
実践プログラム
環境文化創成プログラム
Fashloksプロジェクト
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地域知と科学との対話による公正で持続的な狩猟マネジメント
プロジェクト概要
世界の熱帯雨林では過剰な狩猟による野生動物の減少が懸念され、対策として強硬な保全政策が進められています。しかし、それが地域住民の狩猟文化をも脅かしています。この「野生肉危機」を解決するには、地域知と科学の対等な対話にもとづく地域住民と保全機関の協力が不可欠です。私たちは「共同製作研究」を通じ、地域主導の持続的狩猟管理システムを構築します。
なぜこの研究をするのか
ダイカーやイノシシ、サル、ワニといった熱帯雨林の野生動物は、食物連鎖や種子散布などを通じて豊かな生物多様性を支えています。一方で、かれらは森に暮らす人々に貴重なタンパク質や現金収入をもたらし、地域固有の社会規範や世界観の発達を助けてきた文化多様性の源でもあります。そして、野生動物と人々を結び付けてきたのが、狩猟という生業です。
しかし、20世紀に入ると熱帯雨林地域の狩猟圧が急速に高まり、野生動物の大幅な減少が報告されるようになりました。この問題は「野生肉危機 (wild meat crisis)」として国際的に注目され、保護区の設置や厳しい狩猟制限などトップダウン式の保全策が進みました。その結果、地域住民の自給的な狩猟活動までが制限され、保全機関と住民の間に軋轢が生じています。
野生肉危機は、グローバルな価値(野生動物保全)とローカルな価値(狩猟文化の存続)との摩擦を背景に持つ地球環境問題の典型例であり、さらにその根底には、科学的な生態学と地域知との間の相互不理解があります。生態学と地域知は実践場面における共通点は多いものの、根本的な志向性に違いがあり、一方にのみ基づく手法や意思決定は、他方からは公正で持続的とは見なされません。野生肉危機の真の解決には、科学と地域知の相互理解を深め、自給的狩猟を積極的に組み込んだ地域主体の野生動物マネジメントが不可欠です。
プロジェクトの目的
Fashloksプロジェクトでは、世界3大熱帯雨林の5サイトにおいて、公正で持続的な野生動物モニタリング法と狩猟マネジメントの構築を目指します。そのために、研究者と地域住民が対等な立場で調査を立案、実施、評価する「共同製作研究 (coproduction research)」アプローチを採用します。
生態学者らによる科学的手法と、熟練狩猟者が持つ地域知に基づく手法を協力して検証し、両者の知識を合わせた野生動物モニタリング法を提案します。また、すべてのステークホルダーが対等にマネジメントの意思決定に関与するプラットフォームを、主要サイトであるカメルーンとコロンビアに構築します。さらに、各サイトでの研究プロセスを記述し比較することで、地球環境問題における共同製作アプローチの有効性を検証します。
研究の進捗状況
これまでにわかったこと
プレ・リサーチ期間である2024年度には、各サイトでの研究活動の基盤を確立しました。具体的には、各サイトへの渡航を通じて、野生動物相と住民生活に関する予備調査、地域住民に対するプロジェクト活動の説明と承認の取得、現地研究機関と地球研との合意書(MoU)の締結、日本および現地の研究者メンバーの増強を行いました。フル・リサーチに向けて、研究者と地域住民の共同製作研究の準備が整っています。
特筆すべき事項
予備調査を通じて、科学的保全と地域文化の関係にはサイトごとの違いがあることが明らかになりました。同じ熱帯雨林地域でも、科学的保全が地域文化に対して優位にあるサイト(カメルーン、ガボン)、反対に地域文化が科学的保全に対して優位にあるサイト(コロンビア、コンゴ民)、そして科学的保全と地域文化の間に相互不信が生じ関係が希薄になっているサイト(ボルネオ)があります。したがって、各サイトでの研究活動を記述・比較することで、異なる条件下での共同製作アプローチの有効性と課題を検証することが可能となります。
活動ニュース
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メンバー
プロジェクトリーダー
本郷 峻
総合地球環境学研究所 准教授 / 京都大学白眉センター/アジア・アフリカ地域研究研究科 特定講師
サブリーダー
徳山 奈帆子(中央大学理工学部)
研究員
橋詰 茜 研究員
半沢 真帆 研究員
関野 文子 研究員
弘島 由紀子 研究推進員
主なメンバー
安岡 宏和 京都大学 アジア・アフリカ地域研究研究科
VAN VLIET, Nathalie 国際林業研究センター (CIFOR)
中林 雅 広島大学 大学院統合生命科学研究科
松浦 直毅 椙山女学園大学 人間関係学部
中島 啓裕 日本大学 生物資源科学部
外部評価委員による評価(英語)
研究スケジュール
2023年度 (令和5) |
2024年度 (令和6) |
2025年度 (令和7) |
2026年度 (令和8) |
2027年度 (令和9) |
2028年度 (令和10) |
2029年度 (令和11) |
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