実践プログラム3

砂漠化をめぐる風と人と土

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研究プロジェクトについて

アフリカやアジアの半乾燥地は、資源・生態環境の荒廃と貧困問題が複雑に絡み合っています。わが国を含む砂漠化対処条約(1994)の批准国には、問題解決のための学術研究と社会実践の両面での実効ある貢献が長らく求められてきました。対象地域の風土への理解を深めながら、日常のなかの生業活動を通じて、暮らしの安定や生計の向上につながり、同時に環境保全や砂漠化抑制が可能となるような技術や取り組みの道筋を、地域の人びととともに探ります。

なぜこの研究をするのか

数ある地球環境問題のうち、本プロジェクトは砂漠化をテーマとしています。それは、今なお多くの地域が砂漠化や貧困問題に悩み、人びとの暮らしや生存が脅かされているためです。

砂漠化には、資源・生態環境の荒廃や劣化と貧困問題が複雑に絡み合っています。わが国を含む砂漠化対処条約(1994)の批准国には、問題解決のための学術研究と社会実践の両面での実効ある貢献が長らく求められてきました。これまでにも、さまざまな取り組みが行なわれてきましたが、その解決は依然として国際社会の急務となっています。

砂漠化問題の解決が難しいのは、その原因が人びとの暮らしを支える農耕や牧畜、薪炭採集などの日常的な生業活動にある点です。そして、人口増加や人間活動の拡大により、土地資源にかかる負担がますます大きくなっています。砂漠化対処への取り組みには、原因となっている暮らしや生業を維持しながら対処にあたるという困難がともないます。それゆえに、研究でも実践活動でも未解決のままの課題が山積みです。研究課題は取り立てて新しいものではありませんが、「古くて新しい問題に取り組む周回遅れのランナー」のような気持ちで、人びとの暮らしの目線に立った丁寧なフィールド研究を重ねます。

どこで何をしているのか

図1 活動対象地域

図1 活動対象地域

図2 砂漠化対処条約にある取り組みの枠組みとプロジェクトの関心事

図2 砂漠化対処条約にある取り組みの枠組みとプロジェクトの関心事

主な対象地域は、西アフリカ内陸部のサーヘル地域(ニジェール、ブルキナファソ、セネガル)、南部アフリカ(ザンビア、ナミビア)、南アジア(インド)です。これらに加え、地域間比較や技術移転の可能性を探るため、東アジア(中国、モンゴル)、北東アフリカ(スーダン)、東部アフリカ(タンザニア)、北アフリカ(アルジェリア)でも調査を行なっています(図1)。

対象地域について知ること、砂漠化対処や地域開発支援に有効かつ具体的な方法を考案し実証すること、そしてこれらを実際に現地の人びとの役に立てるお手伝いをすることをめざし、以下の目標を設定しています。

  1. (1) 砂漠化地域の社会・生態・文化的な諸相、生業動態と生存適応、砂漠化問題の背景などへの学術的理解を深めること(「風と土と人」を知ること)
  2. (2) 人びとの暮らしとの親和性があり、実践可能な砂漠化対処技術や地域支援アプローチを開発・実証すること(地域の人びとと創ること)
  3. (3) 得られた知識や経験を対象地域の人びとや砂漠化対処などの地域支援に取り組む機関に提供すること(地域社会に還元すること)

また、図2は、砂漠化対処条約の活動項目を簡略に示し、プロジェクトが注目する点と目標を重ね合わせたものです。

これまでにわかったこと

図3 アフリカで進められている「緑の長城」計画と現場での問題点

図3 アフリカで進められている「緑の長城」計画と現場での問題点

図4  アイデアボックス:「緑の長城」計画に貢献できるかもしれない技術や方法(セネガル北西部の牧畜地帯の事例)

図4  アイデアボックス:「緑の長城」計画に貢献できるかもしれない技術や方法(セネガル北西部の牧畜地帯の事例)

アフリカやアジアの半乾燥地には、そこに暮らす人びとのたくさんの知識やアイデア、経験、在来技術が埋もれています。私たちはそれらを掘り起こし、丁寧に検証し、あるいは組み合わせて、地域の人びとと一緒にさらに多くの知識や対処技術を創り出そうとしています。

