地球研案内

地球研の特色

■ 統合性

地球研では、地球環境問題の解決に向け、人間の生き方(ライフスタイル)や文化の問題に着目した人文・社会科学系の研究視点や方法に基盤をおくだけでなく、自然界のしくみを解明する自然科学系の研究視点や方法を組み合わせて研究を実施することが重要であると考えています。この組み合わせ方には、学際的研究よりも統合性の強い分野横断的研究を採用し、人間と自然系の相互作用環の解明(認識科学の方法による問題把握)と地球環境問題の解決に資する研究(設計科学に基づく未来設計)の両面を追及することで、統合知を介して人間科学=総合地球環境学を構築します。

■ 流動性

地球研では、特定の課題に対して時限を設定して研究するプロジェクト方式によって組織運営をしています。プロジェクトリーダーに採用された研究者は、原則として地球研の専任教員となります。採用にあたっては、連携研究機関と協定を取り交わすなど、流動性を担保しています。これにともない、教授、准教授、助教や研究員に任期制を適用するなど研究の活性化を図るとともに、国内での研究の牽引役としての役割を果たします。

■ 国際性

地球研では、国内の大学・研究機関の研究者のみならず、国外研究機関との連携協定を通じて、国外研究者の参加を得た研究プロジェクトを実施しています。研究調査地域は世界中に分布しており、多種多様な文化・人材交流の面からも地球研の国際性を堅持しています。また、領域プログラム-研究プロジェクト単位、あるいは地球研としての国際シンポジウムを頻繁に開催しています。さらに、進行中の研究プロジェクトと間接的にかかわりのある国際的な研究機関やネットワーク組織における企画や運営にも積極的に参加するとともに、国外研究者を地球研の研究員として招へいしています。

地球研の特色

 

人間文化研究機構のなかの地球研

地球研は、国立大学法人法に基づき、2004年4月1日に設置された大学共同利用機関法人人間文化研究機構(地球研のほか、国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、国立民族学博物館、以下、機構)の一員となりました。地球研としての独自の研究を推進する一方、機構の進める連携研究、研究資源共有化推進事業、地域研究推進事業などの新規事業に加えて、公開講演会・シンポジウムなど、同機構主催の諸事業や共同利用活動に積極的にかかわっています。特に、連携研究「アジアにおける自然と文化の重層的関係の歴史的解明」を地球研、国際日本文化研究センター、国立国語研究所が中核機関として進めています。また、機構による地域研究推進事業「現代中国地域研究」の一拠点として、「中国環境問題研究拠点」の研究活動を進めています。

人文社会系の研究機関を中心とする機構のなかで、地球研は自然系アプローチを含む統合的な地球環境学の研究を人間文化の問題として位置づけ、重層的かつ多面的な共同研究・共同利用を行なう機関として未来に向けて大きな可能性を秘めています。

■ 連携研究「日本およびアジアにおける『人と自然』の相互作用に関する統合的研究:コスモロジー・歴史・文化」

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あえのこと(田の神様に豊穣を祈り感謝する民俗行事)(能登町・石川県)

本研究は、人間文化研究機構の連携研究として行なうものです(通称:「自然と文化」)。「自然と文化」の研究では、人と自然の多様なかかわりを考古、歴史、民族(俗)、環境、思想などの多様な観点から解明することをめざしています。特に、日本や広くアジア地域における集団を対象として、それぞれの集団が自然とのかかわりのなかではぐくんできた、歴史や文化とその体系としてのコスモロジーに注目して研究を実施します。人は自然界の資源を生活や生存のために利用するだけでなく、自然を模倣し、あるいは自然を映す独自の表象として、技術、絵画、詩歌、造形物などをとおして自らの文化に取り込んできました。歴史的に多様な形で展開してきた人と自然の相互作用を、多面的なアプローチから明らかにすることが研究の大きな狙いです。

