これまでの成果
レナ川沿いに立地しているヤクーツクなどの都市や農村がどのように春のレナ川の雪解け洪水に適応しているのかの手がかりを得るために、人工衛星データを用いて洪水の時間変化をとらえるとともに、洪水の前後の水位を調べました。その結果、ice-jamと呼ばれる解氷群が南からの融解水に押し出されて北に向かって流れていくこと、そのスピードは一日当たり約100km程度であることがわかりました(図2)。このような雪解け洪水が温暖化によってどのように変化していくかの手がかりを得るために、レナ川沿いの都市や農村で測られた過去の気温データを用いて温暖化の傾向を調べました。その結果、上流(流域南部)では気温が経年的に上昇していたのに対して下流(流域北部)では気温の変化傾向が小さく、雪解け洪水による被害のリスクが高まっていることがわかってきました。また、勾配が非常に緩やかな北極海沿岸のコリマ低地・アラゼヤ川流域での洪水の規模や期間、成因についても調査しました(図3)。一方、高緯度のメタン濃度の近年の増加の原因を明らかにするためにモデル解析を行い、温暖化や湿潤化がその主要因であることを指摘しました。そして、カラマツを主とするタイガ林の劣化の原因を人工衛星と現地調査から探り、虫害や森林火災が主な原因である手がかりをつかみました。土壌の凍結・融解過程と森林火災の効果を取り入れた植生動態モデルを用いて、今後2℃以上の気温上昇となった場合、融解層の深さが深くなることでカラマツが生育できなくなることが予測されました。