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総合地球環境学研究所・「地球人間システムの共創プログラム」では、認識変容(Cognitive Transformation)・行動変容(Behavior Transformation)・社会変容(Social Transformation)と地球人間システムに関する「T3 Earth Forum」を定期的に開催します。
人間活動の拡大による地球環境の限界とそれを越える事象の連鎖が危惧されるなか、人類はどのように持続可能な社会を構築できるのでしょうか。また、その根底にある問いとして、人はどのように生きるべきなのでしょうか。このフォーラムでは、地球環境の変化が、どのような人の認識変容や行動変容、社会変容と関わっているのかを議論します。人が内面に持つ意識・価値と、それが外に現れた時の行動・習慣、そしてそれらが社会で共有される時の規範や制度・システム等と地球環境との関係を、様々な分野の方々と議論します。
今後のフォーラム
第9回 T3 Earth Forum (T キューブ・アースフォーラム)
日時 :2025年6月18日(水)15:00-17:00
場所 :地球研講演室+online
言語 :英語 (同時通訳はありません。)
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ミーティング ID : 865 3459 8166● パスコード: 428449
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プログラム
プログラム
15:00-15:45 Prof. R. Bin Wong (Distinguished Research Professor, UCLA.)
“Addressing Complex Social-Ecological Systems Through Leverage Points Perspectives & Systems Thinking”
15:45-16:00 Q & A
16:00-17:00 Discussion
The brief biography for Prof. Bin Wong
Before moving to UCLA in 2004 to be the Director (2004-2016) of the UCLA Asia Institute, Bin Wong served as Director of the Center for Asian Studies at UC Irvine where he was Chancellor’s Professor of History and Economics. He has also been a visiting professor and researcher at institutions in mainland China, France, Japan, Taiwan and the United Kingdom. As Director of the UCLA Asia Institute, he was responsible for fostering collaborations with a strong Asian component across campus, nationally, and internationally. These include new inter-disciplinary initiatives spanning research, graduate training, and class room curricula in K-16 settings. Wong’s own research has examined Chinese patterns of political, economic and social change, especially since eighteenth century, both within Asian regional contexts and compared with more familiar European patterns, as part of the larger scholarly efforts under way to make world history speak to contemporary conditions of globalization. Among his books, China Transformed: Historical Change and the Limits of European Experience (Cornell University Press, 1997) is the best known in its English and Chinese editions. Wong has also written or co-authored more than a hundred articles published in published in Chinese, English, French, German and Japanese journals that reach diverse audiences within and beyond academia. Since his retirement from UCLA in 2023 he has been teaching in a graduate program on political economy at the Taipei School of Economics and Political Science.
終了したフォーラム
第8回 2024年12月5日 (木)
場所 :地球研セミナー室3/4+online
タイトル :未来の音楽と地球環境 -more and moreからless is moreへ-
