地球研オープンハウス2012

地球犬と行く!世界一周の旅 ~エリアケイパビリティープロジェクト編~

解説者:小河久志(総合地球環境学研究所プロジェクト研究員)
専門は文化人類学、タイ地域研究です。タイの沿岸域を主たるフィールドとして、災害復興や再イスラーム化について研究してきました。また、2011年3月に起きた東日本大震災の津波被災地の復興プロセスについても調べています。(研究者業績ページ

小河写真

- まとめ -

タイ南部トラン県

地理:マレー半島西海岸に位置。陸地の大半は丘陵地。

気候:熱帯モンスーン気候

経済:農業(稲作、ゴム栽培、パーム椰子栽培)、漁業、観光業など

人種・民族:タイ系、マレー系、中国系、南アジア系など

言語:タイ語(南部方言)

宗教:上座部仏教、イスラーム、キリスト教など

食文化:タイ料理(他の地方よりも辛いといわれる)のほかに、豚の丸焼き、飲茶、ケーキなどが有名

建築:中国ポルトガル様式の建物など

【伝統的知識】
タイ南部トラン県をはじめタイの漁村には、船の精霊である船霊を祀る信仰が広くみられる。タイ語でメーヤーナーンと呼ばれる船霊は、船の舳先に宿る女性の精霊とされる。船霊は、漁の安全や漁獲の多寡を司る存在として、漁業に携わる人たちの信仰を集めてきた。船霊を信仰する人は、船霊の機嫌を損ねることが不漁をはじめとする漁撈活動に悪影響をおよぼすと考えている。このため彼らは、船霊にまつわる様々な禁忌を遵守してきた。たとえば、船の清掃や修理を怠ることは、船霊を汚い状態にすることと同義の行為として避けられる。また、大漁や漁の安全を目的に、しばしば船霊を対象とする儀礼を行ってもいる。そこでは一般に、船主が船の舳先に様々な色の布を巻いて聖水で船を清める儀式と供宴が催されてきた。以上のような船霊に対する信仰は、身体的、経済的な不安をともなう漁業という生業に従事する人たちの心の支え(拠り所)となっているのである。

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