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プロジェクト秋の全体会合@東北大学
2023.11.282023年11月10日,Sustai-N-ableプロジェクト秋の全体会合が東北大学で実施されました。本プロジェクトでは,毎年春と秋の2回,可能な限りすべてのメンバーが参加する会合を開くことになっています。会合では各班の研究進捗や今後の予定の発表だけでなく,班を超えた自由で活発な議論がなされます。会合を通じて,プロジェクトの現状とこれから向かう方向を改めてメンバー間で共有します。
会合では,自然循環班,人間社会班,経済評価班,将来設計班の順に発表がおこなわれました。発表では,各班における研究進捗の状況が共有され,フロアからは様々な質問や意見,サジェスチョンなど多くのコメントが飛び交い,議論は活発なものとなりました。
さらに,私が勝手に本プロジェクトの素敵なところだと考えている点ですが,班を超えた共同研究・コラボレーションについて,多くの時間を割いて議論がなされました。例えば,自然循環班によって得られた知見を,経済評価班による研究に活用するなど,様々な可能性が取り上げられています。もちろん,それぞれの班のメンバーは異なる専門分野を持つため,時には議論が嚙み合わず……なんてことも起こり得ます。しかし,プロジェクトの掲げる「持続可能な窒素利用の実現」に向けて,時間をかけて議論を深めることができたと思っています。わざわざすべての班が一か所に集い,侃々諤々の議論を交わす理由の一つは,ここにあるのではないでしょうか。
京井尋佑(地球研)
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エコクッキングワークショップ in 京北町
2023.11.22初めまして、sustai-N-ableプロジェクトに3ヶ月間インターンでお世話になっている、京都大学修士1回生のムンジュと申します。
2023年10月28日は京都の京北町にある「京都里山SDGsラボことす」でエコクッキングワークショップを企画・開催しました。
エコクッキングワークショップは私と南極に1年6ヶ月間南極シェフとして活動した渡貫さんを招いて、もったいない気持ちから環境に優しく楽しくおいしい料理教室を開くことを目的としたワークショップです。エコクッキングのメニューは、湯葉のあんかけ丼・おからサラダ・のっぺい汁です。野菜たっぷりで、おいしい豆類材料を使った京料理で、ワークショップを進行する私も、料理を作る参加者の方もワクワクしたと思います。最初はムンじゅんこ(ムンジュ+渡貫じゅんこのペア名)ペアの、食と環境問題のつながりに関する講義から始まりました。渡貫さんは、南極でシェフとして働く中で、日本から持っていた食材を余らすことなく使うように、もったいない精神を発揮してレシピを工夫したそうです。例えば、パプリカの種を油で揚げて、ふりかけにするなど、普段食べない種や皮まで食べられるようにしたそうです。私は世界の1/3の食品が廃棄される食品ロスの問題と肥料に含まれている窒素の環境負荷に関して話をしました。
講義の後は、キッチンルームに移動して、渡貫さんの仕切りの元でクッキングを始めました。今回は、象印さんからはグリル鍋と炊飯器を、ミツカンさんからはカンタン酢やみりんなどの調味料を提供いただきました。のっぺい汁に使う野菜を切るために子供や大人が力を合わせたりおからサラダを混ぜ混ぜしたりする様子が微笑ましく感じました。子供の中には、初めて包丁を握る子もいましたが、親と一緒に野菜を切って親子の料理コミュニケーションも捗ったと思います。
1時間後には料理が完成しました。
クッキングのエコポイントを少し説明すると...のっぺい汁には食品ロスを減らすため、根菜類は皮ごと入れるようにしました 。おからサラダには植物性タンパク質たっぷりの豆類食材が、湯葉のあんかけ丼は地産地消のエコ性を生かした京北米や京都産湯葉を使いました。珍しい食材にもかかわらず、なんと完食して、皿を洗い片付けを手伝ってもらいました。
最後に、SDGsラボことすにあるコンポストに生ごみを入れる前に、30食分料理する中でどれほど生ゴミが出たのか子供と一緒に、スケールを使用して生ごみの量を測りました。のっぺい汁に入れる里芋の皮が多かったのか、予想を超えた数値、約300gの生ゴミが発生しました。生ごみは全てコンポストに入れて、発酵しやすいように子供の力で大きいなコンポストを回してワークショップは終了となりました。
これから食は生産から消費後まで全ての過程で環境に負担がかかることについて、参加した子供と大人が意識していただければ幸いです!イ ムンジュ(京都大学)
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Super Sustai-N-able Market大盛況でした!(地球研オープンハウス)
2023.11.212023年11月3日(文化の日)に地球研オープンハウス内でSuper Sustai-N-able Market が開店しました!延べ86名のお客様のご来店、感謝いたします!
