プロジェクト概要

 

日本は代表的な森林国であるが、近年、林業経済の低迷と、中山間地の過疎化の進行によって、大面積を占める人工林の管理の不足や放棄の広がりに歯止めがかからない。人びとは森林という存在から「隔たり」、獣害や感染症、防災機能の 低下などといった社会問題も顕在化している。背景には、人びとが、森林がなぜ必要か、どのような森林である必要があるかという価値認識の喪失があり、未来を見据えた管理や利用の方向を見通すことを阻んでいるのではないだろうか。 このような問題意識を踏まえて、本研究は人と森林の持続的な相互作用環を再構築する道筋を示し、それに至る方法論を構築することを目的とする。このために以下のようなアプローチで研究を進める。
アプローチ1)人と社会にとって森林の価値とはなにか。歴史的な時間スケールで明らかにし、価値観が相互作用環の形成にどのような影響を与えているかを明らかにする。
アプローチ2)現在の森林の過少利用状況に至る、自然環境・社会経済的な状況の変化と、今日的な生態系サービスの必要性/充足性を把握・可視化する。
アプローチ3)自然環境、社会経済状況の異なる複数の国々において、森林に対する人びとの価値観に関する調査を実施し、人と森林との関係性への影響要因を探る。
アプローチ4)上記を踏まえて、森林についての価値観が形成されるメカニズムを整理し、理論を提示する。
アプローチ5)上記を踏まえ、森林と関わる地域にある今日的な問題を解決するために、実践的な研究活動を行うなかで
未来にむけて新たな相互作用環の構築を目指す。


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  プログラムへの貢献について PDから一言

 

世界的な森林の消失は地球環境問題の喫緊の課題として認識されています。しかし実体的な森林の消失と並んで、森林と社会あるいは人々との間の「隔たり」も、同じように早急に対処すべき重要な課題であるというのが本プロジェクトの問題意識です。人と森を切り離し、隔たりを広げるのは、政治的、経済的要因もあるでしょうし、社会的、文化的要因も大きく作用しています。 この「隔たり」を埋め、人と社会と森林の相互作用環を再構築するために必要な作業を学際的、超学際的に行おうとする大手ISは、生態学を正面から文化の問題とリンクさせようとする点で、本プログラムに大きな貢献をしています。

 

 

プロジェクト概要

本研究では,成長著しいインドの主要都市を対象として,熱帯アジアにおいて急増する都市住宅の省エネ・脱炭素化を目的とした新たな「パッシブ建築文化」の創成を長期的な目標とする。
ISとしての1年間の研究期間(2022年4月~2023年3月)では,ムンバイを対象としたフィールド調査を実施し,現状の把握を行うとともに,FS以降の研究のフレームワークを定めることを目的とする。
住宅居住者を対象としたアンケート調査によって,一般居住者のライフスタイルや気候適応行動,さらに,熱的快適性や健康状況を明らかにする。典型的住宅を対象とした実測によって,建物属性を調べるとともに,室内熱環境,及び,室内外の空気質の実態を明らかにする。一方で,地域内にある土着的建築(ヴァナキュラー建築)を視察し,そこに培われた伝統的建築技術を考察する。以上の調査結果から,「熱的快適性・健康」―「省エネ・脱炭素」―「幸福度・生活の質」を地域の文脈のうえでバランスよく同時に満たすための方法を考察し,これらの総体を建築文化としてまとめる研究フレームワークとその深化の方法を精査する。


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  プログラムへの貢献について PDから一言

 

経済成長の著しい東南アジアや南アジアの大都市圏では、新たにマスとして出現しつつある豊かなミドルクラスの消費行動が、環境の保全にも悪化にも大きな影響を与えています。そうした中産階層の都市戸建て住居は、冷房設備の充実や密閉建築などによって環境負荷を高める一方で、ヴァナキュラーな建築技法を再活用したパッシブ建築の受容によって、環境負荷の軽減を図る可能性も生まれています。 しかしその受容のためには、従来の行動を変容させ新たな価値観を作り出すことも必要です。本プロジェクトは、インドの大都市圏をフィールドに、この問題に実験的に取り組もうとする挑戦的な研究であり、科学的知見がどのように文化と相互作用していくのかを明らかにする点で本プログラムへの貢献が期待できます。

 

 

プロジェクト概要

 

人間にとって(もしくは自民族,自国,自身にとって)の未来を優先的に考えがちな問題意識から脱却し,他種(もしくは他民族,他国,他者)の見え方・考え方・価値観を相対化しつつ,人間以外の種も含む複数種すなわち「マルチスピーシーズ」としてのあるべき「生き方」と「未来可能性」を示していく「総合地球環境学」の構築を目指す.そのために,自然資源管理と人間・家畜関係にあらわれる在来知に着目して,「地球環境問題の根源である文化の問題」に迫る学際的かつ超学際的なプロジェクト研究を推進していく。


