実践プログラム3セミナー
「なぜ窒素が問題なのか~持続可能な窒素利用は人と自然の健康の鍵」

日 時
2021年11月17日(水)10:00-11:30
会 場
総合地球環境学研究所 セミナー室1・2+オンライン
※ID・パスコードは担当者にお問い合わせください。
主 催
実践プログラム3
講演者
林健太郎氏(林FS責任者)
趣 旨

窒素は、タンパク質や核酸塩基などの生体分子に必要な元素として、我々の生存に不可欠である。ただし、大気を満たす窒素分子(N2)という形の窒素はきわめて安定で、直接に取り入れることができない。植物や動物が窒素を手に入れるには、N2ではない窒素「反応性窒素」が必要である。ゆえに窒素は作物の生産に欠かせない肥料であり、家畜を養う飼料の生産にも肥料が必要である。我々は飲食物に含まれるタンパク質を通じて窒素を摂取する。

20世紀初期にN2からアンモニアを人工合成する技術が確立して以降、人類は反応性窒素を望むだけ作り出すことが可能となった。肥料として食料増産に大きく貢献してきたほか、爆薬や樹脂といった工業原料としても活用され、人類に大きな便益を与えてきた。一方、人類が利用する反応性窒素の大半が環境へと排出されている。化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物などの反応性窒素が大気へと排出されている。環境に排出された反応性窒素は、各々の化学種の物性に応じて地球温暖化、成層圏オゾン破壊、大気汚染,水質汚染,富栄養化,酸性化といった多様な影響を引き起こし、人の健康および生態系の健全性(多様性や機能)に脅威をもたらしている。この便益と脅威のトレードオフを窒素問題と称する。

人類の窒素利用に伴って生じる廃棄窒素は、1961年には窒素として年間3500万トンであったが、2005年には1億5000万トンに増加した。2050年にはBAUで2億1000万トンに増えるとの予測がある。加えて、脱炭素化の観点で、炭素を含まないアンモニアを燃料や水素キャリアとして用いようとの動きが始まっている。我々の窒素利用の結果、具体的にどのような便益と脅威が生じており、将来はどうなるのだろうか。窒素問題を解決するにはどのようなアプローチが考えられるだろうか。

林が取り組んでいるFS「人・社会・自然をつないでめぐる 窒素の持続可能な利用に向けて」では、上記の問いに答え、2050年における「窒素問題の解決と豊かで平等な食および人と自然の健康を実現」を目標とした研究組織・計画づくりを進めている。本セミナーの目的は、窒素問題の本質について得られている情報を共有し、FRに向けての研究組織・計画を紹介し、窒素問題とその解決に向けた取り組みについて、参加者と自由に議論することである。

担当者
実践プログラム3 上田 E-mail
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