オープンハウスは、地球研の研究プロジェクトが企画、展示、講話などを行い、一般の方に研究所の活動内容や環境問題を紹介するイベントです。SusNでは、「君のカレーはどんなカレー?〜窒素フットプリントをはかってみよう〜」という企画を行いました。窒素フットプリントとは、製品やサービス(今回は食材)の生産から加工、流通、消費、廃棄の過程で環境中へ排出されてしまう反応性窒素の量を示す環境指標です。窒素フットプリントが小さいほど、人為的な反応性窒素の排出量が小さく、環境への負荷も小さいと言えます。
今回の企画では、参加者の皆さんにひと鍋分のカレー食材を購入していただき、会計時に窒素フットプリントが載ったレシートをお渡しすることで、環境への窒素負荷を見える化しました。
まず、地球犬ガラポンくじで、お小遣い金額を決めます。
お小遣いと買い物カゴを持って入店!好きなカレー食材を好きな分だけ選びます。ただし、予算オーバーにはご注意を。
レジに進み、カレーに合わせる主食を選んでお会計です。合計金額と窒素フットプリントが書かれたレシートをレジ係から発行してもらいます。
さらに、林PLからは窒素フットプリントを用いて食と窒素のつながりに関する解説もしていただきました!
最後に選んだカレー食材のこだわり、予算額、窒素フットプリントを書いてカレーボードに貼り付けます。普段と同じ食材や、予算いっぱいいっぱいにいつもと違う食材など色々なカレーに出会えました。君のカレーの窒素フットプリントはいくつになったかな?
齋木 真琴(地球研)
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トークの10月
2023.11.012023年10月はトークイベントが盛りだくさんでした。
10月7日は「2023年度日本農学会シンポジウム:激動する社会と農学」 に演者として参加。ハイブリッド式で、参加者は対面66名、オンライン239名とのこと。持続可能な環境と食料安全保障を両立させる観点で、窒素問題について話題提供しました。様々な立場で食料生産に関わっておられる演者と対面参加者とのつながりができました.
対面の会場は、東京大学弥生講堂。てっきり「安田講堂」と勘違いして京都からのルートを調べていたのは内緒です。画像は、よく晴れて気持ち良い朝の農正門。
弥生講堂の北東角にあったシンポジウムの立て看板。講堂内の一条ホールは、農学部設立125周年記念として一条工務店の寄付で建設されたそうです。
10月17日は「NIRO(公益社団法人新産業創造研究機構)セミナー」でオンラインの話題提供。NIROは、阪神淡路大震災から復興する中小企業を支援するために設立された財団です。窒素問題を解決する取り組みをビジネスチャンスに位置付けられるようなお話を、という難しい御題をいただきました。オンラインで話すのはすっかり慣れましたが、相手の顔も反応もわからないのは物足りないですね。
10月22日は「大学共同利用機関シンポジウム2023:現代の社会問題に挑む」にて話題提供とパネルディスカッションへの参加。
ニコニコ生放送を利用したハイブリッド式で、参加者は対面68名、オンラインは延べ31,512名(!)だったそうです。「資源」をキーワードとした研究者トーク午後の部にて、窒素問題の概要をお話ししました。資源としての窒素の特殊さ、つまり、空気の8割を占める窒素自体はどこにでもあるのだけれど、それを使える状態にするにはエネルギーと別の資源が必要なことにも触れました。窒素、イネの遺伝資源、水素、加速器、ロケット実験場という5つの話題、ちょっと接点が無さそうに見えますが、パネルディスカッションでは意外なつながりも見つかり、私自身とても楽しい時間でした。シンポジウムはニコニコ生放送のアーカイブで視聴できます。トークへのリアルタイムのコメント(突っ込み)が面白いです。対面の会場は、日本科学未来館7階の未来館ホール。午後の部の開始10分ほど前の様子です。
日本科学未来館はお台場にあります。お台場には船の科学館もあります。ここには「宗谷」が係留されています。商船として生まれ、特務艦として第二次世界大戦を生き抜き、幸運艦として初代南極観測船に抜擢された船です。第58次南極地域観測隊夏隊で彼の地に赴いた身として、ぜひ挨拶に寄りたくて。イベント後の夕方でゆっくりできませんでしたが、宗谷を見ると込み上げるものがありました。排水量3400トンは現役の2代目しらせの1/4以下。決して大きな船ではありません。そもそも砕氷船として設計された船でもありません。よくぞ幾度もの南極往復に耐えました。
10月28日は京都里山SDGsラボ<ことす>にて毎月第4土曜日に開催される「京北めぐる市」に赴きました。この中の「もったいない料理教室」と「第39回SDGs問答」に我々SusNプロジェクトもコミットしました。料理教室の講師の渡貫さんは第57次南極地域観測隊越冬隊の調理隊員。58次隊の帰りのしらせでご一緒した仲であり、SusNメンバーでもあります。今回のSDGs問答の御題は『京北「もったいない」食堂』。YouTube公式チャンネルからアーカイブを視聴できます。司会の浅利さん、渡貫さん、耐震工学の高橋さん、ミツカンの佃さん、象印の岩本さんを交えての楽しいトークでした。面白いことをやっている人たち同士がつながらないことこそ「もったいない」、とアピールしました。
