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メガシティが地球環境に及ぼすインパクト
――そのメカニズム解明と未来可能性に向けた都市圏モデルの提案

プロジェクトのホームページ

地球研年報(業績一覧など)

C-08

プロジェクトリーダー

村松 伸 総合地球環境学研究所

サブリーダー

林 憲吾 総合地球環境学研究所

コアメンバー

岡部明子
籠谷直人
加藤浩徳
島田竜登
深見奈緒子
村上暁信
森 宏一郎
山下裕子
山田協太
MCGEE, Terry
ELLISA, Evawani

千葉大学大学院工学研究科

京都大学大学院地球環境学堂

東京大学大学院工学系研究科

東京大学文学部・大学院人文社会研究科

早稲田大学イスラーム地域研究機構

筑波大学大学院システム情報工学研究科

滋賀大学国際センター

一橋大学商学部・大学院商学研究科

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

ブリティッシュコロンビア大学アジア研究所

インドネシア大学工学部建築工学科

プロジェクト研究員

三村 豊 プロジェクト研究員
松田浩子 プロジェクト研究員
MEUTIA, Ami Aminah プロジェクト研究員
内山愉太 プロジェクト研究員

研究プロジェクトについて

地球上の人口の半分を支える都市は、今後、人類が生きるべきもっとも重要な空間です。本プロジェクトは、この都市と地球環境とが調和する方法を導き出すため、人口1000万人以上のメガ都市に関して、(1)異なる学問領域、歴史、文化などからメガ都市を統合的に認識する手法の確立、(2)問題低減に向かう統合的解決策の提示、(3)環境、経済、社会の豊かさを統合した都市のあるべき姿の提示、を目標としています。

 

なぜこの研究をするのか

1000 万人を超えるメガ都市は、20 世紀において人類史上初めて生み出された新しい現象です。その現象は地球規模の環境問題(地球温暖化)や、ローカルな環境問題(都市の脆弱化)を引き起こし、また、メガ都市は多大な影響を受けると予測されています。このメガ都市の多くは、非西洋の温帯、熱帯のモンスーン地域の発展途上国という、都市に関する制御の方法が必ずしも成熟していない場所で発現しつつあります。この地球環境にかかわる最前線の問題に取り組むことにより、日本などで起こりつつある都市の縮小化問題にも何らかの示唆を得られることを期待しています。

 

どこで何をしているのか

主なフィールドとして選んだのは、現在、経済成長の著しいインドネシアのジャカルタ首都圏です。ただ、そこで起こっている現象はあまりにも多様で、空間的にも広大です。ジャカルタ首都圏は100キロ四方を超えています。郊外に住宅が広がり、高層建築が立ち並ぶ一方、かつての農村地帯は都市に飲み込まれ、都市内にあった高密度で伝統的な集落は形を変え、存続してきています。工場や商業地も続々と建設されています。そこには、人工の環境ばかりでなく、異なったコミュニティが営まれ、自然環境が多様な様態で存在しています。インドネシア大学、ボゴール農科大学、インドネシア科学院とともに、それらを観察、計測することによって、グローバル/ローカルな環境とのかかわりあいを導き出し、2050年のメガ都市の姿を提示することが目標です。同時に、ミクロなデザイン提案も考えています。さらに、地球上の各地に存在している17のメガ都市の居住環境もフィールドワークをとおして比較を行なっています。

伝えたいこと

本プロジェクトは3年が経過し、準備段階から数えれば7年経ちました。生態学、都市計画学、歴史学、環境経済学、温熱環境学、水文学など、異なる学問領域の専門家たちが同一の巨大都市を協働して研究することのダイナミズムは、わくわくすると同時に、はらはらの連続です。研究への姿勢、方法、評価基準は、学問間で思った以上に大きな溝があります。それでも都市の多様な側面を統合しつつ、巨大な都市を解像度を上げて分析する手法(都市環境特性類型)(図1)とほかの17のメガ都市への応用、メガ都市を比較して評価する都市持続性指標(CSI)(写真1)は、まだ中間段階ですが、これまでにない画期的な成果だと自負しています。

図1

図1 4つの都市環境特性類型

写真1

写真1 都市持続性指標(CSI)
17 のメガ都市(東京・ジャカルタ・ソウル・ムンバイ・サンパウロ・メキシコシティ・マニラ・デリー・カイロ・コルカタ・大阪神戸・上海・ブエノスアイレス・ニューヨーク・カラチ・ダッカ・モスクワ)を対象に、持続可能な都市を探るための模型を作製。「環境(青)、経済(赤)、社会(緑)」の3 側面の指標を用いる。負荷や負担が大きいほど高くなる。模型の各指標部分は取り外すことができ、指標ごとの負荷・負担を簡単に比較・評価することが可能

また、都市内高密度集落でのインドネシア大学と日本の学生たちの協働のデザイン提案は、大学教育としてばかりでなく、市民たちへの啓発を意図し、大きな成果を挙げています(写真2)。

写真2 チキニー(都市内高密度集落)でのデザイン介入
図2 プロジェクトの流れと研究組織

 

これからやりたいこと

本プロジェクトは残り2年ですが、これまでとは違った想定外の成果が出ることでしょう。それぞれのメンバーが、独自に学問の融合に取り組もうとしていることからも期待できます。当初から目標としてきた、メガ都市シナリオ2050やメガ都市GISのみならず、都市内の各地に広がる中間層の居住環境を理解し、提案するインターネットを使った新しい試みや人々の都市環境リテラシーの向上、人文知やアートがどのように都市やまちやむらの環境(人工環境、自然環境、社会環境)に貢献するかについての研究は、今まさに種がまかれつつあり、プロジェクト期間内に是が非でも収穫しようと考えています。

写真3

写真3 中間層の居住環境を認識し、提案するインタラクティブなウェブサイト

 

 

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