2022.05.02

研究ニュース

自然の恵みと災いからとらえる土地利用総合評価(J-ADRES)~「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」から日本全国の土地利用を評価~

【発表のポイント】

  • 「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」の視点をもとに、日本各地の土地利用の状況を総合的に評価した成果を、J-ADRES(ウェブサイト)で公表
  • 災害に強くしなやかで自然の豊かさを享受できる地域社会を実現するため、土地利用のあり方を検討するための情報を提供
  • 今後は、対象とする災害の種類を広げるとともに、将来の土地利用を検討するシナリオ分析の結果を追加する予定

J-ADRESウェブサイト

【発表の概要】

近年、豪雨や台風による浸水災害や土砂災害が頻発し、甚大な被害が発生しています。気候変動にともなう災害の頻度や激しさの増加が心配されるなか、より一層の災害リスクへの対応が求められています。一方、自然は、災いだけでなく、さまざまな恵みも私たちの社会や暮らしにもたらします。自然の恵みを最大化しつつ災いを最小化できるかどうか、それはそれぞれの地域社会の未来可能性にとって重要な課題です。

では、日本各地における自然の恵みと災いの状況はどうなっているでしょうか?そこで、総合地球環境学研究所(地球研)のEco-DRRプロジェクト(代表:吉田丈人 地球研・東京大学 准教授)の研究グループは、恵みと災いに深く関係する土地の使い方(土地利用)の視点から、日本各地の状況(2010年前後頃)を評価し、このたびその結果を「J-ADRES」と名付けたウェブサイト(j-adres.chikyu.ac.jp )で公開することとなりました。

日本各地の土地利用はさまざまです。市街地や工場などの都市的な土地利用と河川・湿地・森林・農地などの自然的な土地利用があり、土地の使い方によって、自然は豊かな恵みをもたらすこともあれば災いをもたらすこともあります。自然的な土地利用は、生態系と生物多様性を基盤としたさまざまな自然の恵みをもたらす一方、洪水や土砂崩れといった危険にさらされている都市的な土地利用は災害リスクをはらんでいます。

J-ADRESの 「土地利用総合評価」は、土地の使い方によって災害リスクを回避している程度を示す「災害からの安全度」と、生態系・生物多様性がもたらす「自然の恵みの豊かさ」(生態系サービス)の観点をもとに、日本各地の土地利用を総合的に評価するものです。J-ADRESは、災害に強くしなやかで自然の豊かさを享受できる地域社会を実現するため、土地利用のあり方を考える機会を皆さまに提供します。

なお、現在、J-ADRESの「災害からの安全度」は、大雨がもたらす洪水による災害のみを対象としています。今後、土砂災害や高潮災害の評価についても追加する予定です。また、今回の評価は2010年前後の土地利用を対象としています。今後、将来(2050年)の土地利用についてシナリオ分析を行い、土地利用の工夫によって、どれだけ自然の災いを避けながら自然の恵みを享受できるかについても評価し結果を追加する予定です。

【語句の解説】

J-ADRES:「自然の恵みと災いからとらえる土地利用総合評価」の英訳であるJapan’s Assessment of land use based on Disaster Risks and Ecosystem Servicesの略。
土地利用総合評価:「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」の2つの視点から評価した土地利用の評価で、自治体ごとに評価結果を集計しています。

災害からの安全度:災害(今回は洪水による浸水)による潜在的な人的および社会経済的リスクに対する安全度で、災害ハザードに曝されていない人々や財産などの割合を評価しています。評価結果には一定の不確実性があります。

自然の恵みの豊かさ:生態系と生物多様性を基盤とする多様な自然の恵み(生態系サービス)を、供給・調整・文化的サービスの14指標に基づいて評価しています。

【J-ADRESの概要】

URL: j-adres.chikyu.ac.jp
制作:総合地球環境学研究所 Eco-DRRプロジェクト
公開日:2022年5月2日
機能:「土地利用総合評価」「災害からの安全度」「自然の恵みの豊かさ」に関する日本全国地図と自治体ごとのスコア・レーダーチャート、データの読み方・解説、プロジェクト紹介など

図1 J-ADRESのトップページ

図2 土地利用総合評価の日本全国地図

【取材申し込み及び問合せ先】

総合地球環境学研究所(地球研)
広報室 岡田、中大路
Email: E-mail
Tel: 075-707-2450/070-2179-2130

プレスリリース ダウンロード(PDF)

【メディア掲載情報】

2022年5月4日
朝日新聞デジタル
生き物を守るには山だけじゃ足りない 自然も豊かで安全なまちはどこ
(※こちらのリンク先を全文閲覧するには会員登録が必要です)

2022年5月31日
日経クロステック
災害安全度と自然の恵みで1700自治体の土地利用を評価
(※こちらのリンク先を全文閲覧するには会員登録が必要です)

2022年6月10日
朝日新聞 朝刊21面
水辺の恵みと治水、両立を探る 生き物の保全、開発盛んな土地がカギ
(※こちらのリンク先を全文閲覧するには会員登録が必要です)

ニュース一覧へ