ここでは、西アフリカでの事例に絞って、研究成果を紹介します。
在来の知恵を知る:アフリカを横断するように広がるサヘルと呼ばれる半乾燥地では、伝統的な農具「押しスキ」が使われています。土壌の表層を浅く耕すことで、雑草の生育を抑え、雨水が浸み込み、土壌からの水分の蒸発を減らします。また、農耕地に作物の刈り株をおくことで、乾季の季節風により移動する砂や有機物をとらえ、薄い砂の層をつくることもします。この砂の層にも、土壌の水分を保全する機能があります。私たちは、このような在来の知識や経験を汲み取り、砂漠化対処に向けた実践技術をつくるヒントにしました。
現地の人びとと一緒にあみ出した「暮らしを向上させ同時に資源・生態環境を保全し修復する技術―ヒトも自然も―」として、例えば、耕地内休閑システム(風による土壌侵食の抑制と作物収量の向上)、アンドロポゴン草列(水による土壌侵食の抑制と世帯収入の向上)、インドの伝統的な畜力牽引犂と播種器によるササゲ栽培(土壌水の保全と荒廃草原の耕地利用および生計の向上)、半乾燥地での植林技術の改良(ザイという伝統技術の活用)などがあります。これらは、一見すると単純なものですが、労力や資材あるいは経費をかけず、なおかつ社会的に弱い立場にある人びとでも実践可能で、口コミにより伝播するという特徴を持ちます。何よりも、私たちと現地の人びとが一緒に対処技術をつくることが可能であることを実証できました。