アース・オーバーシュート・デーの遅れは、限りある地球と調和した未来を築く絶好の機会となる。

2020年8月17日

人類のエコロジカル・フットプリントは新型コロナウイルスの蔓延により縮小し、結果、アース・オーバーシュート・デーは3週間以上も押し戻された。これから各国は、経済を再開させるという挑戦の中に、望む未来に向かうためのチャンスも持ち合わせている。

【米国カリフォルニア州オークランド-2020年8月17日】8月22日までに人類による自然資源の消費が、地球が持つ一年分の資源再生量を超過する(オーバーシュート)と、グローバル・フットプリント・ネットワークは発表した。世界のエコロジカル・フットプリントは、コロナウイルスによる都市封鎖の影響で10%程縮小したが、依然として、多くの生態系資源を使用しており、その規模は、まだ地球1.6個分の資源に匹敵する。公衆衛生と経済の回復が世界的な関心事ではあるが、前例のない現在の混乱の中、地球の一個分の恵みの中で生き抜くための行動(地球一個分の繁栄)も、政策決定者には求められている。

「持続可能性を高めるためには、生態系のバランスと人々の幸福の両方を長期間にわたり実現していくことが要求される。したがって、今年、エコロジカル・フットプリントが突然縮小したことを発展したと取り違えてはいけない」と、グローバル・フットプリント・ネットワーク最高経営責任者であるローレル・ハンスコム氏は述べる。 「今年はこれまで以上に、すべての分野のレジリエンスを高める戦略の重要性を、アース・オーバーシュート・デーを通して訴えていきたい」

コミュニティーや個人レベルでできる、将来の社会に大きな影響を及ぼす解決策は、すでに多く存在している。たとえば、どのように食べ物を作るか、どのように移動するか、どのように電力を生産すべきか、何人の子供を産むのか、野生生物のためにどれだけの土地を保護すべきか、などの日々のひとつひとつの意思決定である。二酸化炭素吸収地(カーボン・フットプリント)を50%削減すれば、アース・オーバーシュート・デーを93日改善することができる。

現在の食品流通システムは、地球のバイオキャパシティの50%を使用している。そこで、「何を食べるか」が、とても重要になってくる。グローバル・フットプリント・ネットワークとバリラセンター(Barilla Center for Food and Nutrition)の共同研究が主張しているように、公衆衛生を改善させながら、食料生産時に排出される二酸化炭素と生物多様性への影響を緩和させる政策が、特に重要になってくる。フードロスを半分に減らすだけで、アース・オーバーシュート・デーを13日改善することができる。

気候変動と資源制約により急激に変化する世界情勢に備えるために、Overshootday.orgでは、同ウェブ上で、「生活スタイルの選択肢」に関する詳しい説明や、それぞれの進展度合いを測定できる「個人診断クイズ」などを提供している。また、持続可能性を効果的に向上させるための企業、政府、コミュニティ、および個人による継続的な取り組みも、クラウドソーシングによってやり取り可能な「#MoveTheDateソリューションマップ」から閲覧することができる。

スコットランドのCOP26気候会議は延期となったが、それを踏まえ、スコットランド環境保護庁(SEPA)、グラスゴー大学、グローバル・フットプリント・ネットワークは、8月20日にグラスゴーでアース・オーバーシュート・デーを迎えることを発表した。ライブ・ストリーミング・イベントでは 、SEPAの「地球一個分の繁栄のための規制アプローチ」に基づきながら、スコットランド、英国、および世界中の民間や公共部門のリーダー達を紹介していく予定だ。

概して、限りある自然資源の中で繁栄していくことは、今や重要なビジネス戦略となっている。シュナイダー・エレクトリック社とグローバル・フットプリント・ネットワークは、国連の人間開発指数とエコロジカル・フットプリントで作成した散布図を用いながら、「地球一個分の繁栄」の概念が、長期的な成功を実現するために大切なフレームワークになると、共同で作成したE-ブック「Strategies for one-planet prosperity」で主張している。

企業だけでなく国や都市のレジリエンスの度合いは、自然資源の健全なマネージメントに依存する。例えば、2019年にオーストラリア起きた大規模な森林火災のために、同国のバイオキャパシティーはほぼ半分にまで減少した。これにより、記録された歴史の中で初めてオーストラリア は生物学的な赤字の状態(自国のエコロジカル・フットプリントが、自国のバイオキャパシティを超過する状態)に陥った。対照的に、スコットランドでは、積極的な脱炭素化戦略とバイオキャパシティー資産に極めて重点をおいた活動により、長期にわたる生物学的赤字の状態から、もう少しで抜け出そうとしている。

世界的なオーバーシュートは1970年代初頭に始まった。現在、その累積的な生態学的負債は地球18個分に相当する。過剰消費が完全に可逆的であると仮定すれば、自然資源の「使いすぎ」によるダメージを元の状態に戻すために、地球の再生力をフルに活用して18年もかかることになる。しかし「ソリューション」は、地球の資源の持続的な範囲内で暮らすことが可能であることが示唆している。実際、アース・オーバーシュート・デーの日付を毎年5日間ずつ改善していけば、人類は2050年までに、この目標を達成できる(#MoveTheDate)

関連リンク

関連リンク(日本関連)

エコロジカル・フットプリントについて

エコロジカル・フットプリントは、最も包括的に生物資源を算定できる指標である。これは生物学的に生産可能な土地面積をすべて足し合わすことで得られ、食料、木材、繊維の生産や、二酸化炭素の吸収、居住地の確保に必要な土地面積等が幅広く網羅されている。近年、世界のエコロジカル・フットプリントの60%近くが、二酸化炭素吸収地に由来するものである。

アース・オーバーシュート・デー2020について

  • 1月1日からアース・オーバーシュート・デーまでのエコロジカル・フットプリントは、コロナウイルスによる都市封鎖の影響で昨年と比べ9.3%ほど減少した。その結果、2020年は、昨年より遅い日アース・オーバーシュート・デーとなった。これまで長期的に増加し続けていたエコロジカル・フットプリントが減少する今回の歴史的転換の背景には、木材需要の減少と二酸化炭素排出量の縮小が主な要因として挙げられる。それによって森林地が8%、二酸化炭素吸収地が14.5%減少した。
  • 人類は今、地球が再生できる資源よりも60%多大に消費する。いわば、地球が1.6個あるかのように暮らしているのである。アース・オーバーシュート・デーの日から年末までの期間は、生物学的赤字の増加を意味する。国別フットプリント・バイオキャパシティ勘定(NFA)によると、1970年代初頭に世界がオーバーシュートに陥って以来、生物学的赤字は常に増え続けている。尚、NFAは、国連の統計データをもとに1各国1年あたり約15,000データポイントを用いて算定されたものである。
  • アース・オーバーシュート・デーは、国別フットプリント・バイオキャパシティ勘定(NFA)をもとに算出される。NFA自体は、現在、ヨーク大学(カナダ・トロント)によって維持および更新されている。全体的な管理はフットプリント・データ基金(Footprint Data Foundation)によって行われる。

グローバル・フットプリント・ネットワークについて

グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)は、自然資源を有効に管理し気候変動によりよい対策がなされるように活動 する国際的な研究機関である。地球の許容範囲内で繁栄する未 来を創造していくために、2003年以降、60ヵ国以上、40カ所の都市、そして世界中の70のパートナー団体とともに、政策や投資決定に強い影響をもたらす科学的知見を提供し続けている。

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