2017年8月4日、北海道大学にて、第19回地球研地域連携セミナー「『農』の再発見:世界のフィールドから見えてくること」を開催しました。
今回は、北海道大学国際食資源学院と共催し、北海道大学農学研究院のご協力をいただきました。
まず、井上京氏(北海道大学国際食資源学院学院長)による挨拶があり、今回のセミナーをとりまとめている船水尚行(北海道大学大学院農学研究院 特任教授・総合地球環境学研究所教授)が、2017年4月にスタートした国際食資源学院の教員21名の中の1人であり、5回めとなる今回のセミナーも大いに活気あるセミナーにしてほしいと述べました。続いて、安成哲三(総合地球環境学研究所所長)からは、食と農は地球環境問題に関する基礎的な問題であり、特にアジアとアフリカにおける食と農の問題を考えることは、持続可能性を考える意味でも非常に大切であると挨拶の中で語りました。
その後、船水教授の司会のもと、柏木淳一氏(北海道大学大学院農学研究院講師)が「ラオス北部山岳地帯の焼畑農民が直面している問題とその対策」と題して、ラオス北部の山岳地帯(ホワイエン村)において、土壌肥沃度の経年変化の調査をもとに、焼き畑による土壌侵食の要因の究明と、作物の生産性を維持するための方策を研究していることを報告しました。続いて、石山俊(総合地球環境学研究所 外来研究員)・三村豊(総合地球環境学研究所 センター研究推進員)が「人はなぜ農業に惹かれるのか? ―Iターン就農、安喰さん家族の座談会記録より」と題して、都市民が田舎へ移住するIターンが注目されているのはなぜか、実例として綾部市で農業と蕎麦屋を営む「篤農家」を訪ねてインタビューを行った映像を交えながら、彼らのライフスタイルなどから地域の未来のためのヒントを探っていることを報告しました。
休憩をはさんで、齋藤陽子氏(北海道大学農学研究院・農資源経済学研究室講師)が「農業経済学から見える途上国の「農」―ベトナム農民のリスク分散行動から―」と題して、ベトナム農民のリスク分散として、非農業所得の割合をふやすことや、家畜保険の導入が収入の安定に果たす役割が大きいと報告。家畜保険導入結果レポートでは一般農家の加入率はまだ低く、制度設計の再構築も必要であることがわかったと報告した。最後に、田中樹(総合地球環境学研究所 教授)が「アジアやアフリカの脆弱環境に向き合う-人びとの暮らしの向上と資源・生態環境の保全をめぐって-」と題して、人間活動により容易に劣化する社会や資源系の状況や場「脆弱環境」に向き合うため、セネガルの農牧混合による荒廃草原や、ベトナム山間地域の人間活動拡大による森林生態系劣化について、在来資源と人々の智恵を生かし暮らしを向上させる事例を紹介しました。
その後の総合討論では、西條辰義(総合地球環境研究所特任教授・プログラムディレクター)がコーディネーターを務めました。講演者それぞれの「農」の再発見についての発表内容をさらに掘り下げ、地球環境問題への解決に資する研究とは何かについて活発な議論が行われました。閉会挨拶としては窪田順平(総合地球環境学研究所副所長)が、このような会を継続して続けることで、共に学ぶ機会をつくる意義について語り、盛況のうちに閉幕しました。
今後も地域連携セミナーは日本各地で開催する予定です。お住まいの地域で開催された際には、是非足をお運びください!
■当日の様子
挨拶を行う
井上京北海道大学国際食資源学院学院長
挨拶を行う安成哲三地球研所長
司会を務める船水尚行地球研教授
講演を行う
柏木淳一北海道大学大学院農学研究院講師
講演を行う石山俊地球研外来研究員
講演を行う齋藤陽子北海道大学農学研究院・
農資源経済学研究室講師
講演を行う田中樹地球研教授
総合討論のコーディネーターを務める
西條辰義特任教授
総合討論の様子
講演に聞き入る参加者