実践プログラム

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実践プログラム1

環境変動に柔軟に対処しうる社会への転換

プログラムの概要

図1:「大加速」の趨勢とアジアの役割 社会経済指標1750年~2010年

図1:「大加速」の趨勢とアジアの役割
社会経済指標1750年~2010年

写真1: International Workshop on Resource Nexus and Asia’s Great Transformation (2019年3月)

写真1: International Workshop on Resource Nexus and Asia’s Great Transformation (2019年3月)

写真2: 滋賀県大津市の百閒堤(ひゃっけんづつみ)。長さ約180mの石塁で、土砂災害を防ぐために江戸時代に作られた。地域の自然資源を利用したEco-DRR の一つと位置付けられる。(Eco-DRRプロジェクト)

写真2: 滋賀県大津市の百閒堤(ひゃっけんづつみ)。長さ約180mの石塁で、土砂災害を防ぐために江戸時代に作られた。地域の自然資源を利用したEco-DRR の一つと位置付けられる。(Eco-DRRプロジェクト)

地球環境の持続性は、人類にとって本質的な重要性を持つ課題です。私たちの社会は、人間活動に起因する環境変動(地球温暖化、大気汚染などを含む)と自然災害に柔軟に対処できるものに変わっていかなければなりません。そのためには、環境変動や自然災害の問題が、生存基盤の確保、貧困・格差、戦争・紛争といった社会問題とどのように複雑に絡みあっているかを明らかにし、その双方を見据えた社会の転換につなげていく必要があります。本プログラムは、そのために必要な知識を総合し、具体的な選択肢を提案することをめざしています。

第一に「アジア型発展径路」の研究を推進します。1960年代以降の日本の工業化、都市化は、大気・水質汚染、地盤沈下、健康被害などの環境問題を生み出しましたが、その後、現在にいたるまで、急速な工業化、都市化を経験したアジア諸国でどのような問題があらわれ、それにどう対処してきたのかを、水やエネルギーといった資源の間の相互関係を分析するネクサス(連環)の概念を取り入れつつ、比較史的に検討します。さらにアジア各地域社会と欧米社会の発展径路を比較し、自然科学の新しい知見や技術革新も活用して地球環境問題に対処する道筋を考えます。第二に、生存基盤の持続的確保の条件を、ステークホルダーの視点を取り入れて、多面的に解明します。社会の持続性を確保するには、生存、利潤、統治、保全の4 つの動機が適切に働くことが必要であり、それにふさわしい価値観と制度が機能しなければなりません。フィールドワークの現場から政策担当者、国際機関にいたるまで、多様な立場の人たちと連携することによって、激しく変化する現実の課題を可視化すると同時に、それを生存基盤の確保という地域社会の課題につなげていきます。

新しい成果

増原上級研究員をハブとするプログラム研究会において、日本の高度成長がどのような資源基盤に基づき、政府、地方自治体、市民社会がどのように公害に対応したかについて検討し、そこで形成された臨海立地型の「資源ネクサス」がその後、中国など東アジアの発展径路の原型となったという新しい仮説を共有しました。開発主義国家が主導するこうした資源ネクサスが、熱帯の第一次産品輸出地域などにもたらしてきた環境負荷を考えると、21世紀になって広く認知されるようになった「地球環境問題」との重層的な関係を理解し、そのうえで、資源ネクサスを、日本などで進行する人口減少も視野に入れながら、より持続性のあるネクサスに転換していく必要があります。2020年度はこうした方向で研究を続けるとともに、SDGsとの関連など、地球研全体の研究にも貢献していきます。

プログラムに所属するプロジェクトのテーマ、取り扱っている問題など

日本を含む東アジアの資源需要は、現在に至るまで、東南アジアの自然環境に大きな負荷をかけてきました。熱帯泥炭社会プロジェクトは、スマトラ島の泥炭湿地の持続的利用に向けた学際・超学際研究です。村落共同水管理による権利の回復をめざすとともに、住民の地域運営能力の向上、さらに生計向上プログラムの設定と実施に尽力しています。また、地域社会の再生の視点から、土地所有の正確な把握や河川の上流部に位置する企業との情報共有をつうじて、さまざまな動機を持つ村外のステークホルダーとの連携を模索しています。

