新城 竜一

総合地球環境学研究所教授/琉球大学理学部教授

担当

陸と海をつなぐ水循環を軸としたマルチリソースの順応的ガバナンス:サンゴ礁島嶼系での展開

役職・肩書

総合地球環境学研究所教授/琉球大学理学部教授

専門分野

地球科学
地質学
岩石鉱物学

経歴

1992年に琉球大学理学部で研究職に就き2007年には同大学の教授。専門は地球科学、地質学、岩石鉱物学。目にみえない同位体から壮大な地球の営みを探る同位体地球化学に魅了され、レーザー装置を含む質量分析システムを構築し、各種の同位体をトレーサーとした研究を展開。海底熱水活動、沈み込み帯やホットスポット火山など、深海からアフリカ大陸、ヒマラヤまで守備範囲を拡げてきた。

Q&A

地球研ではどんな研究をしていますか?
熱帯〜亜熱帯にかけて分布しているサンゴ礁島嶼では、水は大変貴重で人々は地下水や湧き水といった限られた水資源を工夫しながら大切に利用してきました。島嶼では陸と海をつなぐ水循環のスケールが小さく、サンゴ礁生態系もこの水循環を介して陸と密接に関係しています。このようなサンゴ礁島嶼系では、地域固有の生物や文化の多様性も育まれてきました。しかし近年、土地利用や社会経済の変化の影響を受けて、島嶼の水資源の枯渇や水質の悪化が生じており、水循環を介してサンゴ礁生態系の劣化の要因にもなっています。さらに地球規模の気候変動に伴う降水パターンの変化や海面上昇、海洋酸性化や海水温の上昇も状況の悪化に拍車をかけています。サンゴ礁島嶼に住む人々が脆弱性の高い水資源や水産資源、森林資源などの島嶼の限られた自然資源(マルチリソース)を持続的に利用していくためには、気候変動や社会経済の変化に対応可能な順応的ガバナンスの強化が必要です。そこで、自然・社会・人文科学など多様な研究背景をもつ研究者と一緒に、西太平洋の琉球・パラオ・インドネシア諸島の人々と対話・協働しながら、地域の課題に多面的にアプローチすることを意識して様々な研究に取り組んでいます。科学知や在来知を融合させて、知の共有・橋渡しをどう実現するのか、ワクワクするチャレンジです。
地球研で研究したい人に向けてのメッセージは?
まず地球研にきて驚いたことは、地球環境問題の解決へ向けた科学的な基礎データを得るための最先端・最新鋭の分析システムが充実していることです。また、設立から20年の実績によって地球研と関係した人たちのネットワークも国内外に着実に拡がっており、対話や議論・セミナーの機会も多くあります。このように地球研はローカルからグローバル、さらに多様な専門的・統合的な視点で地球環境問題を考えるには最適な環境だと思います。地球環境問題は複雑な要素が絡み合って、その課題解決は簡単ではありません。しかし私たちは地球の構成員の一人として、次世代へ豊かな自然環境や自然資源、多様な文化をつなげていく責務があります。そこでは多様性がキーワードになると思います。自分の専門分野を極めつつ、異分野や社会へのネットワークも広げ、広い視野で地球環境問題の課題解決に貢献したいと考えている人に来てほしいですね。

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