実践プログラム

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実践プログラム1

環境変動に柔軟に対処しうる社会への転換

スマトラ島東部沖のテビン・ティンギ島で発生した泥炭地火災(インドネシア共和国リアウ州)。約10日間燃えつづけ、地域のMPA(地域防火組織)によって消火された。村から2キロ離れた泥炭地における火災である。熱帯泥炭湿地の開発は、大規模な森林火災の原因ともなり、広い範囲で人びとの健康を脅かす。

スマトラ島東部沖のテビン・ティンギ島で発生した泥炭地火災(インドネシア共和国リアウ州)。約10日間燃えつづけ、地域のMPA(地域防火組織)によって消火された。村から2キロ離れた泥炭地における火災である。熱帯泥炭湿地の開発は、大規模な森林火災の原因ともなり、広い範囲で人びとの健康を脅かす。

千葉県印旛沼流域の谷津(小規模な谷)にある耕作放棄された水田。治水・水質浄化・生物多様性保全などの多機能性を有するEco-DRRとして、その活用が検討されている。

千葉県印旛沼流域の谷津(小規模な谷)にある耕作放棄された水田。治水・水質浄化・生物多様性保全などの多機能性を有するEco-DRRとして、その活用が検討されている。

Seminar on Urban Space and Resource Nexus

Seminar on Urban Space and Resource Nexus

地球環境の持続性は、人類にとって本質的な重要性を持つ課題です。私たちの社会は、人間活動に起因する環境変動(地球温暖化、大気汚染などを含む)と自然災害に柔軟に対処できるものに変わっていかなければなりません。そのためには、環境変動や自然災害の問題が、生存基盤の確保、貧困・格差、戦争・紛争といった社会問題とどのように複雑に絡みあっているかを明らかにし、その双方を見据えた社会の転換につなげていく必要があります。本プログラムは、そのために必要な知識を総合し、具体的な選択肢を提案することをめざしています。

第一に「アジア型発展径路」の研究を推進します。今年度は、とくに1960年代に日本の工業化、都市化が生み出した環境問題(大気汚染、水質汚染、地盤沈下、健康被害など)が、現在急速な工業化、都市化が進行中のアジアでどのように現われ、新しい課題が生まれているか、それにどう対処すればよいのかを、歴史的な視点から検討します。さらにアジア各地域社会と欧米社会の発展径路を比較し、自然科学の新しい知見や技術革新を活用して地球環境問題に対処する道筋を考えます。

第二に、人間の「生存動機」を多面的に解明します。社会の持続性を確保するには、生存、利潤、統治、保全の4 つの動機が適切に働くことが必要であり、それにふさわしい価値観と制度が機能する社会を作らねばなりません。

フィールドワークの現場から政策担当者、国際機関に至るまで、多様な立場の人たちと連携することによって、激しく変化する現実の課題を可視化すると同時に、学術研究を課題解決へと方向づけます。

2018年度は、増原上級研究員をハブとし、3つのプロジェクトのメンバーが集まって、土地、国土、災害、ネクサス(連環)などをキーワードとする研究会を行いました。The Great Acceleration(大加速:人間活動の地球環境への影響が加速した1950年代以降の時期)の渦中に起こった日本の高度成長が、どのような資源基盤に基づいていたか、大気汚染、水質汚染、地盤沈下などの公害をもたらしたか、政府、地方自治体、市民社会はどのように対応したか、について検討しました。

そして、そこで形成された資源利用・立地(資源ネクサス)は半世紀たった現在も、成長するアジアの一つの原型となったとも考えられます。もし、高度成長下の開発主義国家が形成を主導する資源ネクサスと、それがもたらす環境への負荷の限界点(tipping points)を考えると、21世紀になって世界的に広く認知されるようになった地球温暖化、生物多様性の喪失、化学物質による海洋汚染などの、いわゆる「地球環境問題」における限界点との重なりや、両者の関係を理解する必要があるでしょう。プログラム1では、2019年度も、こうした方向で研究を続け、成果を出していくとともに、地球研全体の研究動向にも貢献していくつもりです。

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集合写真

メンバー

プログラムディレクター

氏名所属
杉原 薫総合地球環境学研究所特任教授/関西大学経済学部客員教授/京都大学東南アジア地域研究研究所連携教授/政策研究大学院大学非常勤講師

経済学博士。ロンドン大学SOAS、京都大学、東京大学、政策研究大学院大学などで、経済学、歴史学、地域研究、政策研究の分野の教育研究に従事。経済史、環境史の立場から、日本、アジアから見たグローバル・ヒストリーを考えています。

研究員

氏名所属
増原 直樹上級研究員
山本  文研究推進員
岩崎 由美子研究推進員

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実践プログラム2

多様な資源の公正な利用と管理

写真1:伝統的農業景観(岩手県花巻市))

写真1:伝統的農業景観(岩手県花巻市)

熱帯林の木材(マレーシア)

熱帯林の木材(マレーシア)

図1:水、エネルギー、食糧、生態系のネクサス

図1:水、エネルギー、食糧、生態系のネクサス

さまざまな資源はお互いに関連しあっていて、単一の資源問題を切り離して解決しても全体の問題解決に至らない場合がたくさんあることがわかってきました。また、資源は地域から地球レベルまでさまざまな空間スケールで多様なステークホルダーによって生産・流通・消費されており、それらのプロセスを通じて公正に利用・管理するしくみと評価方法が必要になっています。さらに、持続可能で豊かな社会の実現には、再生可能な自然資源の賢い利用が鍵となっています。アジアは、急速な経済成長や人口増加、都市化などを背景とした大きな変化が起こっているものの、豊かな自然と文化に結びついた持続性の高い資源利用の伝統も残っており、私たちの将来像に大きな示唆を与えています。このプログラムでは、地球研がこれまでおこなってきた研究の成果を生かし、多様な資源を、さまざまな空間スケールで、多様なステークホルダーとともに、公正に利用するための手法を探ります。