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  プログラムへの貢献について PDから一言

 

地球環境問題に「資源」を切り口にアプローチしようとするのが本プロジェクトです。その際の方法論として採用したのが「マルチスピーシズ」という手法と思想です。これまで資源は、「人間にとっての」という意味で認識されてきました。しかし無生物も含めた存在を資源として認識するには、その主体も人間以外のマルチスピーシズを想定する必要があります。 これまで環境や資源を捉えてきた視座そのものの転換と相対化・複数化を試みようとする野心的で実験的な研究です。資源化に作用する重要な要員として、文化を措定し、その文化も脱人間中心化しようとする研究は、科学と文化の対話プログラムにもう一つの可能性を与えてくれます。

 

 

プロジェクト概要

 

人々は「持続可能性」をどのようなものと認識し、それに基づきどのように行為するのか、それは異なる文化コンテクストにおいてどのように表出するのか。今日、「持続可能性」の危機について、科学的データが多く提供されている一方で、それが人間の環境との関わり、行動、思考とどのように関わるのかについての人文社会科学的探究も理念的議論も十分になされているとは言えない。にもかかわらず、曖昧に共有された「持続可能性」概念は既にグローバルかつ規範的な価値として広がり、人々の行為、社会的責任や制度を伴う実体的変化をもたらしている。そこで本研究は、グローバルな科学知としての「持続可能性」が人々の生活世界での認識や行動とどのように接合または乖離しているのかを分析する。 インキュベーション〜予備研究段階では、「持続可能性」概念を概念史やテキスト分析を通じて要素分解し、それを元に、人々の価値・心理・行動を把握するための分析スケールと質問票を開発する。プレリサーチ以降では、異なる文化コンテクストで質問票調査と人類学的なフィールドワークを行う。


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  プログラムへの貢献について PDから一言

 

「持続可能性」概念にかかる認知、行為、文化の把握と在来知の脱周縁化(山田 肖子) 持続可能性というタームは、今日、最も肯定的に使用され未来を展望する意味を帯びて流通しています。しかし、その現象の背景にある価値基準や世界観については十分な検討がなされているとは言えません。そこで本プロジェクトは、この点を切り口に根源的に持続可能性問題を思考します。それは単に概念の整理や定義の確立という「言葉」や抽象的な思考ゲームではなく、価値と行動を規定し変容をもたらす現実の社会の基盤に迫るものです。科学的タームと日常的(文化的)価値が交錯する場を対象とする点で、本プログラムに重要な貢献をしています。

 

 

 

 

 

 

プロジェクト概要

海と陸を隔てる大規模堤防の建造は、自然環境の分断だけではなく、住民の賛成・反対への分断や、目を背ける意図的無関心層の増加をもたらし、コミュニティー文化が破壊されることが多い。 そこで、つながりの再構築を⽬指して、三陸リアス海岸(宮城県気仙沼市)と有明海(柳川市・諫早市)で研究を行う。 気仙沼では森は海の恋人運動によって「つながり意識」の変容に成功しており、また、東日本大震災後に津波防潮堤を建設せずに湿地・干潟を再生した地域がある。⼀方、諫早湾では潮受け堤防や陸と海の間としての干潟の保全再生を巡って裁判が20年間続き、地域社会が分断されている。 そこで、森は海の恋人活動を人文社会学的に評価し、また、防潮堤の有無による生態系構造の違いを自然科学研究により評価し、両者から分断修復の方法論を見いだす。そして、ウナギが遡れる森川里海づくりとして、有明海柳川市において市民・学生・行政・研究者の協働による小規模な社会実験を行い、さらに諫早湾流域圏に適用して検証する。


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  プログラムへの貢献について PDから一言

 

分断された海と森をつなぎ直し流域圏の豊かな自然・社会文化を取り戻す-共有できる経験・価値を軸にした協働方法-(横山 勝英) 森と川と海の連関は、現代社会においては常に切断・分断の危機にあります。それだけでなく、社会にも多種多様な分断線が引かれ、固定化されることで共生を困難にしています。本プロジェクトはこうした状況を対象化して、その分断されたもの同士をつなぎ合わせる試みをすることで、人々の生活、社会・文化の継承、そして環境の保全を図ろうとする野心的な試みです。 切り離されたものを再びつなぎ直すためには、従来の科学的知識の啓発や近代技術による統御では十分ではありません。そのために、環境問題の現場で作動する地域の知恵を生かし協働を可能にする方策(それが環境文化の創成につながります)を提案するのがこのプロジェクトです。