実践プログラム

土地利用革新のための知の集約プログラム

多元世界プロジェクト

プロジェクト概要

人間中心的な自然利用は生物多様性の危機を招いています。この研究はIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が提示した「自然として生きる」という世界観に注目し、その日本社会での実践可能性を、土地利用制度の観点から探ります。具体的には、オルタナティブな農林業の検証、多様な自然利用の可視化のためのデジタルツール開発、ヨーロッパの政策を調査して日本の社会変革に生かす取り組みを行います

なぜこの研究をするのか

私たちの地球は生物多様性の危機に直面しています。その原因の一つは、人間が自然を利用する際に自分たちの利益だけを考える「人間中心的な自然利用」です。しかし、このやり方では自然のバランスが崩れ、多くの生物が影響を受けてしまいます。

持続可能な未来に向け新しいアプローチが必要ですが、私たちはIPBESが示した「自然として生きる」という世界観に着目しました。これは、人間は自然の一部分であると考える視点ですが、私たちのチームは、これまでにローカルなコミュニティの自然の利用や農林業を調査した経験から、現在の日本社会において「自然として生きる」を実践している人々がいると確信しています。つまり、「自然として生きる」は充分に実現可能な考え方なのです。

この考え方では、土地の利用に関して、人間だけでなく他の生きものや自然の存在を考慮に入れますが、ではそのとき、どのような土地利用が最も望ましいのでしょうか。その問いをもって研究を行うことで、私たちは「自然として生きる」実践を増やすための道筋を見つけることを目指しています。

図1:IPBES価値評価報告書が示す多様な価値の類型

研究の進捗状況

これからやりたいこと

以下の3つに取り組みたいと考えています。

1. オルタナティブな農林業の試みの検証

近代農学では、生産性向上のために栽培対象である生きもの以外を排除してきましたが、最近の農林業では、その他の生きものも増やす取り組みが増えています。私たちはこれらの取り組みを詳しく調査し、その動機や価値観、土地利用上の工夫を明らかにします。取り組む人々との対話を通じて、彼らの経験や知見を共有し、新たな土地利用の方向性を探ります。

2.多様な自然利用の可視化を促進するデジタルツールの開発

身近な自然空間では、異なる人々がそれぞれの目的や思いを持って利用しています。私たちは、この多様な自然利用を可視化し、交流や協議を促進できるデジタルツールの開発に取り組みます。これにより、地域コミュニティがより意見を共有し合い、持続可能な土地利用に向けて議論を深めることができるでしょう。

3. ヨーロッパの事例調査を通じた比較対象の構築

EUの農業政策は、生物多様性保全と農業振興の両立に取り組んできたことが知られています。 私たちは、ヨーロッパの政策や実践を調査し、そこから得られる知見を日本の社会変革に向けた比較対象としたいと考えています。

これらを通じて、私たちはより持続可能な未来への一歩を踏み出すことを目指します。

写真1:魚のゆりかご水田(滋賀県)

メンバー

プロジェクトリーダー

田村 典江

総合地球環境学研究所 准教授/事業構想大学院大学 准教授

プロフィール紹介

主なメンバー

大元 鈴子 (鳥取大学地域学部)
鎌田 磨人 (徳島大学産業理工学部)
西川 芳昭 (龍谷大学)
マレー ハイン (京都府立大学文学部)
三木 敦朗 (信州大学農学部)
ルプレヒト クリストフ (愛媛大学社会共創学部)

外部評価委員による評価(英語)

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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