温暖化するシベリアの自然と人
- 水環境をはじめとする陸域生態系変化への社会の適応 -

 

これまでの成果

ツンドラとタイガの遷移帯、ヤクーツク付近のタイガ帯で樹木年輪を採取し、年輪ごとの炭素安定同位体比を分析し、水ストレスが翌年の樹木の生長に関係することなど、新たな発見がありました。この結果に基づき過去100年程度の土壌水分の復元を行い、復元された土壌水分をもとに蒸散や光合成など、植生活性の復元を行う準備ができました。一方、降水量の少ないヤクーツクでの観測と対比させるために、降水量がヤクーツクよりも約3割多いアルダン川流域のウスティマヤに観測タワーを設置し、光合成や蒸発散に関する貴重な観測データが蓄積されつつあります。そして局地循環モデルを使って、レナ川流域で今後予想される降水量の増加が、土壌水分や水面を増やすことで蒸発散を増加させ、再び降水量の増加へとフィードバックする過程を明らかにしました。さらに、これまで未知であった凍土中の地下水や地下氷(写真1)の動態を見出すために、ロシア科学アカデミー永久凍土研究所と共同研究協定を締結しました。この協定に基づき、フロン類などの人為起源微量物質をトレーサーとして地下水年代を推定した結果、数十年程度であることがわかりました。現在、高緯度帯でも適用可能な凍土過程を含んだ水循環モデルの精度向上を目指し、様々な検討を行っています。

 

G1: シベリア広域グループ

  • G1a: 炭素・水循環サブグループ
  • G1b: 温室ガスサブグループ
  • G1c: シベリア概況サブグループ

G2: 水循環-生態系相互作用
プロセス研究グループ

  • G2a: 過去の復元サブグループ
  • G2b: プロセス研究サブグループ
  • G2c: モデル解析サブグループ

G3: 人間生態グループ

  • G3a: 氷結水環境 サブグループ
  • G3b: 生業パターンサブグループ
  • G3c: 環境認識実践サブグループ