1)ラオス研究:2013年10月に、第7回ラオス国家保健研究フォーラムを首都ビエンチャンで開催しました。そのなかで、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことをめざす、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)について、住民登録の重要性が話題となり、本プロジェクトもかかわった地域住民の動向を継続的に把握する「健康と人口の動態追跡調査システム(HDSS)」の方法や活用、拡大について議論されました。また、外務省・駐ラオス日本大使館の援助による官民草の根事業により、サワンナケート県セポン郡に「セポン村落保健ボランティアVHV研修センター」が設置され、ボランティアや保健センタースタッフ、郡スタッフの研修が開始されました。これら一連の取り組みによる長年の貢献を称え、ラオス政府よりラオス友好メダルを授与されました。今後、ラオス政府、NPO法人アジア保健教育基金、ラオス保健研究日本コンソーシアムなどと連携し、エコヘルスに重点ををおいた保健人材育成を行ない、ラオスの保健状況の改善につなげていく予定です。
エコヘルス教育の推進については、国際学校保健研究日本コンソーシアムを中心に、ラオス教育省、ラオス国立大学教育学部と連携し、教師養成校におけるエコヘルス・カリキュラムの導入が決定しました。
2)ベトナム研究:ベトナム・カンフーマラリア研究所、長崎大学などと協力し、サル由来のノーザイ・マラリアの研究を実施しました。その結果、森に生息するマラリア媒介蚊であるダイラス・ハマダラカの生態究明の重要性を明らかにしました。ラオス・サワンナケート県と隣接するクワンチ省の国境マラリアの研究を継続して行なっています。
3)バングラデシュ研究:国際下痢症研究所、ロンドン大学、長崎大学と協力し、インド洋ダイポール現象による気候変動と下痢症の関係と、洪水の健康影響を研究しました。さらに、フィラリアのモニタリングも実施しました。バングラデシュは気候変動の影響を受けやすいため、衛生状態を改善し、媒介昆虫個体数を減らし、脆弱性を軽減する必要があり、本プロジェクトの関係者が継続して活動を行なっています。
4)中国研究:雲南健康と発展研究会と協力し、中国と日本における高齢者の健康(healthy aging)についての出版物を作成中です。中国でも今後、人口の高齢化が避けられません。日本でも国民皆保険の維持が困難になるなか、中国でUHCを達成することは容易ではありません。環境に配慮し、高齢者が健康でいられる成熟社会を構築する方法について両国が学びあうことが重要です。フルリサーチ(FR)期間が終了し、活動規模は小さくなっていますが、これまでに確立した協力関係、ネットワークを絶やすことなく、新たな研究を展開する準備をしています。