研究プロジェクトについて
地球環境変動は気候・地理区分と海洋・陸上の生態系の分布を支配すると共に、人間社会にも強く影響を与えてきました。本FSでは過去・現在・未来の100年規模の気候変動と突発的なカタストロフィック事変に対する、人・集団・文明・社会の応答を定量的に評価し、将来の気候変動が社会に与えるインパクトを予測し、受容できる社会の仕組みと生活様式を提案します。
なぜこの研究をするのか
地球環境変動は、気候・地理区分と海洋・陸上の生態系の分布に大きく関わるとともに、人の移動や定住、文明の盛衰、生活様式など、私たち人間の社会にも強く影響を与えてきました。近年の経済発展や人口増加、グローバリゼーションによる生活様式の一元化により、社会は気候変化や環境事変に対して脆弱になっている可能性があります。地球規模の気候変化やそれらに伴う台風や洪水などの地域規模での災害、突発的に起こる地震や火山噴火は現在の経済発展や社会の仕組みの大きな転換の要因に一つになっているかもしれません。
熱帯から温帯の沿岸域に広く生息する造礁サンゴの骨格は年輪を刻みながら数百年間にわたって成長を続けます。過去の様々な年代や地域のサンゴ骨格試料の化学分析を年輪に沿って分析することにより、1日から数年単位での高い時間解像度で当時の気候変化や自然災害を復元することができます。本FSでは、過去から現在までの気候・環境変動と文明の盛衰や人・社会の関係を同じ解像度で比べることにより、気候変動と自然災害がこれまでの文明・社会・生活の変化に与えたインパクトを定量的に評価します。その結果から将来の地球規模の気候変動と環境事変が人と社会に与える影響をそれぞれ予測し、それらを受容できる社会へと変革することのできる実効性と共感性をもった人と自然のあり方を提言したいと考えています。
これからやりたいこと
これまでの気候変化や環境事変は人の行動や生活様式にどのように影響を与えてきたのでしょうか、また、人類はどのようにしてそれらを乗り越えてきたのでしょうか。このプロジェクトでは高解像度環境解析から過去の様々な事例の中で自然環境や社会的背景を問わない共通価値の発掘を目指しています。手法や考え方の異なる多分野の研究者が同じ目線で議論をするために、また、将来像の可視化により共感を得やすい地域社会への提言のために、アートとサイエンスを組み合わせた手法の開発を行います。
過去の環境と社会の変革点における百年間を想定した仮想SCENE(時代の窓)を演劇の舞台に設定し、当時の人の生活と社会への影響が大きい環境要因と生活様式を、それぞれの物語の要素として外挿していきます。物語を演じる役者や脚本家と研究者による検証の反復を行うことによりデータのない過去の情報の欠損や不足を補い、時間解像度と空間精度の高い具体的なイメージを抽出します。さらに、将来、予想される人と自然の関係について複数のシナリオを設定し、地域の様々な世代やステークホルダが未来のシナリオを検討・選択する場とすることにより、共感を生みやすく将来の世代が選択しやすい地域社会のあり方の提言につなげていきたいと考えています。本FSによる高時間解像度の地球環境解析と異文化多分野融合型の手法開発に基づく過去の自然と人の関係性の再検討と、共感性の高い地域社会への還元を目指す中で新たな地球環境学の創設を模索したいと思っています。
図1:本研究における社会実装のためのサイクル
写真1:研究のモデル地域のひとつとなる鹿児島県喜界島
メンバー
FS責任者
氏名 | 所属 |
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渡邊 剛 | 北海道大学大学院理学研究院・講師 |
研究員
氏名 | 所属 |
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山崎 敦子 | 九州大学大学院理学研究院 |
駒越 太郎 | 喜界島サンゴ礁科学研究所 |
渡邉 貴昭 | Institute of Geoscience, Kiel University |
白井厚太朗 | 東京大学大気海洋研究所 |
狩野 彰宏 | 東京大学大学院理学研究院 |
中塚 武 | 名古屋大学大学院環境学研究科 |
西村 祐一 | 北海道大学大学院理学研究院 |
吉本 充宏 | 富士山科学研究所 |
高宮 広土 | 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター |
後藤 明 | 南山大学人文学部 |
加藤 博文 | 北海道大学アイヌ・先住民研究センター |
山野 博哉 | 国立環境研究所生物・生態系環境研究センター |
安田 仁奈 | 宮崎大学農学部 |
栗原 晴子 | 琉球大学理学部 |
中村 隆志 | 東京工業大学環境・社会理工学院 |
内田由紀子 | 京都大学こころの未来研究センター |
安西 耕 | 喜界島サンゴ礁科学研究所 |
土谷 貞雄 | 都市未来研究所 |
西村 勇哉 | NPO法人ミラツク |
堀内 浩水 | 北海道大学URAステーション |
野崎 拓司 | 喜界町埋蔵文化財センター |
松原 信之 | 喜界町埋蔵文化財センター |