「もったいない料理教室」の最初は、講師と助手(?)のトークから。この後にキッチンラボに移動して、参加者の皆さんが3品の料理を作りました。私はトラブルシュータ―として見守り役。無事に楽しく美味しく終わってよかったです。
料理教室で作った3品。湯葉丼(出汁で炊いたご飯に玉子を混ぜたものに湯葉のあんかけ)、のっぺい、おからのサラダです。野菜は皮ごと使うなど、調理ごみを極力ださない工夫をしました。ご飯は象印の方々が気合を入れて炊きました。味付けにはミツカンの製品を活用しました。
「ことす」のスタジオ。旧・京北第一小学校をリノベした一室です。SDGs問答はここから配信されます。素敵な設備です。地球研にも欲しい。今回はYouTube配信用のPCが開始直後にダウンしました。このトラブルは初めてだったそうです。いたずらな小人さんでも居たのかも知れません。
10月31日はハロウィン。ですが、そうではなく「水・大気環境連携セミナー:地域環境研究の未来に向けて」に参加しました。日本水環境学会と大気環境学会が共同主催するという素晴らしい企画でした。水と大気はもちろんつながっていますし、共催である各都道府県の環境研究所は両方の測定や調査を行っています。今後の連携が進むことを期待して、窒素が水も大気も土も何もかもつないで巡っていること、国際的には窒素問題の管理に向けた動きが始まっていることなどをお話ししました。セミナー自体はオンラインですが、会場には関係者が30名ほど集まりました。セミナー後の議論も貴重でありがたい時間でした。
会場の東京都環境科学研究所。1990年代に時折おじゃましました。変わっていません。直接に会うのは久しぶりの方々や、頑張っている若手の方々に会えて嬉しかったです。
林健太郎(地球研)
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Tsukuba Conference 2023
2023.10.05The Tsukuba Conference 2023 was held from 26th to 28th September, 2023. The venue was Tsukuba International Congress Center. There was also option to join online. Along with ‘Sustai-N-able’ project members, I joined the special session entitled ‘Nexus of Food, Agriculture, and Environment: Sustainable Food System for Future Generations’ onsite that took place on 28th September, 2023. The number of in-person participants was around 40 and that of online was approximately 20.
This was my first visit to Tsukuba Science City, built as a project to reduce congestion in Tokyo by systematically relocating national research institutes while ensuring high-level research and education. There are several route options to reach Tsukuba. I followed the most efficient route, suggested by Prof. Kentaro Hayashi (Kyoto station ➝ Tokyo station ➝ Akibahara station ➝ Tsukuba station), thanks to Prof. Hayashi. It took less than 4 hours from Kyoto station to Tsukuba station.The special session I joined was organized by Research Institute for Humanity and Nature (RIHN) and National Agriculture and Food Research Organization (NARO). The goal of this session was to acquire insights into appropriate cropping practices, eco-friendly agriculture, and the intricate relationship between soil and the environment. The speaker of this session discussed on the importance of understanding the connection among food, agriculture, and the environment for promoting active human participation and fostering the creation of transdisciplinary knowledge.
