平成28年9月24日、名古屋市で開催された日本質的心理学会第13回全国大会において、菊地直樹准教授が、 菊地直樹准教授が、学会賞 優秀コミュニティ研究論文賞を受賞しました。本賞は『質的心理学研究』掲載論文の中から、主に「独創性」「質的心理学における価値」「当該専門領域における価値」「論文としての完成度」「今後の発展性」という基準によって選出された論文に授与されるものです。今回の受賞論文は、菊地直樹「方法としてのレジデント型研究」第14号(2015)です。
菊地准教授は、環境社会学をベースとして、兵庫県豊岡市にある「兵庫県立コウノトリの郷公園」の研究者として絶滅危惧種のコウノトリの野生復帰プロジェクトに参画してきました。地域住民へのインタビュー、サイエンスカフェによる市民への情報発信、湿地再生など、地域に馴染み、環境問題の解決に取り組んでいます。このように地域に暮らし、そこのステークホルダーとして、領域融合的な問題解決型研究を行う研究者をレジデント型研究者と呼んでいます。
本論文では地域住民との語りから、人々の鳥に対するかかわりや意味づけと呼称の関係性について明らかにしています。また、著者が研究者と地域住民といった複数の立場を有し、自分の研究に関して他者とのやりとりを通じて自己の研究方法を振り返っています。大都市部から離れた地域社会における数少ない研究者の有り様を記述した点等が貴重であると評価されました。
菊地准教授の所属する地球研のプロジェクト「地域環境知形成による新たなコモンズの創生と持続可能な管理」は、科学知と地域の人々の生活の中で培われた多様な知識が融合した「地域環境知」に注目し、それを活かした持続的な環境保全のあり方を探求しています。菊地准教授は、コウノトリを戻すという人間と自然の関係に関する具体的な取り組みから、地域環境知を創り直す意義を考え、研究活動を展開しています。

菊地直樹准教授(左)と名古屋市公式マスコットキャラクターはち丸(右)