<生命倫理学事典(新版増補)>               *〔 〕は引用者による補足を示す

  ■感染症(infectious disease)
・定義
 病原体を有する微生物や小動物が人体または動物の体内に侵入して細胞・組織・臓器内で増殖することを感染(infection)といい、その結果起こる疾患(や病気)のこと。

・医学や医療との関連
 微生物や小動物が人体などに侵入してもかならず発病するとはかぎらない。免疫などの複雑なメカニズムがあるからである。このように宿主と平和的に共存するばあいもすくなくないが、宿主の体力や免疫機能が衰えると発病することもある。
 感染から発病までの経過におうじて「急性(acute)」(はやく短い)、「亜急性(subacute)」あるいは「慢性(chronic)」(遅くながい)に区分される。
 細菌などのなかには(腸内細菌や口内細菌のように)宿主の誕生時(誕生前)からその体内に侵入し宿主と共生し、宿主にとって不可欠な生理的機能をはたしているものもある。
 人間は無菌状態で生きることが不可能なのだから、ほどよく微生物と共生していく工夫が重要である。
 医学や医療の歴史のかなりの部分は感染症対策でしめられてきた。そして人類は種々の感染症対策、とくに抗生剤の開発に成功してきた。しかし病原体のほうも変容するので、このたたかいはおそらく永遠につづくであろう。


・感染症と伝染病
 両者はきわめてちかいが、同義ではない。自然界ではおとなしくしているある種の細菌はいったん人体にはいるとたちまち発病させるが、他の人に伝染することはない。破傷風などがその例。



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Effects of Environmental Change on Interactions
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