・歴史的経緯 |
1987(昭和62)年に日本初の女性患者症例が報告されると、個人のプライバシーを侵すのみならず誤報をふくんだマスコミ報道がなされパニック(いわゆる神戸エイズパニック)が発生。これを契機に厚生省が法案作成に着手するも当初は医師の知事への通達義務・感染の疑いがある者への検査強制(いずれも違反すると罰金)・他者へ感染させる行為をした者にたいする懲役/罰金刑をもりこむなど、社会防衛的で刑法的な色合いがきわめて濃かった。ために、日弁連や血友病患者団体などから批判をうけた。
その後、法案は人権への配慮と社会防衛色の緩和を強調するかたちでまとめなおされ、1989(平成元)年に公布されたが、1998(平成10)年の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症新法)の公布にともない廃止された。
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・倫理上の問題 |
ひとつの感染症に特化した法規を制定したことじたいにおいてエイズという感染症や感染者にたいする偏見や差別の固定化を助長したとする批判がある。
また、伝染病上の指示にしたがわず多数の者(厚生省通達によると2名以上)に感染させるおそれのある者について医師はその氏名・住所などを居住地の知事に報告するようにもとめられいる。このさい、知事には当人の関係者にたいして健康診断を命令したり、自治体職員を派遣してヒアリングさせる、感染者とその保護者に感染防止上の指示をくだせるといった大きな権限が付与されているが、その範囲と正当性についての疑義が提起されている。
さらには、感染者には伝染予防上の義務が説かれるばかりで治療へのアクセス権の保証などについてはまったくふれられていないという問題もある。
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・展望 |
感染症新法をうけ策定され、すくなくとも5年ごとに再検討される予定の「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」の見直しの行方を見守る必要がある。
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・参考 |
全文 http://www.lap.jp/lap2/data/yobouho.html
「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」http://www1.mhlw.go.jp/topics/kansensyou/tp1116-1_11.html
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