Eco-DRRプロジェクトは、生態系サービスの多機能性を活用した防災減災(Eco-DRR)の評価と社会実装についての研究です。自然災害リスクへの対応は、歴史的には、人口増加の趨勢を前提として考えられてきました。しかし、現在、人口減少や高齢化という新しい状況のなかで、防災減災や自然資源利用のあり方が問われています。地域の関係者と連携した自然災害リスクの可視化や対策を早急に考えなければなりません。それは、生存基盤の確保のために、他のアジア諸国も将来直面するにちがいない課題でもあります。

Aakashプロジェクトは、インド・パンジャーブ州の藁焼きの背景にある農業問題、環境問題を総合的に検討します。緑の革命以降導入された新しい農業技術は、生産性を飛躍的に向上させましたが、水や土壌に負荷をかけるだけでなく、圧縮された二毛作のなかでの藁焼きが大気汚染や、そこから生じる健康被害を誘発してきました。正確な情報を把握し、その共有に努めるとともに、健康教室などをつうじて、人びとの価値観の変化や行動変容の過程にも寄り添っていきます。

集合写真

メンバー

プログラムディレクター

氏名所属
杉原 薫総合地球環境学研究所特任教授/関西大学経済学部客員教授/
京都大学東南アジア地域研究研究所連携教授/
政策研究大学院大学非常勤講師

経済学博士。大阪市立大学、ロンドン大学SOAS、大阪大学、京都大学、東京大学、政策研究大学院大学などで、経済学、歴史学、地域研究、政策研究の分野の教育研究に従事。経済史、環境史の立場から、日本、アジアから見たグローバル・ヒストリーを考えています。

研究員

氏名所属
増原 直樹上級研究員
山本  文研究推進員
岩崎 由美子研究推進員

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実践プログラム2

多様な資源の公正な利用と管理

プログラムの概要

写真1:伝統的農業景観(岩手県花巻市)

写真1:伝統的農業景観(岩手県花巻市)

写真2:熱帯林の木材(マレーシア)

写真2:熱帯林の木材(マレーシア)

さまざまな資源はお互いに関連しあっていて、単一の資源問題を切り離して解決しても全体の問題解決に至らない場合がたくさんあることがわかってきました。また、資源は地域から地球レベルまでさまざまな空間スケールで多様なステークホルダーによって生産・流通・消費されており、それらのプロセスを通じて公正に利用・管理するしくみと評価方法が必要になっています。持続可能で豊かな社会の実現には、再生可能な自然資源の賢い利用が鍵となっていますが、再生可能エネルギーの利用や食料生産、水資源の統合的利用などとさまざまな生態系サービスの間にトレードオフやシナジーが生じています。また、途上国と先進国、都市とその周辺地域などでこうした資源の供給や消費、コスト負担などの点で公正さが問題となっており、問題の解決が必要です。一方で、アジア地域は急速な経済成長や人口増加、都市化などを背景とした大きな変化が起こっているものの、豊かな自然と文化に結びついた持続性の高い資源利用の伝統も残っており、私たちの将来像に大きな示唆を与えています。このプログラムでは、地球研がこれまでおこなってきた研究の成果を生かし、多様な資源を、さまざまな空間スケールで、多様なステークホルダーとともに、公正に利用するための手法を探ります。

