2017年9月14~16日にスペイン・バレンシアで行われた SOStierra2017 International Conference on Vernacular Earthen Architecture, Conservation and Sustainability において、地球研プロジェクト「砂漠化をめぐる風と人と土(プロジェクトリーダー:田中樹)」(FR期間2012年度~2016年度)のメンバーが発表した”Transforming Kassena house and indigenous building technology in Burkina Faso”が「優秀論文賞」に選ばれました。
【論文概要】
ブルキナファソ南部に住まうカッセーナの人びとによる土づくりの屋敷地のデザインと建築方法について、村長の屋敷を事例として研究を行いました。
住居実測調査とインタビュー調査からは、デザイン方法の点では、村人は伝統的な屋敷のユニット「マンゲロとディニヤ・ディディウ」の平面寸法測定には足幅を身体尺として用いていたこと、また、屋敷の伝統的な建築工法では、練り土塊を用い、数層に分けて積み上げていたことが明らかになりました。これらの屋敷のユニットの建設には、地域コミュニティでの協働労働が必要とされますが、近年では生活様態の変化にともない行われなくなってきています。そして2010年頃からは、より簡易な近代的な素材を用いた「トル・ティゲ」と呼ばれる屋敷のユニットが一般的になってきました。
こうした屋敷の変容により、世代を超えたユニークな建築技術の維持が難しくなってきています。伝統的な技法が失われないよう、この地特有の建築技法の価値を見直し、守っていくことが必要とされています。
【受賞のポイント】
文化人類学と建築学の学際的な共同フィールド調査および住民参加を基調とするトランスディシプリナリティ・アプローチによって、伝統的なカッセーナの風土建築とその建築技法が、集落の生活変容という視点から理解・説明され、社会科学的に価値のある論文となっています。また、失われつつある風土建築やその伝統的な技法の価値にあらためて光を当て、その保全の必要性を説得力を持って紹介したことが評価されました。
【受賞者した砂漠化プロジェクト参加者】
- 小林広英(京都大学大学院地球環境学堂)
- 清水貴夫(広島大学教育開発国際協力研究センター研究員)
- 伊東未来(兵庫県立大学特任助教)
- 中尾世治(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)

左:ウスビ・サコ氏(京都精華大学)中央:小林広英氏 右:清水貴夫氏

女性たちによる壁面の色づけ

伝統的なカッセーナの屋敷