アジア環太平洋地域の人間環境安全保障

─水・エネルギー・食料連環
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研究プロジェクトについて

水・エネルギー・食料は、人間の生存に必要なもっとも基本的かつ重要な資源で、しかも互いに複雑な依存関係にあります。これらの資源を持続的・効率的に利用・保全するため、日本・インドネシア・フィリピン・カナダ・アメリカ5カ国の特定の地域で、自然科学と人文・社会科学による水・エネルギー・食料のつながり(ネクサス)の解明に取り組みました。

何がどこまでわかったか

プロジェクトの調査地であるアジア環太平洋地域の各所で、自然・社会環境や、資源利用の違いを反映した水・エネルギー・食料のつながり(ネクサス)の解明が進みました。日本の調査地に絞って紹介すると、陸域における食料・エネルギー生産のための水利用が、沿岸域の水産資源を含む生態系に与える影響、つまり水資源をめぐる陸域活動と海域活動のトレードオフ関係が明らかになってきました。別府市では、微動アレイ探査や重力モニタリングなどの結果から地下水の流動経路が明らかになり、将来予測のための統合型水循環モデルの構築が進みました。温泉排水の流入による河川生態系の変化も明らかになりました。福井県の小浜湾では、海底湧水による海域への地下水の供給量は河川水に比べて非常に少ないが、栄養塩供給の貢献度は高いこと、海底湧水の周辺で魚類の出現率が高いことが判明し、海底湧水と水産資源との関係が明らかになってきました。こうした自然科学的調査の成果や、地域資源利用の歴史的変化や利害関係者(ステークホルダー)分析などの人文・社会科学的調査の結果を統合して、ネクサス問題を解決するためのシナリオ策定や政策立案につなげる学際的手法を構築しました。

私たちの考える地球環境学

図1 研究対象地域

図1 研究対象地域

気候変動や経済発展、都市化、グローバリゼーションの進行を背景に、社会の存立に欠かせない資源である水とエネルギーと食料に大きな圧力がかかっています。私たちは、水・エネルギー・食料の3つの資源のつながり(ネクサス)に着目し、複雑化する資源の相互依存関係を解明することで資源利用間のトレードオフを減らし、利害関係者間の争い(コンフリクト)を解決することが地球環境問題を解く鍵だと考えています。そのためには、自然科学と人文・社会科学の協働、科学と社会の共創のもと、さまざまな世界的ネットワークとも連携しながら、特定の地域の問題解決に取り組むことが必要だと考えています。

新たなつながり

図2 水・エネルギー・食料ネクサスの関係図

図2 水・エネルギー・食料ネクサスの関係図

プロジェクトでは、日本水産学会監修の『地下水・湧水を介した陸-海のつながりと人間社会』を出版し、Springer から地球研英文学術叢書として、日本、フィリピン、インドネシア、カナダ、アメリカの事例を含むThe Water-Energy-Food Nexus: Human-Environmental Security in the Asia-Pacific Ring of Fireを出版します。国際学術誌Journal of Hydrology: Regional Studiesの特集号においても成果を発表しました。水・エネルギー・食料の観点から温泉資源の利用・保全を論じる和書も出版します。

出版物のほかにも、資源の保全管理計画等の策定に向けた地方自治体との協働や、マルチ・ステークホルダーとの協働によるシナリオ・プランニングをおこない、市民参加型の地下水・温泉モニタリング調査を実施し、市民と調査結果を共有するための情報基盤(湧水マップ)を構築しました。

プロジェクトリーダー

氏名所属
遠藤 愛子総合地球環境学研究所客員准教授
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