環境文化創成プログラム

環境文化創成プログラム

プログラム概要

地球環境問題の解決のために、先進的な科学技術に頼るだけでなく、科学と文化の接合を通して新しい価値観と生き方の創造に取り組みます。

地球環境問題という問題に私たちはどのように向き合い、どのようにして問題解決のための一歩を踏み出すことができるでしょうか。この問いかけに対して、文化と価値観の変容を切り口にしてアプローチする研究を束ねるのがこのプログラムです。まず地球環境問題がどのような「問題」として立ち現れているのかを「認識」する必要があります。そのために自然科学・社会科学の諸分野の連携によって複雑で膨大なデータを解析し現実の危機を「可視化(見える化)」します。こうした研究によって私たちは環境危機への「気づき」を手に入れ、危機についての認識を「共有」することができるのです。科学の力で危機を「可視化」—「気づき」—「共有」することで地球環境問題の解決のための準備ができるのです。

しかしこれがこのプログラムの最終目的ではありません。こうして「共有」された地球環境の危機の認識に対して、私たちが、そして社会がどのようにこれまでの自分たちの行動を変容させ、価値観を変革していくかを明らかにしなければならないからです。

その議論を展開するための出発点は、地球環境問題の現場、あるいは持続可能な社会の構築という議論の中にいかにして「文化」の視点を取り入れることができるかを探求することです。文化の視点というのは、グローバルやナショナルといった次元ではなく、もっと身近で親密なそこで共同して生きる人々のまとまりを重視するということであり、そこで人々がいかによりよく生きるかという価値を重視するということを意味しています。その中には、科学的知見とは異質な価値も含まれています。こうした価値に対して、矯正するのでも、賛美承認するのでもない、相互に変容しうるコンヴィヴィアル(異なったものが相互に特性を活かしてつながる様)で創造的な視点を作り出す必要があるでしょう。このプログラムはこうした視点を作り出す研究プロジェクトを総合するものです。

ミッションステートメント

所属プロジェクト等一覧

研究の進捗状況

このプログラムは2022年4月から開始されました。上記のプログラムが目指すものを共有する、萌芽的なものから本格的な研究まで、いく種類かの研究プロジェクトが参加してプログラム全体を構成します。異なる研究テーマを掲げ、異なる組織形態でアプローチする多様なプロジェクトを総合するために、このプログラムでは一つの問いを共有して、それに対するそれぞれの解答を付き合わせるワークショップや研究会を定期的に開催し、それを総合するシンポジウムを組織する予定です。

その問いというのは、「地球環境や地域環境の危機に対して、人びとや社会がどのように行動を変容し価値観を変革していくのかを、文化を切り口に捉えるとはどういうことか」というものです。具体的には、地球や地域の環境危機(問題)の現場では、その危機を解決するための科学的な処方箋と、その現場で暮らす人々の生き方や対処法が一致しないことが少なくありません。その場合、多くのケースでは、科学的な処方箋を唯一の「解」として現場に要請することになります。あるいはそれと現地の独自の処方箋(土着知とか在来知と呼ばれるもの)が合同して「解」を形成することもあるでしょう。またそれとは反対に、科学知と現地の文化や価値観が衝突したり対立したりすることも少なくありません。こうした「科学」と「文化」の相関は、環境問題の現場では日常的なものですが、この複雑な相関と正面から向き合って考える検討は十分に行われてきませんでした。

このプログラムに参加する研究プロジェクトは、それぞれの課題やフィールドから、この複雑な相関を解明することが求められます。その葛藤の過程をプログラムのワークショップなどで報告し、多くの人たちと共有したいと希望しています。

このプログラムには、フルリサーチ(FR)1年目の有機物循環プロジェクトSceNEプロジェクトが所属しており、それぞれのユニークな経験と成果をこのプログラムの発展のために活かしています。

年報(業績一覧など)

メンバー

プログラムディレクター

松田 素二

総合地球環境学研究所特任教授/京都大学名誉教授

プロフィール紹介

研究員

濵田 武士 研究員