例えば、栄養循環プロジェクトは、水を中心に地域住民、農業者、都市住民、行政機関やNPOなど、流域内の多様なステークホルダーのつながりと、その中での生態系や生物多様性のもつ役割に注目しています。一方で、農業に使われる窒素肥料などは、流域の外のグローバルな流通によって流域内に持ち込まれていて、その影響を無視することができません。また、グローバルサプライチェーンプロジェクトは、製品のサプライチェーンを通じて、さまざまな原材料や資源を利用することが生態系や人間生活に与える影響を分析します。サプライチェーンの最下流にいる消費者(一般生活者)から最上流にいる国内外の企業までをステークホルダーとして、資源利用のローカルからグローバルなスケールにわたる影響に焦点を当てています。

2018年度は、こうした多様な資源とステークホルダーとスケールでの公正な利用を理解するための枠組み構築のために、地域の資源利用に関するデータベースの作成を開始しました。公表されている統計量を中心に、日本の各都道府県のエネルギー、水、食料、生態系サービスなどの需要と供給に関するデータベースを作成しました。これによると、エコロジカルフットプリントや人間開発指数などの持続可能性に関する国際的な指標でみると、都道府県の差は小さいのですが、各資源の自治体内自給率は、人口密度にともなって大きな違いがあることがわかり、地域の持続可能性を考えるうえで重要な示唆が得られました。また、こうしたデータベースはさまざまな地球研プロジェクトの結果から地域の資源利用を比較するうえで基本的な資料となるため、基礎自治体や国際的なデータベースとして、今後拡張する予定です。

集合写真

メンバー

プログラムディレクター

氏名所属
MALLEE, Hein(代行)総合地球環境学研究所教授

研究員

氏名所属
小林 邦彦研究員
藤澤 奈都穂研究員
唐津ふき子研究推進員

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実践プログラム3

豊かさの向上を実現する生活圏の構築

村の定期市の様子(ブルキナファソ)

村の定期市の様子(ブルキナファソ)

WSSF2018 におけるケイト・ラワース氏の基調講演(2018年9月25日)

WSSF2018 におけるケイト・ラワース氏の基調講演(2018年9月25日)
  健康、平等、正義などの社会的な最低限の境界がドーナツの内側の輪、気候変動、生物多様性など地球環境的な超えてはならない境界がドーナツの外側。ケイト・ラワース氏(オックスフォード大学環境変動研究所上級客員研究員)はこのドーナツの中で暮らせるような社会システムのデザインを提案。

WSSF2018

WSSF2018

日本を含むアジアとその周辺地域は、世界人口の6割以上を擁し、世界の経済活動の3割以上を担っています。この地域は、あらゆる面で多様性に富んでいる一方、人間活動の急速な拡大により、環境破壊、温室効果ガス排出の増大、生物多様性の消失などを経験しています。同時に、貧富の差の拡大、社会的疎外、失業、局所的な貧困、地域固有の伝統文化の消失なども経験しています。

これらのプロセスで、都市域への人口集中や農山漁村域での過疎化にともない、社会、文化、資源、生態環境の急激な変容が起こり、両者の暮らしの場(生活圏)の劣化が加速しています。そこで、両者の連環を視野に入れ、豊かで持続可能な暮らしの場とは何かを考え、それを実現するための具体的な枠組みを作り、地域における経験や知恵を生かし、多様な自然と人間が共存しうる具体的な未来可能性のある社会への変革の提案をめざします。

これらの枠組みや変革は、既存の市場を基礎とする経済システムや政治的意思決定システムを前提とするものではなく、それらを根本的に変えてしまうもの、ないしは補うものとなるでしょう。ただし、トップダウンのみでシステムの変革を考察するのではなく、さまざまなステークホルダーの皆さんとともに持続可能なシステムを提案し、その実現可能性を探ります。

そのような提案は、地域に応じたものとなる可能性が大きいかもしれませんが、ある特定の地域のみに適用可能な提案というよりも、多様性を保ちつつ、何らかの一般的な枠組みの発見をめざしたいと考えています。

2018年度のハイライトは、福岡で開催された2018年世界社会科学フォーラム(WSSF 2018) のプログラム3のセッション(Lifeworlds of sustainability and well-being in a shrinking Japan)です。FEASTプロジェクトとサニテーションプロジェクトはどちらも、過疎化が農村部の人びとの持続可能性と幸福にどのような影響を与えているかを研究しています。また、人口の減少などにより縮小する日本の社会活動は、生態学的影響を軽減し、幸福の意味を再考し、資源消費の減少に合わせて経済的相互関係を再構築する機会を提供してくれます。参加したPeter Matanle(シェフィールド大学)、Steven McGreevy (FEASTプロジェクト)、Christoph Rupprecht(FEASTプロジェクト)、牛島健(サニテーションプロジェクト)、高瀬唯(茨城大学)の皆さんの報告と活発な討論がありました。なお、当セッションの成果は英文学術叢書にて出版予定です。

集合写真

メンバー

プログラムディレクター

氏名所属
西條辰義総合地球環境学研究所特任教授/高知工科大学マネジメント学部教授

社会の人びとの活力を保ちつつ、社会の目標である持続可能性や公平性も達成するしくみを設計することをめざしてきました。今の世代の人びとばかりでなく、将来の人びとも幸せになる社会のしくみとはなんだろうかという問いかけのもと、フューチャー・デザインを考え始めています。

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