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『人と自然』第5号

この連携研究には、地球研のほか機構に属する5つの機関の研究教育職員や、全国の国公私立大学の教員が共同研究者として参画しています。本研究は2010年6月に開始し、共同研究会、現地調査を開催してきました。2013年度以降も、日本国内各地やアジア地域を対象とした調査研究を実施します。

研究組織として、言語を中心とする自然認識や民族(民俗)分類を扱うグループ、絵画・図像などの造形物や儀礼、民間伝承、民俗知などを中心に扱うグループ、自然の開発や管理をめぐる制度や慣行を扱うグループに分けて、研究を進めています。

また、研究連絡誌として『人と自然』を年に2冊刊行しています。創刊号では特集として「火」を取り上げ、火を主題とする人と自然の多様なかかわりを独創的な視点から展開しました。つづいて、第2号(特集:音をめぐる人と自然─音とことばの接点)、第3号(特集:虫をめぐる人と自然─虫にこめられた多様な意味)、第4号(特集:天をめぐる人と自然─天と人とのつきあいの歴史)、第5号(特集:色をめぐる人と自然─色の世界の知と技)を刊行しました。2013年度も人と自然にかかわる特集として、第6号では「花」をテーマに幅広い視点から取り上げる予定です。今後も興味ある課題を企画していきます。

■ 中国環境問題研究拠点

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2013年1月13日に上海交通大学で開催された国際シンポジウム「湖の現状と未来可能性」のようす

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2013年3月13日に拠点が中心となって、北京大学と覚書を締結

中国環境問題研究拠点は、人間文化研究機構の現代中国地域研究推進事業の一環として、全国6つの大学や研究所に設置された研究組織のひとつです。これは、日本における現代中国研究のレベルアップ、学術研究機関間のネットワークの形成、次世代の研究者養成を目的として、地球研のほかに早稲田大学、慶應義塾大学、東京大学、東洋文庫および京都大学に設置されたネットワーク型の拠点形成事業です。2007~2011年度の第Ⅰ期5年が終了し、2012年度から第Ⅱ期が始まりました。第Ⅱ期では、新たに愛知大学、法政大学がネットワークに加わりました。

地球研では、地球環境問題の解決に資する複数の研究プロジェクトを中国各地域で実施しています。第Ⅰ期では、これら研究プロジェクトの成果を、「開発による文化・社会の変容」という視点から、中国の環境問題を自然・人間文化の両面にわたって相対的にとらえようとしてきました。具体的には、中国環境問題にかかわるテーマを年ごとに設定し、研究会やフォーラム、国際シンポジウムを開催してきました。2007年度は「水」、2008年度は「食と農」、2009年度は「都市と農村」をテーマとしました。2010年度は研究プロジェクト「熱帯アジアの環境変化と感染症」と協力して、「エコヘルス」と経済的に影響力を拡大する中国の最前線のひとつである「西南中国」をテーマとしました。2011年度からは新たなネットワーク形成と研究プロジェクトのシーズの発掘を行なうことを目的に、中国の大学と共同で、大学院生を対象とした「地球環境学講座」を開講しました。地球研内外の拠点構成員を中心とした講師陣によるリレー講義の形式で、2011年12月には南京大学、2012年2月、2013年3月には北京大学で行ないました。南京では、江蘇省や無錫市などの環境行政担当者への講義も行ない、地域との対話から、環境問題をともに考える試みとしました。この地球環境学講座は、今後もテーマや方法を工夫しながら継続していく予定です。

2012年度から始まった第Ⅱ期では、第Ⅰ期で培ったネットワークを基礎に、中国を中心とした周辺各国を含む東アジア圏を視野に入れ、今後予想される少子高齢化を考慮し、住民の生活基盤の向上とリージョナルな資源開発・環境保全とを両立させる「グローバル化する中国環境問題と東アジア成熟社会シナリオの模索」をテーマとしています。

