実践プログラム

環境文化創成プログラム

有機物循環プロジェクト

プロジェクト概要

自然から得たものは自然に戻すという理念のもと、アフリカやアジアの各地、日本において都市の生ゴミを荒廃地や農地へ戻し、環境修復や農業生産の改善に資する有機物循環システムの仕組みを作ります。西アフリカ・サヘル帯において住民や自治体・政府と連携し、20年にわたり都市の有機性ゴミを使って荒廃地を緑化し、住民生活の改善に貢献しています。

世界人口は2050年には100億になることが予想されています。人口1000万以上の都市――メガシティの数も増えています。都市はその周囲、あるいは世界中から多くの食料やエネルギーなどの資源を集め、消費していますが、廃棄された栄養分は農地や自然環境に戻されることはありません。 自然状態では、厚さ1cmの土壌が形成されるのに、1000年もの年月がかかるといわれます。世界各地では経済格差の問題、食料不足や飢餓とともに、食料が捨てられるというフードロスの問題も深刻です。農牧業による土地の酷使や土壌侵食もあって、土地が荒廃し、食料の生産が需要に追いつかないと危惧されています。人類が口にする食料は清潔である必要があり、捨てる有機性ゴミやし尿は汚れとして忌み嫌われます。

日本では有機性ゴミの大部分が焼却により処理され、その灰は使われることなく、埋め立てられます。生態系のなかで、栄養分は循環することはありません。 都市を中心とする文明が今後も持続性を獲得するためには、清潔から汚れを生み出す人間の性を受け入れること、そして、その汚れによる生命の生まれ変わりの重要性を理解したうえで、地球システムから分離した人類の存在を地球システムに位置づけることが必要です。本プロジェクトは、都市と農村の物質循環を構築しようとする思考・価値観の転換を進めていきたいと考えています。

写真1:ニジェールにおけるゴミの投入と緑化実験(2012年2月)

写真2:ゴミ投入後の緑化と牧夫家族の家畜放牧(2022年8月、写真1と同じ場所

研究の進捗状況

これまでにわかったこと

本研究プロジェクトでは自然プロセスを活用し、簡単な資材と動物ふんを使用したドライコンポストという生ゴミ処理の技術を確立することをめざしています。資材の温度と水分のモニタリングによってゴミの投入時期を決め、すばやい生ゴミの処理を可能とします。この自然プロセスでは、恒温動物の腸内細菌が関与し、夏季ではその基本温度は35~37℃のあいだが最適です。このアイディアにそって、ホームセンターなどで市販されている鶏ふんや牛ふん、京都市動物園で飼育されているアジアゾウやキリン、カバ、シマウマ、トラ、チンパンジー、ゴリラ、フタユビナマケモノなど9種の動物ふんの提供をうけ、ホテルで廃棄される生ゴミを処理する技術、レシピを確立しようとしています。

写真3:ホテルの食事―豪華なビュッフェ・スタイル

特筆すべき事項

本年度の大きな成果は、3点あります。1点目は、ドライコンポストの技術によって、京都市内のホテルの有機性ゴミと京都市動物園の動物ふんをつかって堆肥をつくり、そのメカニズムの解明、および温度管理による技術・レシピを確立したことです。2点目は、企業や京都市動物園、京都府教育委員会、小学校、そして農家とのネットワークの構築です。3点目は、京都府内の小学校においてドライコンポストの考え方と技術、レシピを紹介し、環境問題への対策を考えるきっかけを作り出したことです。

写真4:小学校でのコンポスト授業(京都府教育委員会との連携事業)

日本や東南アジア、アフリカでは消費生活が異なり、排出されるゴミの内容も異なります。それぞれの社会で、消費生活やごみの組成を調査し、都市と農村の有機物循環システムの構築によって適切な有機性ごみの利用、農地の生産性改善、環境修復や自然再生を進めています。

メンバー

プロジェクトリーダー

大山 修一

総合地球環境学研究所教授/京都⼤学⼤学院アジア・アフリカ地域研究研究科/アフリカ地域研究資料センター・教授

プロフィール紹介

サブリーダー

塩谷暁代 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

研究員

野田 健太郎 研究員
青池 歌子 研究員
前畑 晃也 研究員
セーラ ジョルジナ 研究員
中出 道子 研究推進員

主なメンバー

中野 智子 中央大学経済学部
阪本 拓人 東京大学大学院総合文化研究科
土屋 雄一郎 京都教育大学教育学部
島田 沢彦 東京農業大学地球環境科学部
小坂 康之 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
原田 英典 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
矢部 直人 東京都立大学都市環境学部
牛久 晴香  北海学園大学経済学部
桐越 仁美 国士舘大学文学部
鈴木 香奈子 信州大学農学部
中尾 世治 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
原 将也 神戸大学大学院人間発達環境学研究科
中澤 芽衣 摂南大学現代社会学部
齋藤 美保 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
中村 亮介 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
山梨 裕美 京都市動物園 生き物・学び・研究センター

外部評価委員による評価(英語)

研究スケジュール

2022年度
(令和4)
2023年度
(令和5)
2024年度
(令和6)
2025年度
(令和7)
2026年度
(令和8)
2027年度
(令和9)
2028年度
(令和10)
FS FS/PR FR1 FR2 FR3 FR4 FR5

研究の流れについて

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