空間はどう生かされるか

―場所と自然とグローバルな相互依存性をめぐるトランスディシプリナリー研究―
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研究プロジェクトについて

ヒトと自然の分離がもたらす地球環境問題は、経済的には特に生産と消費の分離であり、その背景には、巨大な人口集積地域の形成や高齢化社会の諸問題、人口減少における過疎化、生態系の激変があります。地域を限定した近世近代環境史研究を基軸に据え、将来世代への倫理的責任を果たすことができるような方法論を確立し、ヒト・自然・地域ネットワークを再構築します。

なぜこの研究をするのか

図1

図1

写真1 インド・メガラヤ州チェラプンジの定期市(研究対象地の一つ:2016 年11 月8 日村山撮影)

写真1 インド・メガラヤ州チェラプンジの定期市
(研究対象地の一つ:2016年11月8日村山撮影)

将来環境への倫理的責任を果たすために多次元ネイマック(=NaMAC)スパイラル(図1)を確立し、前近代を起点に現在の地域・地球環境を考え、将来を展望し、地域課題を解決したいと考えています。前近代つまり近世から近代への移行を地域環境史研究と数理地理モデリングに基づき詳述・解析し、地域社会と世界の持続性に関して将来に向けた新たな可能性と方向性を示し、実践的なアクションリサーチに結びつけることが必要です。

前近代の日欧比較研究を基軸にする理由は5つあります。第1に日本とヨーロッパは、世界でただ2 カ所、「近世」を経験しており、第2に両者は世界標準となる「一つの近代経済」を生みだしたからです。第3に、世界の他の多くの地域は植民地化されたか、グローバル経済に取り込まれ、短縮化された前近代のみを経験することになりました。第4 に、Living Spaces(どこにすむ?空間はどう生かされるか)としては、ヨーロッパは近世を残し、日本は近世を捨て去るという全く異なる道を歩みました。そして最後に、多次元ネイマック・スパイラルに基づくこの日欧比較研究の成果は、アジア諸国その他の国々の将来にとって、構造化された有効な情報になりうると考えるからです。

これからやりたいこと

ヒトと自然の地域環境を理解・予測し改善するための方法を多次元ネイマック・スパイラルと呼んでいます。これ自体が「環境知」の断絶を克服する研究方法です。たとえば、人口減少による過疎化あるいは労働移民による地域の空洞化などの明確な地域課題を前提に、まずは、ナラティヴアプローチ(=Na)として、地域課題に関連した地域「環境史誌」としての情報収集を進め、地域に関連する歴史資料分析あるいはオーラルヒストリーから抽出された物語的資料ならびに数量的データさらには既存の関連する歴史・地域・科学のデータベースを活用し、情報の構造化を進めます。

数学・ネットワーク科学・地理情報システムの手法を駆使し、隠れたつながりを解きほぐします(数理地理モデリング=M)。ここから得られた地域課題に関する構造化された情報群に基づき、地域住民と研究者によるメンタルモデルや共有可能な指針の抽出に基づき地域の課題解決をめざすアクションリサーチ(=A)を実行します。このアクションリサーチは地域環境の価値共創を生み出しますが、そのプロジェクトから排除される人々や自然も浮かび上がってきます。住民の選択は本当に正しかったのか、本当に住民は地域課題の解決のための方法が取捨選択できたのか。改めて住民目線によるナラティヴ(物語と課題)の見直しが不可欠となります(ナラティヴチェック=C)。このネイマックは螺旋的多次元サイクル構造をしており、これを維持・改善し、普遍性を有した地域間の情報交流を可能にし、よりよい課題解決を実現したいと考えています。

メンバー

FS責任者

氏名所属
村山  聡香川大学教育学部/International Consortium for Earth and Development Sciences(ICEDS)

主なメンバー

氏名所属
寺尾  徹香川大学教育学部・ICEDS
中村 博子香川大学教育学部・ICEDS
青木 高明香川大学教育学部・ICEDS
三宅 岳史香川大学教育学部・ICEDS
原  直行香川大学経済学部・ICEDS
山田 道夫京都大学数理解析研究所
青柳富誌生京都大学大学院情報学研究科
藤原 直哉東京大学生産技術研究所
和田 崇之長崎大学熱帯医学研究所
中垣 俊之北海道大学電子科学研究所
溝口 常俊名古屋大学大学院環境学研究科
東   昇京都府立大学文学部
奥貫 圭一名古屋大学大学院環境学研究科
服部亜由未愛知県立大学日本文化学部
中村  治大阪府立大学人間社会システム科学研究科
瀬戸口明久京都大学人文科学研究所
青木 聡子名古屋大学大学院環境学研究科
藤原 辰史京都大学人文科学研究所
竹本 太郎東京農工大学大学院農学研究院
渡邊 裕一福岡大学人文学部
島西 智輝東洋大学経済学部
野間万里子日本学術振興会
小塩 海平東京農業大学国際食料情報学部
上杉 和央京都府立大学文学部
渡辺 和之阪南大学国際観光学部
田中 丈裕NPO法人里海づくり研究会議
速水 淑子慶應義塾大学法学部
高山 博好NPO法人びすた~り
黒須 里美麗澤大学外国語学部
藤本 延啓熊本学園大学社会福祉学部
橘  健一立命館大学産業社会学部
土屋  純宮城学院女子大学現代ビジネス学部
中島  満大県立広島大学経営情報学部経営学科
神田さやこ慶應義塾大学経済学部
浅田 晴久奈良女子大学研究院人文科学系
湯澤 規子筑波大学生命環境系
KHAN, Sayeedul Islamグラム・バングラ(バングラデシュ)
GLASER, Rüdigerフライブルク大学自然地理学研究所(ドイツ)
MATHIEU, Jonルツェルン大学歴史学部(スイス)
ALFANI, Guidoボッコーニ大学政策科学部(イタリア)
MOCARELLI, Lucaミラノ・ビコッカ大学経済学部(イタリア)
GRULICH, Josef南ボヘミア大学歴史学部(チェコ)
MUIR, Cameronオーストラリア国立博物館
PANJEK, Aleksanderプリモルシュカ大学人文学部(スロベニア)
BAO, Maohong北京大学歴史学部(中国)
KNEITZ, Agnes人民大学歴史学部(中国)
VADDHANAPHUTI, Chayanチェンマイ大学(タイ)・社会科学と持続的発展のための地域センター
CAJEE, Laitpharlangノースイースタンヒル大学地理学部(インド)
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