The session was started with a short talk about nitrogen by Prof. Kentaro Hayashi, RIHN. Prof. Hayashi briefly discussed the importance of nitrogen for living organisms, benefits of nitrogen use accompanied with threats of nitrogen pollution, problems in too much (nitrogen pollution) and too little (nitrogen deficit) regions, and the goal of ‘Sustai-N-able’ project at RIHN. Later, Prof. Nobusuke Iwasaki, NARO talked over ‘right crop for right land’, focusing on local food production for local consumption, viticulture as ‘Smart Fudo Industry’, and vineyard suitability assessment system.The next speaker was Prof. Maki Asano, University of Tsukuba. Prof. Asano explained the definition of soil, its characteristics as dynamic natural body, and uniqueness to location. She also clarified the soil functions (complex structure of soil aggregates, soil aggregate hierarchy and organic matter, and microbes and soil aggregates), carbon cycling, and desirable soil management from the viewpoints of carbon sequestration and microplastic contamination in the soil.
The 4th speaker, Prof. Miyuki Katori, Shinsyu University, demonstrated the history of Japan Vineyard Association’s establishment, the introduction of ‘Japan Wine’, production quantities of main regions in Japan, and things to consider for local production and consumption.
Next, Mrs. Eri Otsu introduced ‘O2Farm’, an environment-friendly farm (mainly rice and cattle) owned by Otsu family in Minamiaso, Kumamoto. Mrs. Otsu talked addressed the advocation of ‘Landscape Farming’, the aim of O2Farm, to enrich biodiversity, environment, and relationship through farming. I was impressed to know that O2Farm took a number of steps to reduce global warming, e.g., installed photovoltaic system, switched to biodiesel fuel, installed EV that charge mainly with solar energy, and reduced the use of kerosene. O2Farm also encourages young generation to engage with farming believing that farmers are the pillar of the society.
The final speakers, Mrs. Hiromi Fujiki and Mr. Jun Fujiki explained the importance of supporting small farmers, and introduced the pros and cons of ‘natural farming’ (i.e., no pesticide, no chemical fertilizers, and no animal compost).
I enjoyed participating at this special session with Prof. Hayashi, Kyoi-san, Saiki-san, MoonJu-san, and Ayako-san. I believe the interaction with the participants will help to make research collaborations in future.
Aurup Ratan Dhar (RIHN)