新しい成果

図1:水、エネルギー、食料、生態系のネクサス

図1:水、エネルギー、食糧、生態系のネクサス

2018年度から、多様な資源の多様なステークホルダーおよびスケールでの公正な利用を理解するための枠組み構築のために、地域の資源利用に関するデータベースの作成を開始しました。2018年度には公表されている統計データを中心に、日本の各都道府県レベルでのエネルギー、水、食料、生態系サービスなどの需要と供給に関するデータベースを作成しました。2019年度は、特に生態系サービス(生態系が人間社会にもたらすさまざまな利益)について、これを市町村レベルに拡張する作業を開始しました。予備的な解析によると、エコロジカルフットプリントや人間開発指数などの持続可能性に関する国際的な指標でみると、都道府県の差は小さいのですが、各資源の自治体内自給率は、人口密度にともなって大きな違いがあり、地域の持続可能性を考える上で重要な示唆が得られる可能性が出てきました。また、こうした持続可能性に関する異なった資源間の相互関係は、SDGsのターゲット間相互の関連性の解析にも利用できる可能性があります。

写真 3:渓谷からの水資源(青森県)

写真 3:渓谷からの水資源(青森県)

写真 4:太陽光発電(千葉県)

写真 4:太陽光発電(千葉県)

プログラムに所属するプロジェクトのテーマ、取り扱っている問題など

サプライチェーンプロジェクトは、製品のサプライチェーンを通じて、さまざまな原材料や資源を利用することが生態系や人間生活に与える影響を分析します。サプライチェーンの最下流にいる消費者(一般生活者)から最上流にいる国内外の企業までをステークホルダーとして、資源利用のローカルからグローバルなスケールにわたる影響に焦点を当てています。

今年度からPRの始まるFair Frontiersプロジェクトでは、現在進みつつある熱帯林の劣化や持続可能性の低い利用形態の問題点を探ります。かつて行われていた焼き畑は、持続可能性の比較的高い利用方法でしたが、現在はそれが衰退し、大規模なプランテーションなどに変化しつつあります。アジア・アフリカの熱帯林を対象に、地域住民や政府、国際的な企業などさまざまなステークホルダーの間における、より公正な利用形態やシステムを分析・提言します。

集合写真

メンバー

プログラムディレクター(代行)

氏名所属
Hein Mallee総合地球環境学研究所教授

オランダのライデン大学にて博士号取得。社会科学者。当初、中国における人口移動および関連政策の研究をおこなっていたが、国際開発の分野に従事しはじめ、資源に対する現地の人びととの関わりと権利をテーマに、中国や東南アジアにおける農村開発、自然資源管理、貧困軽減に携わるようになる。近年は、これまでの活動における現地の人びとの参加や農村開発の経験をもとに、人間の健康と環境( エコヘルス) に関する諸問題に取り組んでいる。2013年より総合地球環境学研究所に勤務。Future Earthアジア地域センター事務局長。

研究員

氏名所属
小林 邦彦研究員
唐津ふき子研究推進員

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実践プログラム3

豊かさの向上を実現する生活圏の構築

プログラムの概要

写真1: ゴロンタロ州ハヤハヤ村の農家を中心とするTDCOP中心メンバー(SRIREPプロジェクト)

写真1: ゴロンタロ州ハヤハヤ村の農家を中心とするTDCOP中心メンバー(SRIREPプロジェクト)

写真2: ザンビアでのアクションリサーチ:ZAWAFE2018のDziko Langaブースにはザンビアの副大統領も来訪(サニテーションプロジェクト)

写真2: ザンビアでのアクションリサーチ:ZAWAFE2018のDziko Langaブースにはザンビアの副大統領も来訪(サニテーションプロジェクト)

日本を含むアジアとその周辺地域は、世界人口の6割以上を擁し、世界の経済活動の3割以上を担っています。この地域は、あらゆる面で多様性に富んでいる一方、人間活動の急速な拡大により、環境破壊、温室効果ガス排出の増大、生物多様性の消失などを経験しています。同時に、貧富の差の拡大、社会的疎外、失業、局所的な貧困、地域固有の伝統文化の消失なども経験しています。これらのプロセスで、都市域への人口集中や農山漁村域での過疎化にともない、社会、文化、資源、生態環境の急激な変容が起こり、両者の生活圏(暮らしの場)の劣化が加速しています。そこで、両者の連環を視野に入れ、豊かで持続可能な暮らしの場とは何かを考え、それを実現するための具体的な枠組みを作り、地域における経験や知恵を生かし、多様な自然と人間が共存しうる具体的な未来可能性のある社会への変革の提案をめざします。

