実践プログラム2

アジア環太平洋地域の人間環境安全保障

─水・エネルギー・食料連環
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研究プロジェクトについて

本プロジェクトの目的は、水・エネルギー・食料の連環(ネクサス)による複合的な地球環境問題に対し、環境ガバナンスの構造と政策の最適化をとおして、アジア環太平洋地域の人間環境安全保障を最大化(脆弱性を最小化)し、持続可能な社会のあり方を提示することです。そのために、科学と社会の共創のもと、ローカル(地域レベル)での行動様式の変容とグローバル(地球レベル)での地球環境問題を解決するための枠組みをつなぐ、ローカル・ナショナル・リージョナルレベルでの環境ガバナンスのあり方の提示に挑戦します。

なぜこの研究をするのか

図1 研究対象地域

図1 研究対象地域

図2 水・エネルギー・食料ネクサス

図2 水・エネルギー・食料ネクサス

水・エネルギー・食料は、人の生存と社会にとって最も基本的で重要な資源です。米国国家情報会議「グローバル・トレンド2030:未来の姿」(2012年12月版)によると、人口の増加や経済発展などの社会的変化により、水・エネルギー・食料の需要は、2030年までに単独でそれぞれ 40%、50%、30% 増加すると予測されています。加えて、気候変動の影響は、水・エネルギー・食料資源間のトレードオフ(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ない関係)とステークホルダー(利害関係者)間のコンフリクト(競合)を加速させており、異なるステークホルダー間のマルチスケール(階層間)での合意形成と、社会の意思決定のしくみ作りが不可欠です。また、わが国を含むアジア・環太平洋縁辺域では、アジアモンスーンの気象・水文条件と、火山地熱地域の地質・地形要因を考慮したうえで、自然が持つリスクを軽減し、それらがもたらすサービスを増大させることにより、人間環境安全保障を高める(脆弱性を低くする)社会の構築が必要です。

そこで、プロジェクトでは、水・エネルギー・食料ネクサスのトレードオフとコンフリクトを対象に、Co-designing / Co-producing(科学と社会との共創)をとおして合意形成のしくみを明らかにし、環境ガバナンスのあり方を統合的に最適化するために、地球環境問題への対応を含めた新たな枠組みを示すことで、地球環境研究の新たな形を探っています。

どこで何をしているのか

研究対象地域は、日本、フィリピン、インドネシア、カナダ、アメリカを含むアジア環太平洋地域です。

プロジェクトでは、(1)科学と社会との共創、(2)水とエネルギーネクサスの解明、(3)水と食料(水産資源)ネクサスの解明、(4)合意形成、(5)学際的統合、の5つのサブテーマで研究を進めています。

  1. (1)科学と社会との共創
  2. 異なるステークホルダー間のマルチスケールでの合意形成と、社会の意思決定のしくみ作りを構築することを目的に、ローカル(各国の研究対象地)レベルでは、大槌町、小浜市、日出町において市民参加型の地下水一斉調査や地下水連続講座、湧水シンポジウムを開催しました。ナショナル(国)レベルでは、2014年に制定された水循環基本法および2015年に策定された水循環基本計画のもと、基本的施策に関する新たな制度化についての研究や、リージョナル(アジア環太平洋地域)レベルにおける、プロジェクトサイトの比較・統合研究、グローバルレベルにおけるネクサス研究のネットワーク化を行なっています。

  3. (2)水とエネルギーネクサスの解明
  4. 水資源を効率的に利用したエネルギー生産と再生可能エネルギー供給源の多様化を目的に、本年度は、地熱・地中熱エネルギー・温泉排水熱エネルギー・小水力発電の賦存量と導入ポテンシャルを確認しています。

  5. (3)水と食料(水産資源)ネクサスの解明
  6. 海底湧水が水産資源を含む沿岸域環境に及ぼす影響について、栄養塩、物理環境、底生生物、魚類等、生物学的・物理学・科学的視点より解明することを目的に、小浜湾、大槌湾、別府湾奥部、鳥海山麓海岸釜磯において調査を実施しています。

  7. (4)合意形成
  8. 水・エネルギー・食料ネクサス問題に対する社会科学的アプローチとして、プロジェクトサイトにおけるローカルレベルでのステークホルダーを対象に、別府では温泉熱開発問題に焦点を当てたステークホルダー分析や社会ネットワーク分析と、大槌では湧水と復興問題に焦点を当てたステークホルダー分析を実施しています。

