林 健太郎

総合地球環境学研究所教授

担当

人・社会・自然をつないでめぐる窒素の持続可能な利用に向けて

役職・肩書

総合地球環境学研究所教授

専門分野

生物地球化学,土壌学

経歴

北海道大学にて工学修士、東京農工大学にて博士(農学)取得。パシフィックコンサルタンツ、産業技術総合研究所を経て、農業環境技術研究所(現・農研機構)。生き物たちがあるがままでいられることを願い、生物地球化学、土壌学、大気科学を専門としつつ、文理・分野を問わず広い関心を有しています。窒素の環境動態の解明に始まった研究が、持続可能な窒素利用に資する学際・超学際知として結実することを目指しています。

Q&A

地球研ではどんな研究をしていますか?
肥料や原料として有益な「窒素」という物質を持続可能に利用するための学際・超学際的な知見を培うとともに、将来世代の持続可能な窒素利用を実現する社会の姿をデザインする研究に取り組んでいます。窒素はタンパク質や核酸塩基などの生体分子の形成に必須の元素です。窒素そのものは大気の78%を占めるどこにでもある物質ですが、この窒素——窒素ガス(N2)——は安定で、一部の微生物を除く生物には利用できません。20世紀初期に実現した技術により、人類はN2からアンモニアを望むだけ合成できるようになりました。アンモニアは他の反応性窒素——窒素ガス以外の窒素化合物(Nr)——にも加工して利用されます。肥料は食料生産を大きく伸ばし、原料は様々な製品をもたらします。近年はアンモニアの燃料用途も注目されています。ところが、我々の窒素利用は環境への大量のNrの排出を伴います。その結果、地球温暖化、成層圏オゾン破壊、大気汚染、水質汚染、富栄養化、酸性化といった様々な環境影響が生じ、人の健康と自然の健全性に被害を及ぼしています。持続可能な窒素利用の実現には、自然と社会の窒素循環とその環境影響の解明に加えて、環境負荷を抑えて公平な窒素利用を実現する仕組みを作っていく必要があります。目標達成に向けて、幅広い分野のメンバーと協働して研究に取り組んでいます。
地球研で研究したい人に向けてのメッセージは?
地球研の重要な特徴は、文理・分野を問わず多様な専門家が一緒に研究に取り組める仕組みを有していることです。地球環境問題と総称される課題のいずれにも、自然と社会と文化が複雑に絡んで影響し合っています。課題の解決には、専門家の個々人が自らの研究を深めるとともに、その知恵を持ち寄って創っていく新たな統合知が求められます。地球環境問題の解決に貢献したい、という気持ちはとても貴重です。その気持ちをどうか大切にしてください。まずは、ご自身の拠り所となる専門分野を作り上げることを強くお薦めします。その上で、近しい分野の方から、遠い分野の方まで、多くの方々の取り組みを見聞きするとともに、その方々と意見交換する機会を多く設けてみましょう。そこには新しい発見があり、共同研究が生まれることもあるでしょう。時には衝突があるかも知れません。しかし、衝突からブレイクスルーが芽吹くこともあります。地球環境問題の諸課題の解決という大きな目標に辿り着くには、学際・超学際の協働が必要です。持続可能な食・モノ・エネルギー利用にご関心のある方は是非ご連絡をください。一緒にお話しいたしましょう。

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