地球研オープンハウス2012

地球犬と行く!世界一周の旅 ~アラブなりわいプロジェクト編~

解説者:石山俊(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)
アフリカに通いはじめて18年、主にサハラ砂漠の南のサーヘル・スーダン地帯という半乾燥地で人々がどのように暮らしているかをしらべてきました。 地球研に来てから、アルジェリアのサハラ・オアシスで調査を始めました。(研究者業績ページ

石山写真

- まとめ -

アルジェリア インベルベル・オアシス(アドラール県Adrar)

地中海に面する首都アルジェ(Algers)からおよそ1000km南下したサハラ沙漠の中にあるオアシス。隣のオアシスまではおよそ120km離れている。サハラは世界最大の沙漠で、東西5600km、南北1700km、面積は1000万平方キロメートル。このオアシスは砂漠気候に属するが、雨がまったくふらないわけではなく、ごくたまにポツリと降るときがある。2009年1月にはまとまった雨が降り、オアシスは洪水に見舞われた。

経済:灌漑にたよるオアシス農業。ナツメヤシとコムギ、オオムギ、野菜などが栽培される。

人種・民族:白人系のアラブとサブ・サハラをオリジンとする黒人系。インベルベル・オアシスにはいないが、トゥアレグ(ラクダ牧畜民)もサハラに広く分布する。

言語:アラビア語(マグレブ方言)、フランス語

宗教:イスラーム

食文化:現在では、クスクス(Cous-cous)と呼ばれる小麦粉を粒状にして蒸したものが主体。その他クレープ状のパテにトマト味主体のソースをかけたもの。少し前までは、小麦粉を練ったお団子(蕎麦がきみたい)や、ソルガム(モロコシ)を食していた。ナツメヤシはそのまま食べる(朝食やおやつに)。ナツメヤシの品種は多い。やわらかい品種、固い品種など。

建築:1990年代までは日干しレンガの家屋であった。2009年の洪水以降、政府の補助金支給もあって現在ではコンクリート製のものが増えている。

その他:インベルベル・オアシスには、数世紀前のものと思われる人の住居跡があるが、その詳細は不明である。2009年時点での人口は962人ほどであるが、現在の住民の祖先がここに住みついたのは、口承伝承によれば今からおよそ200年前であるそうだ。1900年代初頭の記録によればその時の人口は50人内外で、この100年の間に人口が20倍ほどになったことがわかる。

【伝統的知識】
オアシス生活の基礎となる灌漑農業を支えてきたのは、フォッガーラ(foggara)と呼ばれる地下水路であった。しかし、1980年代以降、インベルベル・オアシスにも地下150mにも達する深井戸が掘られ、ポンプで水をくみ上げて灌漑に利用するようになり、フォッガーラの重要性は相対的に低下してきた。とはいえ、深井戸からくみ上げた水の農地への配分方法は、伝統的なシステムの上に成り立っている。現在のオアシス農業は、近代的要素が伝統的要素の上に成り立っている。

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