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WEYNへの参加
2023.10.042023年9月8–9日に、愛知県豊田市にある旭高原元気村を会場に"The 3rd Water Environment for Young researchers' Network (WEYN)"が開催されました。Sustai-N-ableプロジェクトからは,リーダーである林さんに加え,メンバーであるAurupさん,齋木さん、MoonJuさん、京井が参加しました。WEYNは山梨大学や長岡技術大学大学院、豊田高専が中心となり一年に一度開催される、主に水環境を対象に研究を進める学生や若手研究者による勉強会・研究発表会です。3回目の開催となる今回、Sustai-N-ableプロジェクトも参加させていただきました。
今年のWEYNは、Aurup Ratan Dhar 研究員(Sustai-N-ableプロジェクト)による窒素フットプリントの解説で幕を開けました。水環境にかかわる学生や研究者でもまだまだ馴染みの薄い窒素フットプリント、Aurupさんに丁寧かつ簡潔に説明いただきました。その技術、参考にさせていただきたいです。さらに、学生や若手研究者らによる研究発表・意見交換がおこなわれました。WEYNは水環境に関わる研究者の集いではありますが、その実、参加者の専門分野はバラバラです。工学分野から社会科学分野まで、多くの分野の研究者が入り混じっています。そんな場所で、自分の専門と異なる研究発表を聞くのはとても刺激的です。特に、研究内容どころか、まずは使われている単語がさっぱり分からないところとか。しかし、それを乗り越えた先では、どの研究も今後の水環境改善に向けて重要であることが分かり、とても有意義となりました。
1日の最後には、懇親会としてバーベキューが開催されました。食事を楽しみながら、本プロジェクトの調査の一環として、参加者の皆さんに自身の食事の窒素や他のフットプリントを計算してもらいました。実のところ、懇親会を楽しむ人々をコントロールするのは骨が折れました。しかし、参加された皆さんは、自身のフットプリントが意外と高いことに気付くなど、自身の食生活を見直す機会を提供できたかなと思っています。
最後に、WEYNの開催にあたり、様々ご尽力いただきました齋木研究員(Sustai-N-ableプロジェクト)に感謝申し上げます。ありがとうございました。
京井尋佑(地球研)
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浅間山北麓
2023.09.072023年8月22日に浅間山の北麓を歩きました。幾たびもの溶岩流や火砕流によって強制的にリセットされる植生がどうやって再生していくのか、そこにおいて窒素循環はどう成立していくのか、こういった自然生態系の未知にも深い関心があります。筑波大学陸域生態学研究室の廣田教授のお誘いでご一緒する機会が得られました。感謝いたします。
浅間山は活火山です。登山時の噴火警戒レベルは2、「火口周辺規制」。火口から概ね2kmの範囲では噴石や火砕流に警戒するようにと指示されています。 入山するにはジオパークのガイドやレンジャーの同行が必要です。ヘルメットも必携。 今回はガイドとレンジャーの方が計4名も参加くださりました。様々なお話を伺えて、意見交換もできて、とても有意義でした。登山の始まりは火山博物館から。少し上がると「浅間園」という眺めの良いスポットがあります。 この時点では浅間山の山頂まで見えました。山の真ん中にあるのは雲ではなくて噴煙です。 山頂の中ほどより右に大きな岩が見えます。千トン岩と呼ばれています。実際には4千トンはありそうとのこと。
火山博物館のある場所で標高1400m弱。ほんの少し登るだけで植生が亜高山帯のものに変わります。かなり低い高度です。 理由はいろいろあると思いますが、その一つとして谷筋を流れる冷気が考えられます。 溶岩流の跡は空隙が多くて風穴があちこちにあります。夏はそこから冷気が出るのです。 標高1450mぐらいで画像のハクサンシャクナゲがあらわれます。花期には美しい白い花を咲かせます。
画像はミヤマヤシャブシの幼樹。ハンノキの仲間です。 ハンノキの仲間は菌根菌と共生し、フランキアと称される窒素固定能を有する放線菌とも共生します。 つまり、菌の力を借りて養分を集めているのです。おそらく山岳生態系の土壌形成に重要な役割を果たしていると思われます。
画像はシラタマノキです。溶岩や火砕流からできた台地で他の植物があまり入れないところにこういったツツジ科の低木が群落を作ります。低木と言っても、知らない人が見たら草のように見えると思います。個人的には、こういったツツジ科の植物も菌と良い関係を構築しているのではないかと予想します。いろいろ調べてみたいです。
こちらは同じくツツジ科のクロマメノキ。ブルーベリー(野生種はヌマスノキ)に近い植物です。
こちらもツツジ科のコケモモ。クランベリー(野生種はツルコケモモ)に近い植物です。
これまたツツジ科のガンコウラン。土壌や水分の条件が最も厳しそうなところに純群落を作っていました。どうやって暮らしているのだろう。。
鬼押し出し溶岩流の上にちょっと上がったところ。今回の最高点で標高1685mほど。 曇りがちで山頂はしばしば雲に隠れましたが、それより下は雲がかからず眺めがとてもよかったです。
今回の最高点から東に進むと台地状の地形があります。通称「上の舞台」。標高1500~1700mぐらいの範囲。 これは1783年の吾妻火砕流で形成された台地です。画像の奥に見えるのは浅間山の山頂。 手前のがけは鬼押し出し溶岩の末端です。本流はもう少し西をずっと下までくだりました。 怖くもあり、美しくもある火山地形です。焼け野原になったあと240年を経て緑の地に戻りつつあります。
林 健太郎(地球研)
