2016年12月5日、秋田県能代市にて、第17回地球研地域連携セミナー「30年後の能代のために、明日のごはんを考えよう~能代の食の未来とトランジションの可能性~」を開催しました。
今回は、秋田県能代市にて、能代市、秋田県、秋田県立大学、北羽新報社、秋田銀行、NPO法人常盤ときめき隊、NPO法人地産地消を進める会のご後援をいただき、多様なバックグラウンドを持つ地域の皆さまと一緒に参加型ワークショップを行いました。
開会式では、窪田順平(総合地球環境学研究所副所長)による開会挨拶の後、齊藤滋宣氏(能代市市長)による来賓挨拶をいただきました。その後、スティーブン・マックグリービー(総合地球環境学研究所准教授)が「食で私たちはつながる ―市民の力でトランジションを起こすには(Food Unites Us All: How Civic Food Networks can be Catalysts for Regional Sustainable Transition)」と題して、谷口吉光氏(秋田県立大学地域連携・研究推進センター教授)が「能代の食の未来像を描く~トランジション・ワークショップの報告~」と題して、それぞれ講演を行いました。
2つの講演のキーワードであるトランジションとは、正確には「持続可能な社会システムへの転換(Sustainability Transitions)」を指します。今年度、FEASTプロジェクトでは、食を通じたトランジションの可能性を検討するために、秋田県立大学などの有志の方々や能代市民の皆さんと連携して、3回の参加型ワークショップを行い、「30年後、能代で囲む理想の食卓はどのようなものか」、「それを実現するために、今、何をしなければならないか」というテーマで議論してきました。3回のワークショップに参加していただいた方々の数名には、今回の地域連携セミナーのワークショップにコーディネーターとしてご参加いたただきました。
さて、講演後の参加型ワークショップ「明日のごはんを考えよう」は、秋田県立能代松陽高校の高校生の皆さんを含む60人ほどの来場者の方々と一緒に、ワールドカフェを模した次のような形式で行われました:①参加者は少人数ごとにテーブルに分かれ、各テーブルで話し合いをします。②時間が来たらテーブルホスト以外は別のテーブルへ移動します。③テーブルホストが、そのテーブルの前の参加者の話し合いの要点を説明し、新しい参加者はそのテーマを引き継いで話し合いをします。④最後にテーブルホスト、コーディネーターによる振り返りとまとめを行います。
「30 年後、どんなごはんがあったらいいと思いますか」と「それを実現するために、今何をしなければならないと思いますか」という2つの質問は、先の3回のワークショップと同じテーマでしたが、お米、野菜、山菜、 魚、加工品など、あらかじめテーブルごとのテーマとして選んだいくつかの食材にそって、高校生や農業に従事されている方、市役所の方、市民団体の方などとの活発な意見交換のなかで、さらに新しく、深掘りされたアイディアが生まれました。各テーブルに用意された、京都、長野、秋田のおいしいガッコ(漬物)とお茶も、リラックスした雰囲気を作るのに一役買っていたように思います。
今回の参加型ワークショップで生まれた、伝統食材のさまざまな料理法を学校で紹介することや、漁業資源を守るための他県との連携などのアイディアが、模造紙にまとめられ、全員に発表されました。ワークショップ終了後にいただいたコメントからは、能代は非常に地産地消が盛んな地域であることを再発見できました。その一方で、地産地消を続けていくためのさまざまな試みが、それぞればらばらに行われている現状も知ることができました。このばらばらの試みをつないで、政策として乗せることが、トランジションの第一歩となるだろうという声をいただきました。
今後も地域連携セミナーは日本中のあちこちで開催する予定です。お住まいの地域で開催された際には、是非足をお運びください!
■当日の様子
挨拶を行う齋藤滋宣能代市長
講演を行うマックグリービー・スティーブン地球研准教授
講演を行う谷口吉光秋田県立大学地域連携・研究推進センター教授
講演に聞き入る参加者の皆さん
セミナー開催前に開かれた記者会見
(右から窪田順平地球研副所長、マックグリービー・スティーブン地球研准教授、谷口吉光秋田県立大学地域連携・研究推進センター教授)
参加型ワークショップでは活発な意見交換が行われました