
2024年度終了プロジェクト
Aakashプロジェクト
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大気浄化、公衆衛生および持続可能な農業を目指す学際研究:北インドの藁焼きの事例
プロジェクト概要
北インドに位置するパンジャーブ地方では、稲の収穫後に多くの稲藁を焼却するため、大気中に大量の汚染物質が放出されます。その影響はデリーにまで及んでいることが指摘されています。このプロジェクトでは、大気浄化と健康被害改善に向け、パンジャーブ地方における持続可能な農業への転換のために、人びとの行動を変えるためにはどうしたらよいか、その道筋を探求しました。
研究成果の概要
インド北西部での稲わら焼きが、気象状況によってはデリーの大気汚染にかなりの影響をもたらすことがわかりました。一方で、観測の結果から、パンジャーブ州でも11月に数週間にわたってPM2.5濃度が300μg m-3を超えたことは大きな驚きでした(図1)。私たちは、一般的な方法で高濃度のPM2.5が人の健康と経済に与えるコストも見積もりました。現地での聞き取り調査と圃場実験に基づき社会経済モデルを開発し、政府の農業残渣焼却ゼロ政策に従わない農家の条件を分析しました。小規模農家は、生育期間が長く収量と稲わらが多く生じる品種を栽培することを選択し、新しい農業機械を利用することが困難なためわらを焼きます。私たちは、作物多様化、稲わらの管理、大気汚染のモニタリングなど、持続可能な方法による具体的な解決策を示しました。プロジェクト期間は大気質改善をめざすインドの国家的な動きと一致したため、私たちの成果が速やかに応用されました。私たちの観測によって、農業地域でも人々が高濃度のPM2.5にさらされていることが初めて示され、市民や政策立案者にきれいな空気のために行動するよう説得するのに役立ちました。
図1:衛星観測による地上火災検知数(上図左から2022-2024年)は減少していますが、Aakashで開発した小型大気汚染物質観測装置(CUPI-G)によるPM2.5の観測値(下図、実線)は、パンジャーブ州(下左)でもデリー首都圏(下右)でも上昇傾向にあります。
私たちの考える地球環境学
地球環境問題は多岐にわたり、その多くは地球上の人間活動によって深刻化しています。インドでは、デリー首都圏の大気汚染の原因として、パンジャーブ地域の稲わら焼きが注目されました。わら焼きによって多くの粒子状・気体状の大気汚染物質が大気中に放出され、国境を越えて遠くまで運ばれることはよく知られています。何億もの人口を養うために、過去数十年でこの地域では土地集約的な農業が発展しました。そのいびつな農業が、農業残渣を焼却する原因になっています。このように、持続可能でないことを知りつつ管理しないと、限られた地域のローカルスケールの人間活動が地球規模の問題を引き起こすことになりかねません。私たちは変化の激しい世界で、頻繁に起きる新しい環境問題に直面しています。社会の負担を最小限にするためには、監視の強化と迅速な対応、長期的なモニタリングが必要です。
新たなつながり
私たちは(1)大気質早期警報システム(AQ-EWS)に必要な広範囲高密度の大気汚染データ提供(2)農業残渣を農家の利益になるよう産業利用するインフラ整備(3)多様化で生産した産品を加工・販売するためのサプライチェーンの確立など、新たなつながりを作ろうとしています。衛星による火災検知の精度は十分でなくPM2.5の観測値の変動と対応しない(図1)ため、火災検知の見積もりを改良してAQ-EWSを支援する新しい研究を始めています。作物多様化とバイオ炭の導入を二国間クレジット事業の枠組みで進めようと、日本とインドの研究者ネットワークを構築しています。インドの研究者は大気汚染による健康影響や経済負担の正確な評価にも強い関心を示しています。
活動ニュース
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プロジェクトリーダー
PATRA, Prabir K.
外部評価委員による評価(英語)
研究スケジュール
2018年度 (平成30) |
2019年度 (令和1) |
2020年度 (令和2) |
2021年度 (令和3) |
2022年度 (令和4) |
2023年度 (令和5) |
2024年度 (令和6) |
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FS | FS/PR | FR1 | FR2 | FR3 | FR4 | FR5 |