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宮古島調査記録②
2023.08.10Sustai-N-ableプロジェクトでは「食の地域性が与える窒素負荷の変動解析」の研究を行なっています。 その研究の一環として、2023年6月22日~28日で沖縄県宮古島市に行ってきました。 今回は、戦後~現在の地元の方や移住者の方の食事内容と、現地の栽培作物の移り変わりを調査してきました。
宮古島といえば、ビーチ!大神島から昇る日の出に照らされながら、調査の合間にビーチクリーンに参加してきました。 毎年、人口(約5万5千人)の10倍以上の観光客(2018年度には、100万人突破)が訪れる島々で、移住者も近年増加傾向です。
複数の大型ショッピングセンターができ、どんどん便利になっていく宮古島ですが、今回お会いした移住者の皆さんは、 宮古島のゆったりとした空気感が好きな方や自分(家族)の時間を大切にしたい方が多かったです。
宮古島調査記録①で紹介した営農用のサトウキビ畑やハウス栽培以外にも、各家庭には「かふつ」と呼ばれる伝統的な家庭菜園があり、今でも野菜や薬草を自給している家庭が農村には残っています。多種多様な作物を育てて、写真はその一部である食用のアロエと山ぶどうと呼ばれているシマヤマヒハツ (頂いた果実酒がめちゃくちゃ美味しかった!)。健康で長寿の秘訣はかふつにあるそうです。 また、安心して食べることができるのは自分の知った土地のものだと、地元の人は話します。
宮古島の家計を支えるサトウキビ畑と食卓を支えるかふつ。どちらも地元の人にとって重要で、 島の歴史・文化が垣間見える気がしました。齋木真琴(地球研)
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宮古島調査記録①
2023.08.082023年4月19日~21日で沖縄県宮古島市に行ってきました。
今回は、宮古島市をSustai-N-ableプロジェクトの新しい研究対象地域とするために、現地の環境保全環境団体と今後の活動内容について打ち合わせを行なってきました。
また、地球研のLINKAGEプロジェクトとも合同で、現地視察を行ないました。今回の滞在中は天気が思わしくなく、、、晴れたらもっと綺麗であっただろう、佐和田の浜。 日本の渚100選にも選ばれたようです。遠くにはダイサギも飛来してきていました。
宮古島市は一次産業である農業、水産業が盛んで、農業生産額は県最高を誇ります。 市街地に出るとサトウキビ畑が広がっています。土地改良事業により整備された畑は圧巻です。
宮古島には河川がなく、農業用水は雨水に頼っていましたが、2001年に2つの地下ダムが竣工したことにより、 これまでよりも安定して灌漑することができるようになりました近年では、ハウス栽培も増えてきており、栽培作物のバリエーションも増えてきています。 今回伺った農家さんは、アスパラガスやキュウリ、いちじくなど様々な作物を有機栽培していました。 最近は、カカオの試験栽培にも挑戦しているそうです!しかし、台風や落雷によるハウスの被害や、 肥料価格や輸送費の高騰など、まだまだ課題は残っています。
齋木真琴(地球研)
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Global Soil Security Conference
2023.08.032023年6月26日~29日で韓国はソウルに行ってきました。
第4回Global Soil Security Conference(GSS2023)への参加でした。 韓国に行くのは4年ぶり6回目です。しかし、ソウルは初めて(珍しいかも?)。
関空から金浦空港までのフライトは2時間かかりません。近いです。ありがたい。 金浦空港から会場までは地下鉄9号線1本で行けます。これもありがたい。会場のホテルは石村湖のほとりにあります。32階建て。かなり立派なところ。 この一帯はソウルオリンピックの会場だったところです。1988年。とても懐かしい。
すぐ西にめちゃくちゃ高いビルが建っています。会場のホテルが小さく見えてしまいます。 このビル、ロッテワールドタワーは555mあるそうです。韓国一の高さ。
会場はこんな雰囲気です。 なんと、パラレルセッションはなく、オーラル発表は会場一つだけです。 「聞き逃しがないようにそうした、まあ、逆に言えば逃げ場がないんだけど」と韓国の方から聞きました。
ポスター発表は会期3日間の毎日入れ替え制でコアタイムありです。 参加者は韓国の研究者と学生さんが大多数で、そこに各国からの招待者が混ざるといった雰囲気でした。 私もコンビーナーのお一人からの招待でソウルを訪れた次第です。 窒素問題の概略と、Sustai-N-ableプロジェクトの紹介をいたしました。 英語版リーフレットを配ることもできてよかったです。 中国の研究仲間にも久し振りに会えました。とても嬉しいです。会場が洋式の立派なホテルのためか、いわゆる韓国料理は全く出ませんでした。 しかも、会場の冷房がきつすぎて、私でさえ震えるぐらい。 がんがん冷やすのがおもてなし、というのはもう止めましょう。
韓国らしいものが食べたくて、体も冷えて、会場から抜け出してソルロンタンを食べました。 牛骨をひたすら煮込んだスープです。塩気は全くなくて、お肉少々と素麺が入っています。 これに刻みネギ、塩、コショウ、アミだれを好みで加えて食べます。 壷に入っているキムチとカクテキは好きなだけ取って、ハサミでちょきちょきと。 ご飯も付いてきます。
食べ終わる頃にはうっすら汗をかき、そういえば梅雨空の蒸し暑さであったことを思い出しました。林 健太郎(地球研)
コラム
2024年より、Instagramに移行しました。@susn_rihn