研究体制・研究の流れ

地球研では、いくつかの研究プロジェクトをプログラムで束ねる「プログラム-プロジェクト制」によって、既存の学問分野や領域を超えた、総合的な研究の展開を図っています。プログラムは、「実践プログラム」と「戦略プログラム」から構成され、プログラムの下には複数の研究プロジェクトがあります。研究プロジェクトは、プログラムごとに設定された重点課題に沿って研究を実施します。

2022年度から始まる6年間の地球研の第4期中期目標・中期計画で、実践及び戦略プログラムは、地球環境問題における諸要素相互の関係性、「人新世」に至った時間的歴史的発展過程におけるダイナミクスを明らかにし、より持続(未来)可能な社会への転換につながるプログラムを設定し実施します。そして、柔軟で汎用性が高く、実効性に富んだ成果をあげ、社会に発信します。

プログラム研究のほかに、地球研のミッション達成に貢献する特別な共同研究を行う「特定推進研究」という枠組みでの研究も進めます。

なお、第4期の開始にあたり、第3期から継続しているプロジェクトの中には、第4期プログラムに所属しないものもあります。

実践プログラム

実践プログラムは、地球研のミッションと、第4期においては本期間の推進目標の実現に貢献する活動方針に沿い、下記に示す3つの観点を含んで策定されたミッションに基づき実施されます。プログラムディレクター(PD)の企画に基づいて、その企画を達成するプロジェクトが公募されます。

実践プログラムの観点

地球研は、地球スケールで地域から⼈と⾃然の関係のあるべき姿を描き、平等かつ公平で、未来可能な地球社会の実現を⽬指します。

地球システム的視点による環境変化の理解と劣化への対応を探究する観点である。地球システムにおける社会・経済系と自然・生態系の相互関係や連関を探求する。相互に絡み合った諸要素と過程からなる地球システムの中で、自然環境と生態系の人為的劣化がどのように発生するのか、それが人間社会にどのような影響を及ぼすのかを解明する。また、地球システムの変化がどのように連鎖し取り返しのつかない結果をもたらし得る転換点に至るか、遠距離間相互作用が世界中の社会経済生態システムの変化にどのように関連するかを明らかにし、いかなる対応が地球環境のさらなる劣化を防ぐとともに劣化した地球環境を回復させうるかを探求する。

環境問題を文化・価値体系とのつながりから把握することを通して、人新世における「生き方」を探求する観点である。地球環境問題が急激に拡大しつつある現在の「人新世」において、この喫緊の問題を解決するために、人文科学・社会科学・自然科学を含む学際的な研究を促進する。人類が公正で安全に活動できる空間を地球と社会の限界内でどのように作り出すことができるか、人新世において「人はどう生きるべきか」を問う。それを通して人間と自然との関係性を明示的・規範的な方法で探究するとともに、文化と価値体系の意義と重要性を探る。

地球環境問題の解決に向けた方策や思考を、社会の多様なアクターと協働して開発し、その解決法を実現する仕組みを提示する観点である。 社会経済システムを持続可能なシステムに移行・転換するためには、主要な機関・当事者の役割を大規模に再編成することが重要になる。社会の様々なアクター(研究者、市民、NPO、政府、国際機関等)がいかに行動し、固定観念や既得権益にとらわれずに、システムの部分的刷新や根本的な変化を導き出すにはどうすればよいかを問う。歴史的及び現代的な移行・転換プロセスの事例分析や実践的研究に基づく社会実験等により、持続可能な社会への移行・転換の方法を探究する。

環境文化創成プログラム

土地利用革新のための知の集約プログラム

地球人間システムの共創プログラム

戦略プログラム

地球環境研究のさらなる総合化へ向けた学際・超学際研究の重要な概念や理論構築、問題解決の社会実践に向けた方法論のための枠組形成を行うプログラムです。戦略プログラムではプログラムのミッションを実施するプロジェクトを公募し、実践プログラム・実践プロジェクトと協働・連携しつつ、研究基盤国際センターのリソースを活用し、所外の超学際的研究も取り込み、地球研ミッションに沿った具体的で応用可能な理論・方法論・概念の構築を行います。

プロジェクトの進め方

実践プログラムと戦略プログラムのもとに設置されるプロジェクトは、地球研内外の評価を経ながら研究を積み重ねていきます。

  • IS(インキュベーション研究 Incubation Studies、実践プログラムのみ)
  • FS(予備研究 Feasibility Studies)
  • PR(プレリサーチ Pre-Research、実践プログラムのみ)
  • FR(フルリサーチ Full Research)

