人と土地の持続可能な関わりを再構築することによる生活圏の未来像の提案

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研究プロジェクトについて

都市インフォーマル地区では、土地所有を正規化することで居所のテニュア(保持)を確実にし、環境リスクの連鎖を断とうとする考え方が主流であるのに対して、本FSでは、先住民の環境観を再評価し、保有の実態に着目し、所有権自体を問い直すスタンスに立っています。そして、ラテンアメリカの具体的な地区において、住民参加型の小実践と地元政府との協働を連動させ、〈生活圏テニュアの確実性〉の考え方に立脚した人と土地の関係を示します。

なぜこの研究をするのか

途上国都市の人口の1/3が暮らすスラム(インフォーマル地区)の高リスク環境は、今日のグローバル化した経済社会の構造から必然的に出現している地球規模の課題です。インフォーマル地区の住人は、土地を正規の手続きを経て取得していないため、いつ立退きを迫られるかわからない不安を抱え、その日暮らしにならざるをえません。テニュアの確実性の欠如とよばれる問題です。これを解決しようと、土地所有権を付与する方向で対策がとられてきました。ところが、土地所有権の徹底は、私有財産としての土地が市場で取引きされることを促し、人と土地の関係を不安定化させ、結果的に安心して暮し続けられる生活圏を脅かしている一面があります。

そもそも、人と土地との関係は、単一世代の個人が所有する権利として扱えるものなのでしょうか。そこで本FSは、複数世代、生活圏レベル、保有する責務の側面を考慮し、人と土地の関わりについて本源的な問いを発し、生活圏レベルでテニュアの確実性を高める提案を行ないます。

これからやりたいこと

写真1  土地の浸食リスクを低減するために住民参加型実践で山留めをつくる。斜面地インフォーマル地区カンテラ(サンマルティン・デ・ロスアンデス、アルゼンチン 2018年5月)

写真1  土地の浸食リスクを低減するために住民参加型実践で山留めをつくる。斜面地インフォーマル地区カンテラ(サンマルティン・デ・ロスアンデス、アルゼンチン 2018年5月)

図1 研究方法のフロー

図1 研究方法のフロー

私たちは、具体的な地区・地域をフィールドに実践して示し、戦略的に地球規模の変化を起こす方法を考えています。すでに、ジャカルタ中心部の高密度化したスラムで、共用建物をコミュニティとともに自力建設する活動を通じて、建築実践の小さな成功体験が、インフォーマル地区に実際に変化を起こす近道であり、情報ネットワークが普及した今日、効果が明白ならグローバルに伝播しうるという手応えを得ています。

本FSが対象とするのは、ラテンアメリカです。ラテンアメリカでは近年、アンデス先住民の環境観に学び、人の権利に並ぶ「自然の権利」概念を提示するなどオルタナティブな地球環境対策を模索し始めています。具体的には、コロンビアのメデジンを拠点とするEAFIT大学Urbam都市環境研究所のA. Echeverri教授をパートナーとし、植民地化や紛争など地球規模でテニュアの確実性が脅かされてきた複数地域を実践フィールドの対象候補としています。

他方、実践に先立ち、これまで取り組んできたインフォーマル地区をマッピングする手法に改良を加えて、テニュアの不確実性をもたらたす多様なリスクの空間的分布状況を把握します。世界の各都市において、それにどのような共通性があり、地域別にどのような特性があるかを明らかにします。

さらには、アジアアフリカにおけるインフォーマル本位の自発的環境改善の動きとネットワークし、先進国でありながら欧米化以前の知恵が生き続けている日本の立ち位置を活かして、私たちが実践をもって示す生活圏レベルでテニュアの確実性を高めるモデルが、グローバルサウスで共有されていく未来を思い描いています。

メンバー

FS責任者

氏名所属
岡部 明子東京大学大学院新領域創成科学研究科

主なメンバー

氏名所属
ECHEVERRI, AlejandroUrbam, EAFIT University, Colombia
前田 昌弘京都大学大学院工学研究科
CARRION, AndreaNational Institute for Higher Education, Ecuador
雨宮 知彦R/Urban Design Office
福永 真弓東京大学大学院新領域創成科学研究科
SAKAY, Claudia東京大学大学院新領域創成科学研究科
GOMEZ, JulianaUrbam, EAFIT University, Colombia
AUN, SilviaIPVU, Neuquén Province, Argentina
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