音楽で「足るを知る」を追求する"Less is More“の弦楽4重奏グループの音楽プロデューサーとヴァイオリン奏者・チェロ奏者(東京芸大院卒)を招いて、未来の音楽と地球環境をテーマに、実演と体感、対話を行います。見えない音楽と見えない環境の類似性や、純音・不協和音・変拍子の体感、地域に宿る地球環境と瞬時に宿る全体の音楽、正しさを追求する科学と美しさを追求する芸術など、未来の音楽と地球環境に興味のある方は、ぜひご参加ください。
プログラム :
15:00~15:20 第1部 趣旨説明と前説
15:20~16:20 第2部 実演と体感(純音と楽音の違い、不協和音の生み出す美、変拍子の体感など)
16:20~17:00 第3部 パネルデイスカッション
趣旨:音楽と踊りが生み出す一体感は、類人猿における「毛づくろい」に相当する、とR・ダンバーは指摘した。集団の規模を大きくし、脳の発達を促したという。人類の進化に寄与したかもしれない音楽の歴史を紐解き、未来の音楽について考えてみたい(多田泰教)。
発表者・演奏者 :
多田泰教(音楽プロデューサー)
中西圭祐(チェロ奏者)
加藤周作(ヴァイオリン奏者)
第7回 2024年10月13日 (日)
タイトル:「ヒューマニティ水文学」
場所 :山梨大学+オンラインのハイブリッド
目的 :水文学・水文科学は,地球と地域の水循環や水環境を,自然科学的,人文・社会科学的に研究する分野で,限られた水資源のガバナンスを社会科学的に明らかにする社会水文学では,水の公共性や健全な水循環の概念などを元に,様々なアプローチが取られ始めています。
一方,人の内面にある水に対する価値観や規範,表象,信仰や,外面に現れる生活様式や制度は,現代につながる様々な社会変容によって大きく変化しており,水に対する多様な価値を共有し,水と人が共生するためには,水に対する認識と行動,制度がどのようにつながり,それぞれの変容がどのように自然と社会へ影響を与えているかを明らかにする必要があります。この特別公開企画では、ヒューマニティ水文学(人文・社会水文学の視点から,水の価値の多様性について共有し,自然と社会と人をつなげる水の役割について議論します。)
司会 谷口真人(総合地球環境学研究所)
10:30~10:50 池上 尚(埼玉大学)
「水分多寡にまつわる形容表現小史」
10:50~11:10 河野 忠(立正大学)
「伝説や生活習慣を切り口とした水環境研究-「弘法水」を例として-」
11:10~11:30 嶋田奈穂子(総合地球環境学研究所)
「聖地の立地に現れる人の環境認識― 地下水への意識 ―」
11:30~11:50 島袋美由紀(琉球大学)
「ゲーミフィケーションで考えるサンゴ礁島嶼の水循環と水資源」
11:50~12:30 総合討論
第6回 2024年7月11日 (木) 15:00~17:00
(1)招待発表 :曽我 昌史(東京大学大学院農学生命科学研究科)
「人と自然の「かかわり」が自然共生社会の実現に果たす役割」
<発表要旨>
私たちは、一人ひとり異なる「かかわり」を自然との間に持っている。たくさん自然とふれあう(ふれあってきた)人もいれば、ほとんどかかわりを持たない人もいる。こうした人と自然とのかかわりは、その学際性の高さからこれまで体系的に研究されることが少なかったが、最近、生態学や心理学、公衆衛生など多くの学術分野で注目されている。実際、自然を体験することは、人の健康やウェルビーイングを高めるだけでなく、自然環境保全に向けた行動変容の促進にも寄与し得ることが明らかになってきた。本講演では、私がこれまで行ってきた人と自然のかかわりに関する一連の研究(人-自然相互作用学)や、この学問体系の中で特に重要な概念(経験の消失、基準推移症候群、バイオフォビアなど)を紹介し、このかかわりが自然共生社会の実現にどのように貢献するのかを議論する。
(2)友尻大幹(地球研)
「生態系の変化をどう認識すべきか;「新しい生態系」概念の導入と課題」
第5回 2024年5月 9日 (木) 15:30~17:30
(1)招待発表 :加納 圭(滋賀大学)15:30~16:30
「Neo-indigenous Knowledge「柿渋」と脱プラスチックを合わせたグリーンイノベーションの取り組みと 心理学の期待価値理論に基づく利用価値介入を取り入れたSTEAM教育プログラムについて」
ハンズオンアクティビティも含む: 実際に柿渋や柿渋のプロダクトを見ることができたり、柿渋の効果を 確かめることができます。(現地参加のみ)
<発表要旨>
「柿渋」(渋柿のジュースを発酵させたもの)でコーティングされたものは、防水・撥水性、防虫性、抗菌・ 抗ウイルス性、防臭性を持つ。そのため、釣糸や漁網、袋や小包、紙子(紙の着物)、寺社仏閣の木材塗装など様々なも のに使われてきた。しかしながら、安価・高強度のプラスチックが日本へ導入された後、柿渋の需要は急速に衰退した。 本発表では、「柿渋」をケースの 1 つとして捉え、天然物によるグリーンイノベーションの可能性について考えてい く。その際、Neo-indigenous Knowledge というIndigenous Knowledge の枠組みを日本にも援用した枠組みを用いて「柿 渋」を捉えていく。最終的に、必ずしもプラスチックか「柿渋」かという二項対立にならない、西洋科学とNeo-indigenous Knowledge との共創が可能な枠組みを提案する。 また、現在においては日本人ですら「柿渋」を知る人が少なく、柿渋に似た技術をもつ韓国済州島、タイ王国チェン マイでも同様であることから、「柿渋」や「柿渋」を用いた生活様式に関する教育もグリーンイノベーションに向けた重 要な要素の1つとして捉えられる。人々の行動変容にまでつながる教育プログラムを開発することは容易ではないが、 期待価値理論に基づく利用価値介入という手法を用い、行動変容につなげることを目指したSTEAM教育プログラム開 発についてもハンズオン形式で紹介する。
(2)浅利美鈴(地球研)16:30~17:00
「京都で超SDGsを考える」
第4回 2024年3月14日 (木) 15:00~17:00
(1) 招待発表 :大岡由佳(武庫川女子大学)
「トラウマインフォームドなケアシステムの社会実装」
<発表要旨>