以上の段階を通じて、研究内容を深化させ、練り上げていきます。

実践プログラムのプロジェクトにおけるプロジェクトの進め方

実践プログラムのプロジェクトにおけるプロジェクトの進め方

戦略プログラムのプロジェクトにおけるプロジェクトの進め方

戦略プログラムのプロジェクトにおけるプロジェクトの進め方

特定推進研究

実践プログラム及び戦略プログラムに基づく調査研究プロジェクトとは別に、総合的地球環境学の形成や地球環境問題解決のための社会的要請に応じて、地球研のミッション達成に貢献する特別な共同研究です。この特定推進研究は、実践プログラム、戦略プログラムとも密接に協働・連携し、成果を共有しながら実施されます。

特定推進研究は下記の研究から成ります。

環境トレーサビリティ特定推進研究

環境トレーサビリティに基づく研究基盤の応用
研究代表者 陀安 一郎
研究期間 2020年度~2022年度

本研究は、コアプロジェクトにおいて開発された「環境トレーサビリティ方法論」を用いて、環境に関する幅広い課題解決に向かうための共同研究をおこないます。環境トレーサビリティに関するプラットフォームとして作成されたウェブサイトをもとに、同位体分析を中心とする環境トレーサビリティ方法論に関する技術を提供できる研究者と、環境トレーサビリティ方法論を利用したい研究者および行政、一般の方を含んだステークホルダーの方々をつないで研究基盤を活用した共同研究をおこなうことを目的としています。環境トレーサビリティに基づく学際的・超学際的研究を通じて、研究基盤国際センター計測・分析室がおこなってきた「同位体環境学共同研究事業」と共同で、人間と自然の相互作用環の理解につながる研究手法となる中核的な研究基盤の活用方法を提案します。最終的に「環境トレーサビリティ方法論」を改良・再構築することで、大学共同利用機関としての新たな機能を構築します。

人間文化研究機構事業

人間文化研究機構が推進するプロジェクトです。第4期中期目標・中期計画で、地球研は次の広領域連携型機関研究プロジェクトや共創先導プロジェクト共創促進事業・知の循環促進事業に携わります。

広領域連携型基幹研究プロジェクト
人新世に至る、モノを通した自然と人間の相互作用に関する研究
研究代表者 陀安 一郎
研究期間 2022年度~2027年度

本研究は、身体や物質に含まれる元素の濃度および同位体比を分析することによって、自然と人間の関わりについて時間軸と空間軸を横断する研究を行います。それをもとに、物質文化から見た現代の地球環境問題につながる人間の資源利用形態の変容について明らかにします。自然における元素の同位体分布は、地質および生態系の動態を理解することが必要です。資源の利用や移動を解析する手法としては、食料資源や水資源を象徴する身体に含まれる軽元素(炭素・窒素・硫黄・水素・酸素など)と、地質由来資源を象徴する身体や器物中に含まれる重元素(ストロンチウム・鉛・ネオジミウム・鉄・マグネシウム・亜鉛など)があります。これらに含まれる同位体情報を用いて、自然と人間の相互作用を研究することができます。本研究においては、完新世以降の人間のあゆみを元にし、人新世(人類世)と称される現代における資源利用について考え、地球環境問題の根源となる自然と人間の相互作用を扱う新たな人間文化研究のプラットフォームを構築します。

横断的・融合的地域文化研究の領域展開:新たな社会の創発を目指して
ユニット代表者 谷口 真人
研究期間 2022年度~2027年度

地球研は、プロジェクト下の6つのユニットのうち、「自然の恵みを生かし災いを避ける地域文化研究」ユニットで研究を推進し、自然の恵みと災いに関する地域文化の継承と地域での活用を、日本国内地域において実践します。

共創先導プロジェクト共創促進事業・知の循環促進事業
開かれた人間文化研究を目指した社会共創コミュニケーションの構築
研究期間 2022年度~2027年度

地球研も事業の一部を担い、知の循環を促進する「開かれた人間文化研究を目指した社会共創コミュニケーションの構築」を目指した事業を行います。この事業では、各機関が所有する資料・データ等を、デジタル技術を用いて整備し、博物館や様々な展示を活用して可視化するとともに、研究のプロセスや成果を多様な方法や多様な場で共有・公開することにより、大学等研究機関と社会との間に「知の循環」を生み出します。これにより、国内外の様々な人々との共創による開かれた人間文化研究推進モデルの構築を目指します。また、視覚的あるいは聴覚的困難等のコミュニケーション課題を解決するための共同研究を実施し、その成果に基づき、多様性を踏まえた展示手法を開発します。

