環境研究における同位体を用いた環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証

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研究プロジェクトについて

本コアプロジェクトは、実践プロジェクト(栄養循環FEAST)や研究基盤国際センター(計測・分析、情報基盤部門))と協働し、環境研究における「環境トレーサビリティー手法」を提案し、その方法論の有効性について調べました。人間文化研究機構連携研究「人と水」や環太平洋ネクサスプロジェクトなどの過去の成果も生かしました。特に、多元素安定同位体比を用いた地理マップ(Multi-Isoscapes)作成などをとおして、地域における環境問題を解決するうえで本手法が研究者・住民・行政の間をつなぐ役割について検証しました。

何がどこまでわかったか

研究は、福井県大野市、愛媛県西条市、岩手県上閉伊郡大槌町、山梨県南都留郡忍野村、兵庫県千種川流域、滋賀県野洲川流域、フィリピン国シラン・サンタローザ川流域でおこないました。各調査地において、環境トレーサビリティー手法を用いた研究の成果を紹介するシンポジウムを開催し、有効性を問うアンケート調査をおこないました。その結果、環境トレーサビリティー手法を、調査地における環境問題の解決のために有効と判断したステークホルダーのタイプについて、複数の調査地間に共通して次の3つの特徴がみられました。それは、「調査地における環境保全の対象(地下水や川)と、普段から関わりがある人」、「環境トレーサビリティー手法で得られる情報に対して、普段から関心が高い人」、「シンポジウムで研究者によって説明される環境トレーサビリティー手法についての理解度が高い人」でした。

また、環境トレーサビリティー手法がどの程度重要度を持つかについて検討するため、食品の表示ラベルを研究対象として、日・米・独・中・タイにおいて、各2,000名のウェブアンケートをおこないました。食品の表示ラベルに対して、生産者、政府機関、生産者団体、消費者、そして専門家(環境トレーサビリティー手法から得られる科学的情報である産地や純度を提供する)の5つの情報発信元を設定し、どの発信元のラベルを信頼するか尋ねたところ、国や食品の種類によらず、専門家の表示ラベルが高い信頼度を有することが明らかとなりました。

図1: 環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証に向けた研究設計(山梨県忍野村の例)調査地において環境トレーサビリティー手法を用いた研究を実行し、その成果をシンポジウム等を通じて広く住民に紹介した。同時に、シンポジウム会場においてアンケート調査を実施し、環境トレーサビリティー手法の有効性を検証した。

図1: 環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証に向けた研究設計(山梨県忍野村の例)
調査地において環境トレーサビリティー手法を用いた研究を実行し、その成果をシンポジウム等を通じて広く住民に紹介した。同時に、シンポジウム会場においてアンケート調査を実施し、環境トレーサビリティー手法の有効性を検証した。

私たちの考える地球環境学

私たちは「環境トレーサビリティー手法」で得られる科学的情報をいろいろなステークホルダーの方々と共有することで地球環境問題に取り組むことができると考えています。現代社会では因果関係が複雑化し、必ずしも原因と結果が明確でない現象も多いですが、「環境トレーサビリティー手法」による科学的情報の可視化を地球環境学の構築にむけた一つの方法論として生かしていきたいと思います。

新たなつながり

図2: プロジェクトで作成したウェブサイト(山梨県忍野村	における調査・研究の紹介の例)環境トレーサビリティー手法を使っている人と使いたい人を双方向につなぐプラットフォームとしてのウェブサイトを作成し、ポスト・コアプロジェクトで活用する

図2: プロジェクトで作成したウェブサイト(山梨県忍野村 における調査・研究の紹介の例)
環境トレーサビリティー手法を使っている人と使いたい人を双方向につなぐプラットフォームとしてのウェブサイトを作成し、ポスト・コアプロジェクトで活用する。

プロジェクトでは、環境トレーサビリティー手法に関心のある人を集め、興味が持てるようなウェブサイトを研究基盤国際センター計測・分析部門と共同で作成しました。これをプラットフォームとして、環境トレーサビリティー手法をどのように社会の方々と一緒に生かしていくのか検討するために、ポスト・コアプロジェクト「環境トレーサビリティに基づく研究基盤の応用」(2020-2022)を立ち上げました。なお、ウェブサイト情報をまとめたPDF版冊子(陀安一郎、申基澈、藤吉麗編(2020)「同位体環境学がえがく世界:2020年版」(100ページ))は、地球研のホームページからダウンロード可能です。


プロジェクトリーダー

氏名所属
陀安 一郎総合地球環境学研究所
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