について、一緒にお勉強しましょうね。
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?!あっ、はいお姉さん♡♡よろしくお願いします♡
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地球犬君!?さっきと全然態度がちがう・・・。
ま、やる気を出してくれたからいいけどさっ。 -
▲ 湧水
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のどかなところだね。
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いっぱい走れるねー!
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今日はお勉強なんでしょ?
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あ、はいそうです。
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▲ 田んぼの様子
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ではさっそく始めましょう。ここは滋賀県と三重県境にそびえる鈴鹿連峰に源を発する愛知川。沿岸地域は、豊かな沖積平野と山麓にかけて大地が広がっていて、湖東平野と呼ばれる滋賀県内でも随一の穀倉地帯を形成しているところよ。
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▲ 愛知川
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古くから、愛知川の水が農業に利用されてくたんだけど、愛知川は天井川(砂礫の堆積により河床(川底)が周辺の平面地よりも高くなった川)でもあるから、中流以下ではすぐに水が涸れてしまうの。
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琵琶湖畔の豊富な水資源にめぐまれている地域でも水がなくなっちゃうんだね。
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だから人々は「
井堰 」と呼ばれる取水施設を強化したり、ため池や井戸を増設したりといった努力をしてきたの。 -
大変そう。
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水不足による水争い、特に上下流集落間による争いは非常に激しかったそうよ。
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みんな仲良くしないといけなよね。何とかならないのかな。
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ん?すごく大きな穴が空いてるよ!
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▲ 永源寺ダム
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これは永源寺ダムよ。昭和47年に待望のダムが建設されて、同時に圃場整備や農地開発が進んで、ダムからの水供給を受ける農業者全体を総括する組織として、愛知川沿岸土地改良区が地域全体の水管理を実施してきたのよ。
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このダムからどうやって水を流すの?
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▲ 大分水工
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ダムの少し下流にあるこの施設で、水量を調整してそれぞれの地域に分水するのよ。
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うまくできているねー。
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こっちにはプールがあるよ!
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▲ 調整池
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これは調整池といって、一時的に用水路の水を貯めておくために作られた人工の池よ。
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ナス子ちゃん、遊泳禁止ですよ!
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えっ・・・!?
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ダムができたなら、もう安心だね。
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でもね、ダム建設後も水不足は生じていて、農家や水管理者たちはその対策に苦労を強いられてきたのよ。
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どうしてダムができても水不足なの?
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それはね、ダム計画から建設までに20年余りかかってしまったために、その間に農業を取り巻く環境が大きく変わってしまったの。
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どんなふうに変わったの?
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圃場整備技術が大きく変わって、用水と排水が分離され、より多くの用水が必要となったことや、春先に安定的な水供給可能となったため多くの農家が作付け品種に移行したこと、兼業農家が増加したために作業日つまり水を使う日が土日やGWなどの休日に集中するという問題が生じているの。
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調節が難しいんだね。
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この地域全体の水管理を任される土地改良区と呼ばれる水管理組織や、各集落、個人の農家はそれぞれのレベルで対策をしているの。
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▲ 反復利用施設
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たとえばこれは反復利用施設といって、排水を再利用するための設備で、節水や琵琶湖への濁水の流出を減らす目的で設置されているの。
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優れもの!
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ダムから離れたところでは、共同で使える井戸も使われているの。
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◀ 古い井戸
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私は今からお仕事です。
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▲ 調査の様子
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どんなお仕事するの?
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水路の水を採取して水質分析をしたり、流れる量を測ったりといった作業をしています。
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◀ 調査の様子
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この装置も調査のためのもの?
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そうよ。田んぼの水位変化から水をどれだけ入れたかや、土に水が浸み込む早さなどを調べているの。
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当たり前にあると思っている水も、有効に使うために努力や工夫がされているんだね。
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お姉さんのお仕事って地域の人にとっても重要なことだね。
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私たちは、これからも水不足に対する各レベルの対応策を具体的に調べていくつもりよ。
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頑張ってね!
今日はどうもありがとうございました。 -
またいつでもお勉強に来てね!
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はい!
滋賀県愛知川流域
- 地理:
- 琵琶湖の湖東に位置する、滋賀県彦根市・近江八幡市・東近江市・犬上郡・愛知郡・蒲生郡を含む地域。平野部が大きく開けている
- 気候:
- 世界の気候区分では温帯地域、日本の気候区分では太平洋岸気候と内陸気候を含む
- 経済:
- 穀倉地帯や交通の要衝として栄え、肉牛の飼育も盛ん。近江商人を最も多く輩出した地域でもある
- 宗教:
- 寺社・仏閣が多い
- 食文化:
- 近江牛、近江米、鮒寿司、小鮎やモロコの佃煮、愛荘ヤマイモ、政所茶など
- 建築:
- 彦根城、東近江市五個荘町金堂、ヴォーリズ建築など
今回のガイド
橋本慧子
総合地球環境学研究所 プロジェクト研究員
2012年4月から地球研に所属しています。専門は農業土木学を基本とする、灌漑排水学、土壌物理学、土壌肥料学です。フィールドでは、水路の水を採取して水質分析をしたり、流れる量を測ったりといった作業をしています。農家さんや水管理組織の職員さんにお話を伺うこともしています。