過去の事業一覧

所長裁量経費事業

地球研の所長裁量経費によって行われる研究です。年1回所内で公募され、採択されます。
2021年度には以下のような研究が採択されました。

研究支援充実経費 COVID-19対応研究

研究者個人またはプロジェクトや部門等を越えた研究グループによるCOVID-19に関連する社会的課題の解決に資する学際あるいは超学際的研究テーマを研究し、未来可能な社会の構築に向けた発信を行うための経費で実施された事業です。

事業名 提案者
新型コロナ禍が日本の水産業に及ぼす影響調査 田村 典江
東アジアのホーリズム(全体論)から考える人新世下のパンデミックへの文化的対応――「災、難、禍」と「風土」概念からのアプローチ 寺田 匡宏
COVID-19感染解析に基く尼日両国内都市域・開発域人口偏在の危険性の研究 山中 大学
効果的なCOVID-19リスクコミュニケーションのための、価値観・リスク認知・リスク回避行動の分析と類型化 原口 正彦
新型コロナと温暖化に対する市民の認識と行動:ジェンダー間および地域間の比較 大西 有子
Covid19下におけるコミュニティフィールドワーカーとコミュニティインストラクターの育成 中原 聖乃

科学研究費助成事業

科学研究費助成事業は、我が国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする文部科学省の研究助成事業です。

採択情報(2022年2月15日更新)

担当部署

研究支援課共同利用係
E-mail:kyoudou[at]chikyu.ac.jp

その他の研究制度

招へい外国人研究員・フェローシップ外国人研究員

地球研には外国人研究者が所に数ヶ月滞在し研究を行い、所の研究者と交流できる2つの制度、「招へい外国人研究員」「フェローシップ外国人研究員」があります。これらの制度を通じ地球研に滞在してもらうことが、研究者及び研究所双方にとって利益があると考えています。本制度は、海外に拠点をおく研究者(日本国籍保持者も可能)及び日本に拠点をもつ外国籍の研究者を対象としており、採用者は選考により決定されます。

制度概要
公募について

フェローシップ外国人研究員の公募に関する詳細は「公募・調達・採用情報」ページをご確認ください。
なお、招へい外国人研究員の採用は、弊所教職員からの推薦により行います。

担当部署

総務課国際交流係
E-mail:kokusai[at]chikyu.ac.jp

受託研究

受託研究は、民間企業などから委託を受けて地球研の研究者が研究を行ない、その成果を委託者に報告する制度です。共同研究制度と異なり、民間企業などから研究者の派遣はありません。

採択情報(2022年2月15日更新)

規程、申込書
担当部署

研究支援課共同利用係
E-mail:kyoudou[at]chikyu.ac.jp

共同研究

共同研究は、民間企業等の研究者と本研究所の教員とが共通の課題について共同して研究を実施することにより、優れた研究成果が生まれることを促進する制度です。

規程、申込書
担当部署

研究支援課共同利用係
E-mail:kyoudou[at]chikyu.ac.jp

寄附金

寄附金は、個人篤志家や民間企業等から地球研に寄附して頂き、学術研究や事業活動の充実のために活用する制度です。
地球研では研究助成金を寄附金の一種として受け入れています。

規程、申込書
担当部署

研究支援課共同利用係
E-mail:kyoudou[at]chikyu.ac.jp

受託研究員

受託研究員は、企業等に在籍する技術者及び研究者であって、企業等から派遣され、地球研において研究の指導を受けるための制度です。

規程、申込書
受託研究員の研究料
  1. 研究料納入後の長期短期の区分変更は認めていません。
  2. 上記に定める研究期間の範囲内で、研究中止後研究を再開し、又は研究期間を延長することとなる場合には、同一の受託研究員に係る研究料は改めて徴収しません。
  3. 原則として既納の研究料は還付いたしません。
    区分 研究期間 研究料
    長期 6ヶ月を越えて1年以内 566,800円
    短期 6ヶ月以下 283,400円
  4. 研究料には受託研究員の受入れに伴い必要となる管理経費が含まれています。
【担当部署】

研究支援課共同利用係
E-mail:kyoudou[at]chikyu.ac.jp