小規模経済プロジェクト研究会

「ヒ素汚染土壌の植物を用いた汚染物質除去:成功例と今後の課題」

世界的に土壌汚染が深刻化する中、植物除染が新たな対応策として注目を集めています。日本でも、2011年の東日本大震災からひまわりによる植物除染が広く導入されてきました。小規模経済プロジェクトでは、土壌汚染の対応策のひとつとして、シダを使ったヒ素除去による土壌修復の研究に取り組んでいます。今回、その研究を進めている小規模経済プロジェクトメンバーでカリフォルニア大学バークレー校のSarick Matzen氏が講演を行います。シダに秘められた力とは?ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

日 時
2016年7月1日(金) 15:00 - 16:30(45mins talk and Q&A)
場 所
総合地球環境学研究所 セミナー室3・4(⇒アクセス
主 催
小規模経済プロジェクト
発表者
Sarick Matzen (University of California, Berkeley)
言 語
英語 (日本語逐次通訳あり)
要 旨

世界的に見ても、土壌は農業や採鉱によって発がん性物質であるヒ素で汚染されている。土壌汚染が危険値に達すると、慣行的な対策としては土壌を掘り返し取りかえるという方法しかなく、費用もかさむ上、資源を破壊的に利用する無駄の多い方法であった。その後、研究者たちにより、緑色植物を用いて、土壌を移動させることなく汚染土壌を修復するファイトレメディエーション(Phytoremediation)と呼ばれる技術が発見された。シダの一種であるモエジマシダ(Pteris vittata L.)は、土壌中のヒ素を根から吸収し、葉状体に輸送した後、そこで非常に高い濃度まで蓄積することが可能である。このため、時間はかかるものの、葉状体を刈り取れば、土壌のヒ素を除去することになる。ファイトレメディエーションによる土壌のヒ素除去は、期待のできる取り組みである一方、実際の環境下で利用するためには多くの課題が残っているのが現状である。ヒ素の除去にかかる時間が非常に長いというのがその一例である。

本研究では、モエジマシダを用いたファイトレメディエーションの効率化を図るため、土壌の性質などの固有特性や施肥などの土壌処理がシダのヒ素吸収にどのような影響を与えうるか、汚染物質除去の様々なスケールでの過程を理解するため、実験用フィールド、温室、ラボでの実験を進めている。その結果から、土壌の性質やヒ素濃度がシダのヒ素吸収に影響を与えることが明らかとなり、条件によっては非常に高い濃度までのヒ素吸収を確認できた。また、汚染物質除去に必要とされる期間は、約数十年の単位であると推定される。現在、シダによるヒ素除去後の土壌が再利用可能であるかを明らかにするため、ファイトレメディエーションにおける可給態ヒ素の有効性について研究を進めている。本講演では、土壌汚染物質であるヒ素について説明を行い、持続可能な新しい土壌修復方法を検討し、現在までの研究成果と今後の研究予定についての報告を行う。

お問い合わせ先
総合地球環境学研究所 小規模経済プロジェクト(研究室8) 小林
E-mail
TEL: 075-707-2373
  • Page Top
  1. HOME
  2. 成果発信
  3. その他イベント
  4. 小規模経済プロジェクト研究会「ヒ素汚染土壌の植物を用いた汚染物質除去:成功例と今後の課題」
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
総合地球環境学研究所

〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4

Tel.075-707-2100 (代表)  Fax.075-707-2106 (代表)

みんながわかるちきゅうけん