  9. (5)学際的統合
  10. 水・エネルギー・食料ネクサスの課題を特定し解決するとともに、学際的研究成果を統合するための手法、具体的には、統合指標、統合モデル、統合マップ、オントロジー工学、費用便益分析、経済最適化モデルの開発を行なっています。さらに、超学際的研究に貢献するために、これらの手法の機能拡大化に取り組んでいます。

これまでにわかったこと

写真1 大槌町質問票調査

写真1 大槌町質問票調査

図3 冷川と平田川河口域の魚類個体数 (Yamada et al. 2015)

図3 冷川と平田川河口域の魚類個体数 (Yamada et al. 2015)

ローカルレベルの水・エネルギーネクサスでは、大槌町の自噴域で深度別地下水採取調査を実施し、水門工事の結果、地下水位が低下していることが判明しました。今後観測井の設置及び長期モニタリングが必要です。地中熱に関しては、小浜と大槌で地下温度調査を実施した結果、小浜の地下温度が高いことが判明し、先行研究により地下温暖化が進行していることから、今後地下熱と賦存量の関係についてさらに研究を進めます。別府では、温泉施設及び温泉発電施設からの温泉排水による温度環境の変化がティラピアを含む生物環境に影響を与えることが判明しました。引き続き、水資源を効率的に利用したエネルギー生産と再生可能エネルギー供給源の多様化を目的に調査を続けます。水・食料ネクサスでは、別府日出町沿岸の淡水流入のうち海底湧水の割合及び海底湧水由来の栄養塩供給量が判明し、さらに大槌湾では、淡水流入のうち海底湧水の割合が高いことがわかりました。今後、海底湧水が水産資源を含む沿岸域環境に及ぼす影響について調査します。

リージョナルレベルでは、社会科学的成果として、日本・フィリピン・インドネシアの3か国での地熱発電に関する意識の違いについてインターネットでアンケート調査を実施した結果、日本人回答者の傾向は、地熱発電にはなじみが薄い、地域振興や温泉との兼ね合いについては関心が薄い、科学的知見を確認するよりも住民投票を好むことが判明しました。

引き続き、水・エネルギー・食料ネクサスシステムの自然科学的解明と、その結果得た科学的知見に基づき、ステークホルダーとの協働を通して、3つの資源間のトレード・オフやコンフリクト軽減に向けた政策策定に貢献していきます。

伝えたいこと

写真2 第3回海外全体会議 in Kyoto

写真2 第3回海外全体会議 in Kyoto

プロジェクトをとおして、(1)気候変動およびグローバル化社会での各資源の管理制度の不備や、ステークホルダー・セクター間でのコンフリクトによる安全保障の低下に対応する指針の提示、(2)陸域と海域の断絶による沿岸域の脆弱性を軽減する方策の提案、(3)共有資源としての水・エネルギー・食料(水産資源)の管理や、自然エネルギーの有効利用の提示、(4)アジア環太平洋地域の水・エネルギー・食料の広域統合行政のあり方への提言などを行ないます。

集合写真

メンバー

プロジェクトリーダー

氏名所属
遠藤 愛子総合地球環境学研究所准教授

専門は水産経済学と海洋政策学。これまで沿岸域が抱える問題を解決するために、学際的・分野横断的な調査研究を行ない、政策提言を実施するプロジェクトに参画してきました。科学と社会の連携のもと、地域と世界をつなぐガバナンスのあり方を追求します。

プロジェクト研究員

氏名所属
王  智弘プロジェクト研究員
山田  誠プロジェクト研究員
増原 直樹プロジェクト研究員
岡本 高子プロジェクト研究推進支援員
本田 尚美プロジェクト研究推進支援員
寺本  瞬プロジェクト研究推進支援員

主なメンバー

氏名所属
谷口 真人総合地球環境学研究所教授
藤井 賢彦北海道大学大学院地球環境科学研究院
小路  淳広島大学大学院生物圏科学研究科
馬場 健司東京都市大学環境学部
大沢 信二京都大学地球熱学研究施設
田原 大輔福井県立大学海洋生物資源学部
河村 知彦東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター
DELINOM, Robert M.Indonesian Institute of Sciences, Indonesia
ALLEN, Diana M. SimonFraser University, Canada
SIRINGAN, Fernando P.University of the Philippines Diliman, Philippines
GURDAK, JasonSan Francisco State University, USA
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