研究目標

>地球環境問題の現場に作用する諸力の複雑な交錯と結合の過程を、学際的、超学際的手法によって解き明かす。
とりわけその過程における文化の役割を射程に入れて、持続可能な未来社会における人と自然の新たな相互関係性を展望する。

 

 

ミッション

 

人新世という時代は、人間の活動が地球生態系の大規模な破局を予感させる危機の時代である。この危機を正確に認識し、効果的な対応をするためには個々の社会や文化・ 価値を超えた、科学が証明する普遍的思考が必須である。二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の上昇や生物多様性の宝庫である熱帯雨林の急激な消滅などは、地球規模の発想で認識され 対処されるべき喫緊の課題である。 しかしながらその一方で、地球環境問題の現場においては、こうした普遍主義的思考がドグマ化して、科学技術至上主義(科学技術が全てを解決する世界観)となり、地域社会で暮らしている人々の知識や価値を尊重せず軋轢が生じることがある。そこに地球環境問題に、人間と自然の新たな関係性を作り上げる、広い意味での文化の視点を取り入れる必要が生じるのである。こうした視点は、反科学主義とも文化保守主義とも一線を画するものであり、「普遍性(科学)」の追求と「多様性(文化)」の尊重という二つの原理を接合することで、科学と文化のダイナミックで創造的な関係性を展望することができる。地球環境問題は科学技術や数値目標によって認識されるだけではなく、人々が日々の暮らしを営む社会のあり方や生き方を根源的に問い直すことで解決に向かうことができる。本実践プログラムは、この人間と自然の創造的関係性の探求を通して、総合地球環境学の深化発展に寄与することを目指す。 具体的には、自然科学的なデータと視点を基盤にして、人文・社会科学的な視野を幅広く取り入れながら次の課題に取り組む。

 

地球環境問題のローカルな現場に現れる多様で異質な要素の間の複雑な連関や葛藤を対象にして、科学知による認識と分析を基盤としつつ、個々の社会が生成してきた「在来知」との対話と連携、その相互変容を通して、環境を保全し劣化に歯止めかけるための総合的な環境文化の創成を展望する。多様なアクター(地域住民、科学者、行政、NPO、国際機関など)が、どのようにして葛藤と向き合い、自立共生的な関係を構築し、相互に協働することで、人と自然の新たな相互関係性をつくりあげていくことができるかを明らかにする。