これらの枠組みや変革は、必ずしも既存の市場を基礎とする経済システムや政治的意思決定システムを前提とするものではなく、それらを根本的に変えてしまうもの、ないしは補うものとなるでしょう。ただし、トップダウンのみでシステムの変革を考案するのではなく、さまざまなステークホルダーとともに持続可能なシステムを提案し、その実現可能性を探ります。そのような提案は、地域に応じたものとなる可能性が大きいかもしれませんが、ある特定の地域のみに適用可能な提案というよりも、多様性を保ちつつ、何らかの一般的な枠組みの発見をめざしたいと考えています。

新しい成果

超学際研究を進める上で、ステークホルダーとどのように付き合っていくのかは非常に重要です。抽象的な原理や原則は多々あるようですが、現場に適用する際、なかなか具体的なやり方に結びつかないのです。そのため、プログラム3 のみならず、地球研でステークホルダーと関わり合いのある方々と共に「実践における市民の皆さんとの付き合い方談話会」を始めています。この議論の中から具体的な実践のやり方の「きまり」が少しずつ見えてきています。実践におけるひとつの目標は、市民の考えや生き方が持続可能な方向へシフトすることですが、どうやればそのような仕組みのデザインができるのかが少しずつわかってきました。一方で、地球研の建物や所員の移動に当たってどのようにエネルギーを使い温室効果ガスを出しているのかを測るフットプリントプロジェクトも実施しています。

プログラムに所属するプロジェクトのテーマ、取り扱っている問題など

FEASTプロジェクト:プログラム名にもある「生活圏(ライフワールド)」に加え、持続可能性、ウェルビーイング(しあわせ)、社会の変革、経済的・政治的オルタナティブ(代替的選択肢)、そしてデザインと計画といった切り口から、食と農に関する研究を進めています。現在のシステムを市民と共に再検討し、ポスト成長社会に適した地域の小規模なフードシステム、食がコモンズ化された食のライフワールドをめざし、その再構築に取り組んでいます。

サニテーションプロジェクト:サニテーション(人のし尿を処理するしくみ)は「価値」の創造です。サニテーションを単なる技術ではなく、人間や地域社会のなかの価値連鎖そのものとして捉えるモデルが、「サニテーション価値連鎖」です。サニテーションプロジェクトでは先進国と開発途上国の共通の解決策として「サニテーション価値連鎖」を提案します。サニテーション価値連鎖に含まれる諸価値を健康と幸福、物質、社会-文化におけるそれぞれの3 つの価値に整理し、日本、アジア、アフリカで国際共同研究を進めています。

SRIREPプロジェクト:貧困問題を背景とする零細小規模金採掘という資源開発による地球規模の水銀環境汚染に対処するため、トランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクトを活用した住民の変容とトランスディシプリナリー実践共同体を中心としたネットワーク構築によって、住民と協働で持続可能な地域イノベーションをもたらします。さらに水銀ゼロをめざすローカルからグローバルまで環境ガバナンスを強化することによって、この問題を解決へと導く道筋を解明します。

集合写真

メンバー

プログラムディレクター

氏名所属
西條辰義総合地球環境学研究所特任教授
/高知工科大学フューチャー・デザイン研究所所長

社会の人びとの活力を保ちつつ、社会の目標である持続可能性や公平性も達成するしくみを設計することをめざしてきました。今の世代の人びとばかりでなく、将来の人びとも幸せになる社会のしくみの設計をフューチャー・デザインと名付け、研究をしています。

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