東アジア・中国の黄土高原でのアワ栽培の在来技術の再現試験では、6世紀頃の古農書に描かれている通りの農具や作業方法が人びとに継承されていることがわかりました。南アジア・インド北西部の半乾燥地では、地方都市や農村を縫うように移動牧畜を営む人びとの行動や農耕などの他生業との関わりを明らかにしました。また、伝統農具や在来技術を収集し図版にし、一度失われてしまうと二度と戻らない在来知を、アフリカでの砂漠化対処に応用することを検討しています。南部アフリカ・ナミビアでは深刻な干ばつに見舞われ、所有する家畜の半分を失う人びとがでていますが、西アフリカ・半乾燥地の調査で学んだ適応策が使えると考えています。プロジェクトの重点的な活動地域である西アフリカでは、耕地内休閑システム(風による土壌侵食の抑制と作物収量の向上)、アンドロポゴン草列(水による土壌侵食の抑制と世帯収入の向上)、技術普及法の改良(社会ネットワーク調査手法の織り込み)などの技術を形作り、また、篤農家(豊かな発想力と行動力を持つ人材)とともに派生技術の形成にも取り組んでいます。

これらの技術や取り組みは、一見すると単純なものですが、在地資源や在来知の活用、野生の草本の栽培化、生計の向上や生活資材の獲得、土壌侵食の軽減、そして社会的弱者層への配慮など、さまざまな内容を含んでいます。砂漠化地域の人びとが、日常的に無理なく片手間に行なうことができ、暮らしの安定や生計の向上につながる生業活動をとおして、間接的あるいは結果として、資源・生態環境の保全や砂漠化の抑制が図られる方法を創り上げるコツがわかってきました。その一例として、アジアやアフリカで得た一連の知見や経験を、国際的な砂漠化対処プログラムである「緑の長城計画(GGWSSI:Great Green Wall for the Sahara and the Sahel Initiative)」(図3)に応用するためのアイデアボックスを作りつつあります(図4)。

伝えたいこと

砂漠化地域については、いわゆるグローバル化や経済発展のなかで取り残されていく地域やコミュニティ、情報や知識に触れる機会に恵まれず、何らかの取り組みに参加したくてもできない弱い立場や状況に置かれている人びとがいます。私たちは、このような人びとが「あっ、それいいね」と感じ、無理なく取り組めるような技術を創ることを強く意識しています。時間の許す限り、対象地域の社会や人びととかかわりあいながらたくさんの対処技術やアプローチを創り出す努力を続けます。人びとの暮らしや地域スケールでの問題を解消することなしに地球環境問題の解決をもくろんでも、それは絵に描いた餅だと思うからです。

集合写真

メンバー

プロジェクトリーダー

氏名所属
田中 樹総合地球環境学研究所教授

ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学講師(JOCV)、京都大学農学部助手・助教授、京都大学地球環境学堂准教授、地球研准教授を歴任。ベトナム・フエ大学名誉教授(2012年~)。アジアやアフリカの人びとに「それはいいね」と言ってもらえるような実践的な研究をめざしています。

サブリーダー

氏名所属
宮嵜 英寿総合地球環境学研究所プロジェクト研究員

プロジェクト研究員

氏名所属
手代木功基プロジェクト研究員
石山  俊プロジェクト研究員
紀平  朋プロジェクト研究推進支援員
五十川あきプロジェクト研究推進支援員

主なメンバー

氏名所属
真常 仁志京都大学大学院農学研究科
伊ヶ崎健大国際農林水産業研究センター
小林 広英京都大学大学院地球環境学堂
中村  洋(財)地球・人間環境フォーラム
三浦 励一龍谷大学農学部
内田  諭国際農林水産業研究センター
清水 貴夫広島大学
遠藤  仁秋田大学
石本 雄大鳥取大学農学部
佐々木夕子(財)国際協力機構ニジェール事務所
DEORA, K. P. Singhラジャスタン研究所(インド)
MUNIANDI Jegadeesanタミルナドゥ州立農業大学(インド)
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