トランス・ディシプリナリー時代の研究成果の発信:知識の共創にむけて

プロジェクトの概要

第Ⅲ期を迎えて、地球研の成果発信・広報について考えている。

第Ⅰ期では、地球研全体としての広報はかぎられ、おもな成果発信は個別のプロジェクトに任されていた。そのため地球研が研究所としてどのような学問をめざしているのか、広く認識されることはなかったように思う。

この第Ⅰ期の反省をふまえ、第Ⅱ期では全所的な成果発信・広報に重点をおいた。研究推進戦略センターを強化し、可能なかぎりのリソースを活用し、研究者コミュニティから一般市民に至るまで幅広い広報を行なうように努めた。それでも地球研の成果発信にはまだまだ「魅力」が足りない。地球研に魅力がないのではなく、その潜在的魅力を充分に引き出せていないのだ。

大きく二つの原因がある。一つは、プロジェクトの成果を、地球研の成果として位置づけられていないこと。プロジェクトとより緊密に議論を重ねたうえで、成果の発信を行なわなければならない。

もう一つは、成果発信の対象が特定しにくいこと。これは地球研の環境学が、自然科学・人文科学・社会科学の枠を超えてさまざまな専門領域の手法と知的蓄積を請来していることとかかわっている。専門外の研究者に、専門性を高く維持したまま研究内容を伝えることはかんたんではない。エバンスのいう「科学と知の狭隘化」が進んでいるなかではいっそう困難である。

いっぽうで、地球環境問題に関する一般の関心はますます高くなっている。設計科学的発想には、こうした一般の人をふくめた多様な関係者を巻き込むことが不可欠である。研究者だけが環境問題を扱う時代ではない。世間の関心に応えられる研究とその発信を行なえるかどうかが問われることになる。

これまでの学術業界にはない新しい成果発信のあり方が求められている。学術雑誌にすぐれた論文を書くことも、一般の人相手にわかりやすく話すことも、今後その重要性がなくなることはない。しかし、それをいくら続けても地球研のめざす環境学に到達できないと思う。

ではなにをするのか。それを考えるのがこのコアプロジェクトだ。柱は二つ。まずは最新のIT技術によるコミュニケーションツールを積極的に発信に取り入れるということ。当面はiTunes U に参画し、具体的な発信のあり方を模索したい。

もう一つは、映像資料の活用。「なぜおまえは映像をつかわないんだ?」。世界的な学術広報の専門家、デニス・メレディスが地球研を訪問して開口一番に述べたことばである。地球研の保有するさまざまな映像。これを宝の持ち腐れにはしたくないと思っている。

FS責任者

氏名所属
阿部 健一地球研研究高度化支援センター教授
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