天地人

『天地人』 第19号

中国を対象とした地球研の研究プロジェクトの多くが終了しつつあることもあり、新た研究シーズの発掘、協力関係の構築に努めています。2012年10月には、華東師範大学社会発展学院と合同研究会「中国環境問題の過去・現在・未来―環境保護型の社会構築へ向けて―」を開催し、2013年1月には今後の共同研究に向けて覚書を締結しました。また、2013年1月には、終了プロジェクト「病原生物と人間の相互作用環」で協力関係のあった上海交通大学に協力いただき、国際シンポジウム「湖の現状と未来可能性」を開催しました。そこでは上海交通大学や地球研以外に、九州大学東アジア環境研究機構、滋賀県立琵琶湖博物館、アジア経済研究所などからの参加者を得て、今後の新たな共同研究を模索しました。さらに2013年3月には、北京大学とも覚書を締結しました。

設立当初より、ニュースレター『天地人』を定期的に発行し、本研究拠点での成果を発信するとともにネットワーク形成に努めてきました。また、書籍の刊行や研究成果報告書シリーズの発刊を行なっています。2012年には、KYOTO地球環境の殿堂で表彰された故原田正純氏の著書『水俣病』の中国語訳の発刊にも協力しました。
中国環境問題研究拠点ホームページ

 

共同研究

地球研の研究活動は、所内の研究者やスタッフだけでなく、国内外の多くの研究者によって支えられ実施しています。コアメンバーやメンバーとして直接研究プロジェクトにかかわる研究者や、多様な連携活動を通じて、間接的にも多くの研究者の協力を得ています。そのような研究者が、専門分野も年齢も所属先も異なっているのは、地球研の大切な特色のひとつです。

地球研は、「知のコモンズ」であるべきだと考えています。そのためには、密接な連携とコミュニケーションが欠かせません。ときには意見や考え方の異なる多様な研究者が、寄り集い、議論を重ね、切磋琢磨しながら総合地球環境学の構築を行なう「開かれた」研究所をめざしています。

共同研究者の構成比率 画像

大学間連携を通じた広域アジアにおける地球環境学リポジトリの構築
—環境保全と地域振興を目指す新たな知の拠点形成事業—(略称:地球環境学リポジトリ事業)

地球研は大学共同利用機関として、地球環境学に関わる多くの分野・領域を横断する総合的な共同研究を推進するため、我が国の大学をはじめ、各省庁、地方公共団体(公的機関)や民間の研究機関、さらには海外の研究機関と密接な連携を図っています。

国内の連携研究機関など

地球研は、2001年に設立されて以降、全国の研究機関などと人事交流をともなう連携を図って研究を進めることを柱に共同研究を推進しています。

第Ⅱ期中期目標・中期計画期間においても、より多くの大学や研究機関と積極的に連携を深め、大学共同利用機関としての役割を果たしています。

プロジェクトリーダーを送り出した連携研究機関

また、これら10の連携研究機関以外に、全国13の研究機関や行政機関などと学術交流などに関するさまざまな協定を締結することにより、組織横断的な学術研究の推進や相互の研究および教育の充実・発展に取り組んでいます。

学術交流などに関する協定を締結している研究機関 画像

 

海外の連携研究機関

海外の連携研究機関 画像1

華東師範大学(中華人民共和国)との覚書締結
(2013年1月)

地球研では、海外の研究機関・研究所などとの間で積極的に覚書および研究協力協定を結び、共同研究の推進、研究資料の共有化、人的交流などを進めています。また、海外の研究者との連携をさらに密にするため、招へい外国人研究員として各国から多数の著名な研究者を招いています。なお、2012年度は、アメリカ合衆国、エジプト、中国、ナミビアなどの海外の研究機関と6つの覚書または研究協力協定を締結しました。

地図をクリックすると拡大します。

覚書および研究協力協定の締結 (2013年4月1日現在) *は2012年度に覚書を締結した研究機関

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