プロジェクトの5年間の成果として、以下の7つを提示することができます。
まず、①「人類社会のサステナビリティから見たメガ都市のあるべき姿の原則」を私たちは提示しました。つまり、都市からの地球環境負荷が「地球の限界(Planetary Boundary)」を越えないことです(都市の制約条件)。そして、それを可能にするためには、都市が持つ経済的・社会的な可能性を最大化する方向に人類を突き動かすことです(都市の最大化条件)。その際、地球環境、社会、経済という3項目を同時に追求することが重要です(トリプルベネフィット)。
そして、メガ都市のあるべき姿の評価方法として、②「都市の持続性評価指標(CSI: City Sustainability Index)」を開発し、18のメガ都市を評価しました。その結果、どのメガ都市も現時点ではサステナブルでないことがわかりました(写真)。それに対して、私たちは、メガ都市のあるべき姿を達成するためのアプローチとして、③「長期的ビジョンを持ったラディカル・インクリメンタリズム(漸変主義)」という基本的な考え方を提示しました。メガ都市は極めて巨大で複雑です。全体の最適解を見つけることは現時点では不可能なため、 A.人類のサステナビリティを追求するという長期的ビジョンを持ちながら、B.都市の歴史を重視しつつ、C.実行可能な選択肢のなかから近視眼的にローカルで最適な行動を繰り返し選択し続ける(漸変主義)、という考え方です。
同様に、メガ都市の複雑性、巨大性に立ち向かっていくためには、多様な専門性、多様なステークホルダー(利害関係者)との協働を通じて都市のあるべき姿を検討する必要があります。このCo-designの手法として、私たちは、④「メガ都市・シナリオベース・アプローチ」を提案しました。また、メガ都市のあるべき姿を実現するための前提として、⑤「地域生態圏」を考慮しつつ、都市の地理的特性・歴史的経緯をふまえることの重要性を提示しました。それぞれのメガ都市は、モンスーンアジア地域生態圏、中緯度乾燥地域生態圏などの気候帯、生業、大地などに影響を受け、さらに時間軸で発生した出来事に良くも悪くも拘束されているということです。
そして、メガ都市のあるべき姿を実現するためには、私たち人類が生きている最も重要な場である、⑥「居住環境」に着目すべきであることを提示しました。プロジェクトでは、特に、トリプルベネフィットの社会の項目に着目した、インクルーシブ・アーバニズム・アプローチという方法、また、環境と社会に着目した、エコ・アーバニズム・アプローチという方法の居住環境への介入方法を提示しました。さらに、メガ都市のあるべき姿を実現するためには、⑦中間層の経済発展にも着目すべきであることを提示しました。これは、トリプルベネフィットの経済項目への着目であり、経済的な豊かさを感じることによって、初めて人間は、人類社会のサステナビリティに配慮するという考え方に基づいています。