私たちの社会は、災害や人災といったトラウマ(心的外傷)になりえる出来事が多数存在している。環境課題の一つである気候変動を例にとれば、その変動によって、集団全体のメンタルヘルスに破壊的な影響を及ぼすと予測されている。トラウマのリスクは、不均等に分布し、より脆弱な状況に住む人々は、一般的に最悪の結果を経験しているといわれている。それらの経験がもたらすトラウマ反応を含むメンタルヘルスの問題は、その原因、症状、影響、治療法が異なるが、こころ・からだ・行動の変化をもたらすものである。これらのトラウマとなる出来事の影響を緩和するために効果的な方法がとられれば、何世代にもわたって幾分かはトラウマを予防できる可能性がある。本報告では、その効果的な方法の一つとして、心理社会学的な視点としてトラウマインフォームドケア(トラウマのことをよく理解し関わる視点)を提示し、人々の認知をどのように変容できるか、その可能性について模索する。
(2) 一原雅子(地球研)
「規範と制度:予防原則を例に」
<発表要旨>
人間社会と地球環境の関係において、規範や制度はその関係性を社会的に形作る役割を持つ。規範がその起源や違反に対する強制力の構造などによって、個人の行動に対する制約の程度に幅を持つのに対て、制度は原則として人々の行動の外枠を決定づける。このように規範と制度は連続性があり、後者に近づくほど要保護性の高い法益が画一的に保護され、前者に近づくほど個人の自主性と遵守態様の多様性が尊重される。
地球環境問題は多くの場合、問題状況が流動的かつ不鮮明であって、現に生じている法益侵害を食い止める必要性が明らかでありながら、その法益侵害ゆえに守られている人々の暮らしがあるなど、問題状況は複雑である。それゆえに国際環境法の分野では、規範と制度の双方にまたがる法原則が、他のいかなる法分野よりも多用されてきたといわれる。本報告では法原則の一例として予防原則を取り上げ、その経緯や、社会変容との関係で持ち得る機能を指摘する。
第3回 2024年1月12日 (金) 15:00~17:00
(1)招待発表 :武田英明(国立情報学研究所)
「AI社会における人の未来」
<発表要旨>
深層学習で始まった第3次AIブームは生成 AIの出現によって、より具体的に社会におけるAIの利 用が進み始めたといえよう。このままAIの発展と社会適用が進みAI社会と呼べる新しい社会が出現するであろう。人のあり方は技術によって変容してきている。狩猟社会、農耕社会、工業化社会、情報化社会と人を取り巻く技術によって人のあり方は変化してきた。ではAI社会ではどうであろうか。AI社会において顕著なのは人の接すべき対象が大量のAIとなることである。いわば Intelligence Overload/Overflow という事態が起こる。人は多種多 様かつ大量の知性に接して生活することになる。そのためには自分の分身となる AI(エージェント)との共同作業が必須になるであろう。ただ、知性の多様性を活かすためにはエージェントは一つである必要はなく、複数あることが自然であろう。その帰結は人も一つであるという束縛からの解放である。人は個人ではなく、分人の集合として存在し、活動する。分人という概念は個人という主に工業化社会以降に確立した概念にない人の在り方を提示している。
(2)熊澤輝一(地球研)
「AI社会における環境のナラティブについて」
第2回 2023年11月9日 (木) 15:00~17:00
(1) 15:00~16:00 招待発表:松田哲也(玉川大学・脳科学研究所)
「環境との相互作用による社会性の形成」
<発表要旨>
私たちは、脳内で表象された感覚を認知する際に、記憶を使って理解する。これは、既知の情報を用いて理解できれば対象の情報量が削減でき、省エネで認知することが可能となるためである。ただし、この記憶は、単なる言語的な記憶だけでなく、遺伝的要因のような先天的に決定されているもの、生活習慣、食習慣、加齢、エピゲノム、体内環境、社会環境なども含まれるため、履歴記憶といった方が適切なのかもしれない。この履歴記憶により個々の価値観が形成され、それを参照することでヒトの意思決定が行われる。履歴記憶は、時々刻々とアップデートされ、価値感も必要に応じて変わるものもある一方で、変わらずより頑強に形成されていくものもあると考えられる。つまり、個と社会との相互作用により揺るがぬ信念を持ちつつ柔軟性をももつ個性が創られていくのである。本講演では、このような観点から生物学的に個性を考えていきたい。
(2) 16:00~16:30 原口正彦(ハーバード大)
「リスクコミュニケーション」
第1回 2023年9月14日 (木) 15:00~17:00
(1) 招待発表 :村上佳世(関西学院大学)
「地球環境保全に対する価値観の世界比較:社会システム変容に向けた課題」
<発表要旨>
私たちの経済活動に起因する気候変動や大気・土壌汚染などがもたらす環境変化は、人間の健康や社会資産、生物種の絶滅リスクや植物の生産力を通じて、私たち自身にダメージを与えている。ライフサイクル影響評価 (LCIA)は、疫学、毒性学、大気汚染学等の知見を用いて、そのような社会へのダメージを定量的に推定する手法であるが、日本版評価モデルLIMEは、物量単位で推定した現在の被害量をベースラインとして、それらの被害を軽減することの「社会的重要度」を、経済評価手法を用いて推定する学際的評価モデルである。2022年公表論文では、世界19ヵ国に居住する人々を対象にしたLIMEの大規模同時調査データと、国の平均寿命、所得や男女の不平等度などの社会指標、および相対所得や主観的幸福などの個人指標を用いて、人々の地球環境保全に対する多様な価値観を体系的に解明した。フォーラムでは、その研究内容を紹介し、地球規模の環境問題に関わる社会システム変容に向けて話題提供を行う。
<論文情報>
・ プレスリリース(https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2022_06_30_01.html)
・ 論文(Nature Sustainability)(https://www.nature.com/articles/s41893-022-00914-8)
・ 関連する一般向け記事(週刊エコノミスト)(https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20221213/se1/00m/020/005000c)
(2) 青木えり(地球研)
「個人の認識と行動変容」