実践FS

地球人間システムの共創プログラム

シチズンサイエンスと熟議を基盤としたナラティブとサイエンスの統合・態度行動変容手法の確立:気候変動を題材として

プロジェクト概要

シチズンサイエンス(市民参加型モニタリング)により収集した気候変動の影響と思しき事象に係わる伝統知・地域知を、専門家や政策担当者らと熟議を行いながら科学的知見(専門知)とをナラティブ(物語)として統合していくことにより、データや事象への理解を深め、脱炭素社会・気候変動適応社会の構築に向けて人々の態度行動変容を促進し、気候変動政策へ反映することを目指しています。

なぜこの研究をするのか

気候変動の科学的知見はオープンデータとして提供されていますが、これらが政策立案に直ちに活用されたり、ステークホルダーや市民から理解が得られて脱炭素社会・気候変動適応社会の構築に向けた態度行動変容につながったりするのは困難と見込まれます。態度行動変容に至るためには、科学的知見(専門知)に加えて、気候変動の影響と思しき事象について市民が自ら発見、創出する地域知・伝統知が肝要と考えられます。そして、地域知・伝統知と専門知とを統合した地域の気候や環境変化の記録と予測を、専門家、政策担当者やステークホルダー、市民とともに構築、解釈(リフレーミング)してナラティブ(物語)として生成し、このような複数のエビデンスに基づいて地域の政策が立案されていくEBPM(Evidence-Based Policy Making)の実現を目指すことが重要となるでしょう。地域知・伝統知の収集については、シチズンサイエンス(市民参加型モニタリング)が有力な手法として挙げられます。気候変動の文脈では、身近な生物や植物の生息分布の観察、気温や降雨状況等の観察、水・土砂災害の発生状況の監視、農作物の観察、季節を感じる生活上の気づきの報告等が世界各地で実践されていますが、日本国内ではまだ十分に実施されていない状況です。そこでこの研究は、これまでに開発したオンライン上のシチズンサイエンスプラットフォームに、各地の市民らが収集した伝統知・地域知を共有していき、専門家や政策担当者らとオフライン・オンラインで熟議を行いながら専門知と統合しやすくなる熟議システムを拡張し、データや事象への理解を深め、脱炭素社会・気候変動適応社会の構築に向けて人々の態度行動変容を促進する手法を確立し、その手法や結果を気候変動政策の立案プロセスや内容へ反映することを目指します。

写真1:C3S-PaaS (Climate Change Citizen Science PaaS) のウェブGIS登録画面

研究の進捗状況

これからやりたいこと

FSの段階では、まず、気候変動の影響と思しき事象として市民がモニタリングすることが有効と考えられる分野や指標、方法などを明らかにします。次に、茨城、滋賀等の国内サイトにおいて
地域知・伝統知(史料の有無やシチズンサイエンティストの存在等)の収集可能性を探ります。さらに、オンライン熟議プラットフォームの設計方針を検討します。国外における気候変動を題材としたシチズンサイエンスの関係者を中心に国際共同研究を行う体制を構築します。気候変動を巡るナラティブが没入効果や態度行動変容を促すメカニズムについて検討します。

図1:伝統知・地域知・専門知のナラティブとしての統合と態度行動変容の可能

メンバー

FS責任者

馬場 健司

東京都市大学環境学部・教授

主なメンバー

青木 一益 (富山大学 学術研究部 社会科学系)
石川 洋一 (海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門 地球情報科学技術センター)
一原 雅子(総合地球環境学研究所)
一方井 祐子 (金沢大学 人間社会研究域 地域創造学系)
尾崎 平 (関西大学 環境都市工学部 都市システム工学科)
鎌谷 かおる (立命館大学 食マネジメント学部)
木村 道徳 (滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)
古崎 晃司 (大阪電気通信大学 情報通信工学部 情報工学科)
小杉 素子 (静岡大学 学術院 工学領域)
竹内 和宏 (大阪電気通信大学 情報通信工学部 情報工学科)
田村 誠 (茨城大学 地球・地域環境共創機構)
西村 慎太郎 (国文学研究資料館 研究部)
松浦 正浩 (明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科)

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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